ドラマはドラマティックであれ!『大恋愛 〜僕を忘れる君と』

『大恋愛』ラブストーリーだけど、一言で表せば「面白いドラマ」だった。『大恋愛』は、めちゃくちゃ面白いドラマです。

まず、とにもかくにも大石静氏あっぱれ!

ドラマにはリアリティが大切、視聴者が感情移入できるように、突飛な設定は受け入れられないよ、共感できるストーリーを、丁寧に、繊細に、主人公の所得はそこそこじゃないと自分事にしてもらえないからね、偶然が3回積み重なったらリアルじゃないよ、

ざけんじゃねーよバーカ!!が『大恋愛』から聞こえてきませんか…?

ドラマに必要なのは「ドラマチック」だ!ボーっと生きているお前らには決して手にできないような超ドラマチックで超ロマンティックで超運命的な大・大・大恋愛をがつーんとぶつけるからお前らがつーんと喜べ!

引っ越し屋との偶然の出会い!彼はあの大好きな小説を書いた小説家だった!婚約者は、主人公が罹った病の第一人者だった!以前の婚約者は、なんと主人公の母と恋仲に!

って、もう偶然of偶然=運命のオンパレード。『けもなれ』的に言えば、延々と鐘鳴りっぱなし。ごーんごーん。特に最後の一点、薫(草刈民代)と井原佑一(松岡昌宏)のストーリーは、「お前らが一番大恋愛じゃねえか」という突っ込みもお構いなしの、激アツ大展開。超面白い。この二人の話が一番おもしろかったんじゃないかってくらい、超面白い。

でもコメディじゃないです。むしろ全体のストーリーは所謂「難病モノ」。家族にもお金にも友人にも容姿にも賢さにも恵まれた尚(戸田恵梨香)が、若年性アルツハイマーで自分が何者かも分からないところまで記憶を失っていく、とても悲しくて「よくある」ストーリー。それをここまで「面白く」ドラマに仕立てているのがシンプルに超凄いと思うんです。

「ありきたりな展開」「予定調和」なんて言葉をふっとばして、王道を120%の筆力で大石静が書ききったら死ぬほど面白い。そんな力技の名ドラマでした。

そして何より、主演戸田恵梨香の素晴らしさが光ってた。戸田恵梨香、個人的に昔から凄く好きなのですが、容姿だけ言うと「非の打ち所のない美しさ」とはちょっと違うよなあと思うんです。完全に左右対称とか、どの角度から見てもウルトラ可愛いとか、小さいとか、声が可愛いとか、そういう一般的な「可愛い・美しい」から少しだけ離れたところにいるような気がする。でも、「大恋愛」の戸田恵梨香は途方もなく美しくて可愛くて魅力的で最高なのです。何なのだろうってくらい。

「あたしのことタイプなんでしょ?」「あっち(ベッド)いこ」とこれ以上ない積極肉食女子である様子も、大好きな人と一緒にいて幸せで仕方ないよって笑顔も、ギャグに爆笑するときの一瞬品を失った馬鹿笑いも、記憶を失って儚げな姿に映る微笑みも、とんでもなく美しくて魅力的で、まさに「大恋愛」という言葉にぴったりなドラマティックな女性像。元々のルックスももちろんだけど、表情の豊かさって何かを飛び越えちゃうくらい魅力になり得るんだんだとつくづく思いました。ある意味とんでもなく「大きく出た」タイトルに一歩も引くことなく、ものすごい量の引き出しを開けて画面に投げつけてきた戸田恵梨香はまじで凄い。女優って凄い。


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