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【THE FIRST SLAM DUNK】に取り憑かれた話



「私は今、キチンと息をしているのか?」
試合残り2分辺りのシーンでふと自分の呼吸が気になった。
最初は映画館のソファに背中をゆったり預けていた筈なのに、気が付くと私の背中は座席から大きく離れてスクリーンを食いるように極端な前のめり姿勢になっていた。
ふと目を逸らすと左隣のカップルも私と同じ姿勢になっていた。
そして今、自分が呼吸をしているのかしていないのかよく分からなくなっていた。

コロナで外出を避けていて、家で制作や家事をしながらできる私のエンタメは音声配信のVoicyになっていった。
漢方の先生、ミニマリスト、エッセイスト、ファシリテーター、会社員と色々フォローしてるが「THE FIRST SLAM  DANK」が公開されてからVoicyパーソナリティが SLAM DANKに狂い始めた。
安西先生の「諦めたらそこで試合終了ですよ」の台詞を口にし出したり、プレミアムリスナー(有料会員)限定配信で SLAM DUNKの感想を放送するなどの狂いっぷりだった。
「そんなにええんか…?」と興味を抱き始めて手帳を見たら次のお休みが水曜日だったのと、珍しく都心に出る用事があったので新宿のバルト9で見てみる事にした。

私はドンピシャ世代である。
子供の頃にテレビアニメを少し見た記憶がある。
湘北のスタメン5人は分かる。
原作は…ほとんど読んで無かった。
リョータが入ってきて、波乱を起こす三井が結局バスケ選手に戻る所は何となく有名な名場面なので知っている。
よく残っている記憶は怖いもの知らずの花道が強敵も恐れる事無くあだ名を付けて立ち向かい、ライバル流川に嫌がらせして喧嘩になると言う感じ。
破天荒な花道にずっと爆笑してたイメージ。
絵もカッコよくて面白かったけどハマってはいなかった。
物語を追わないままいつの間にか花道が坊主になっていた。何がキッカケかも知らない状態のまま漫画は終了してしまってた。
アニメ化も結局どこまで作られていたのか認識して無い状態だった。

映画が始まり少し動揺した。
ゆったりとした波の音、小さな2人の兄弟、バスケットボールがバウンドする音。
沖縄の穏やかな自然に抱かれているまだ小さな少年の宮城リョータの表情はとても無垢で繊細な感じがした。
映画はとても静かな始まり方で、私の知ってる SLAM DANKの世界ではなかった。

山王戦…最強山王。
原作を読んで無い私は坊主の男の子達を初めて見た。
強そう…頭丸めてスポーツしているのがスポーツ強豪チームっぽい。
深津の「ピョン」で動揺する。
みんな坊主なのに個性的。
その後きちんと原作読んだ私は坊主達をフルネームで覚えてしまった。

高身長な方が当然有利なはずのバスケ選手の中で168cmで戦うリョータの視界はどんなものか?
リョータは小さくても小生意気だし喧嘩が意外と強いけど、ずっと震える心を隠し続けていたのだろうか?
「心臓バクバクでもめいっぱい平気なフリをする」
兄から遺されたこの言葉を胸に小さな身体で強敵に立ち向かう。
リョータを映画の主人公に選んでくれてよかったと思う。
どの様にコンプレックスと向き合うか、どの様に乗り越えていくか?
「ドリブルこそチビの生きる道」はとても刺さった台詞だった。

湘北スタメン5人をそれぞれフューチャーしているのも良かった。

自分を取り戻す三井。
密かに孤独を抱えた赤木。
日本一になりたい流川。
そして不良から心身共にバスケット選手になっていく花道。

バスケットに真剣だからこそできる各自が抱える壁が山王戦の試合とリンクして胸を打つ。
そして宮城家再生の物語がリンクしてて本当に脚本が見事だった。

映画館に足を運んだ人に配られたポストカード、ステッカー、クリアファイルとあざといくらい魅力的な配布物を付けていたけど、そんな物が無くても何度も見てもこの映画は面白い。(私は湘北ベンチ組のポストカードだけ貰いました。他も欲しかった…本当は。)
静かで苦しいシーンを乗り越えた後の追い上げシーンは本当に最高だった。
イントロも主題歌達もよくこんなにドンピシャな曲作ったなと感動した。
カオルさんの心が少しずつ癒されていく場面に流れる音楽が心に残った。
後、リョータがプレスを抜く場面は言わずもがなである。

大人になった自分にびっくりしたのは、この映画見て桜木花道になりたいと思った事。
原作が元々桜木花道が主人公なので花道が出るシーンが物凄く心が湧き上がるように設計されてあるからだけど、シロートなりに思考を巡らせ必死で立ち向かう姿を見せられると絶望の空気を打ち消してくれて胸が熱くなる。
赤い髪、赤いユニフォーム、赤いバッシュ。
それらで駆け抜ける花道が眩しくて何度も泣きそうになった。
あんなにお調子者に見える花道が、試合のラストの1秒まで気を抜かずに走り続ける理由は原作を読んで分かった。

本当にこの映画を見るまでは断捨離が少しずつ進んでいたんだよ…。
ミニマリストさんの思考とかを聞いて手元にある漫画をBOOKOFFにほとんど売りまくり「これから買う漫画や本は電子書籍にしよう!」と心に決めていたのに…。
SLAM DUNKは電子書籍が無いのです‼︎
作者の井上雄彦先生の拘りらしいとネットにありましたが、確かにあの迫力ある画力で見開き使っての感動シーン見ると電子書籍だと感動が半減してしまうかも…。
すっかり断捨離計画が狂いました。
だって絶対原作読んだ方が更に映画楽しめそう…。
新装再編成版を20巻買いましたとさ。

私は沖縄では無いけれど、あまり雪が降らない所で育ったので、リョータが屋上で雪を見た一言が何となくツボでした。
(雪は個人的に綺麗だと思っています。)

2023年8月31日を持って公開終了するそうです。
だから今更布教の為では無いのですが、数ヶ月間熱狂をくれて楽しかったので忘備録として残しておきたいと思いましてnoteに思いを長編に渡り綴ってしまいました。

韓国や中国でも熱狂する人々を見て、こんなに日本の作品を愛してくれて嬉しかった。

先日4回目の鑑賞でやっとパンフレットを購入し開いてみたら、

「こんなSLAMDUNKは初めて観た」という体験を

というという監督の井上雄彦先生の言葉が綴られてあり「監督の思いが届きましたよ!」と思って胸が熱くなりました。

#スラムダンク  
#SLAMDUNK

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