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土下座から見上げた、榮倉奈々の「笑み」に瞬間最高演技賞を(「Nのために」第3話レビュー)

物語冒頭の青景島編が締めくくられる第3話。前半に固められた名シーンについて語らずにはいられない。

母による監禁、という再びのホラー展開から一転、希美(榮倉奈々)と父親の対峙シーンは圧巻そのものだった。「どんな手を使っても、上に行く」決意で窓から家を抜け出し、素足にサンダルのまま父親に向かっていく姿。「願い事は、泥の中だよ。泥に手を突っ込まないと叶わないんだよ。」と語ったのは『anone』の瑛太だが、まさに希美が土下座して学費を請う姿は見えない泥にまみれながら、それでも島を出るという一筋の希望を目指す痛々しくも凛々しい姿だった。土下座するまでの台詞「お父さんは、大学を出た人が嫌いなんですよね、」のくだりの嘲笑とも自虐ともつかない表情も素晴らしかったが、何と言っても、学費を勝ち取った瞬間の希の笑顔が何と言えばいいのか分からないぐらい、すごい。傷つけられ自尊心も無茶苦茶に踏みつけられた中で、土下座した姿勢そのままに父を見上げて笑う、不気味とも晴れやかとも言い切り難いあの「笑み」には瞬間最高演技賞を贈りたい。

そして、島を出る日。見送るカップルの片割れ、防波堤を走って手を振る。この展開そのものは超ありふれたドラマの一シーン。そんなこと制作側だって重々分かっているわけで、だからこそ最高級の、他のドラマのどんな類似シーンにも負けないものを作るという意気込みが必要。「ちゅらさん」の小浜島での別れシーンは幼くも亡くなってしまった和也への想いを共有する小さなカップルが結婚を誓う、幼さゆえの美しさと、シリアスな切なさが詰まった名シーンだった。「Nのために」のこのシーンも、大きすぎる秘密を抱えた二人が、ただ一言だけを伝え合う切なく美しいシーン。でもそれだけではなく、合間に入る高野(三浦友和)のカットがシーン全体の緊張感を保っていて、それもまた美しさを引き立てる要素になっている。家入レオが歌う主題歌「Silly」のイントロの入り方もこれ以上ない完璧さで、全てがあいまって心に語りかけてくる素晴らしいシーンだった。

第1話から第3話まで、青景島編では窪田正孝演じる成瀬の存在がもっとも光っていることは言うまでもない。ただ、改めて思い返すと本当に「受け」の役であり役者であることを強く感じる。台詞数もそこまで多くなく、希美と二人のシーンでもあまり口数が多い方ではないように思う。決定打になるような強い言葉を発することもほとんどない中で、シーンの合間合間で見せる表情、どことなく知的で何かを秘めたような空気感、少ない台詞の中で希美への気持ちを滲ませる声色などで、魅力を最高点にまで高めているのが本当に凄い。能動側で積極的に主張する部分がないにも関わらず、見ている側はすっかり成瀬のことをよく知るようになり、好きで好きでたまらなくなる。演技力と一言で言ってしまえばそれまでだが、空気感や温度までコントロールする技術と感性に圧倒された。

そしてお待ちかね、今回のタイトルバックは教室。確かにこの青も美しいのだが、教室内でのこのピンクの入り方などはどことなく「告白」を思い起こしてしまった。次回のタイトルバックにも引き続き期待!


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