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不謹慎なほどに美しい二人と自然と燃え盛る炎(『Nのために』第2話レビュー)

今回はモノクロの防波堤と海と空が、タイトル入りとともに一瞬にして橙色の夕日に染まるタイトルバック。同時に入る低音のオーケストラとの調和、あまりの綺麗さに、一瞬で心を奪われます。

『アンナチュラル』と同じ塚原あゆ子&新井順子タッグ、女性陣スタッフによる制作が光る第2話。希美(榮倉奈々)と成瀬(窪田正孝)が2人で背負う業と嘘に行き着くまで、そして嘘を守るために告げる別れ。榮倉奈々と窪田正孝の演技のぶつかりあい、一瞬の刹那に見せる怒り・苦しみ・互いへの想い・切なさどれともつかない表情ひとつひとつが胸に迫る。二人を取り巻く自然はもちろんのこと、燃え盛る炎さえ残酷なほどに美しい。成瀬の実家「さざなみ」の炎が二人を照らし出すシーンの、画面端で一人ずつを切り取った映像が、二人を照らし出す炎の美しさをより引き立たせているように思える。「アンナチュラル」にてミコトと六郎が湖に沈められそうになるシーンでも、あえて中心を外して二人を映すカットが魅力的だった。窪田正孝は正面で正視するよりも、視界にちらりと入ってきてほしい(製作陣的に)、ってことでしょうか。手を繋いで炎を見るシーンはあまりにもロマンチックで不謹慎なほどで、ついドキドキしてしまう演出だった。

一点、笑ってしまったのは希美(榮倉奈々)の父が、希美が撒いた油により階段ですっ転ぶシーン。一瞬のCGが不自然すぎるほどにオーバーでつい笑ってしまったが、あまりに愛せないキャラクターすぎてそんなコメディチックな一シーンも彼のイメージアップには決して繋がらない。そもそもトーン違い過ぎてシーンとして浮き上がってしまっているので、もう少し自然で良かったのでは。

湊かなえ作品いくつかに共通しているのが、「女声のかすれたオペラのような挿入歌」。島を出て買い物に来た希美が母を見つけてしまった瞬間の「はぁ、あぁ…」という挿入歌は『夜行観覧車』で娘が暴れ出す際に必ずかかる、ソフトな女声挿入歌と同様。演出家の塚原あゆ子氏の継続セレクトなのか、湊かなえ原作ドラマのスローモーションシーンには必ずこれがかかり、危険な展開が近づいて来る、とこちらを身構えさせる。

狭く若い世界の中の辛すぎる現実、という変えようのない(原作ありきなので)物語に、美しい自然という背景を敷くスタイルは岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』と共通するものがある。ただ、『リリイ・シュシュのすべて』における美しい自然とドビュッシーのピアノ曲が、田舎の中学校社会の凄惨さ醜さをより際立たせ、狂気めいたものに仕立て上げる要素だったのに対して、『Nのために』では重い内容をところどころで浄化する効果を持つ。何によって自然という要素が「狂気」と「浄化」という逆方向に作用するのかについては改めて深く考える必要がありそうだが、あくまで大衆に向けてつくられたテレビドラマ作品においてこの自然の美しさはとにかく正だと感じる。

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