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不幸のすべて・第二十話「不幸は七情から」

 前回の最後に〈三欲さんよく〉と言う言葉が出ました。今回はその続きです。よろしくお願い致します。
 三欲は欲望の一種です。食欲、性欲、睡眠欲の三つになります。
 この欲について伝承には、

——必要以上に食べること。必要以上に色を求むること。そして、必要以上に眠ること。これ、三欲と言う。

 とあります。
 この中において、食欲を否定する人は少ないですが、性欲自体を否定しようとするグループは多くみられます。
 たとえばキリスト教の一部にも禁欲思想があります。こちらは文明開化と共にわが国に入って来ました。それまではなかった概念でした。
 元々の日本仏教にも禁欲思想はありました。しかし、きちんと守られていたのは稀なようです。わが国の多くの物事は、なるべくであって、常に完全を求めてはいません。そこを勘違いすると、完全を求めてしまい、精神的に窮屈な状態を作り出してしまいます。
 これを昔の人は、

——世の中が、ぎすぎすする。

 と言っていたようです。
 先程も書いたように、明治に入ってから禁欲的な思想が流行りました。あたかも性欲がけがらわしいものであるかのような思想が入って来たのです。その時、浮世絵たちが迷惑をこうむりました。浮世絵の一部に性的な絵があったため、外国人に見せたら恥ずかしい種類の絵だと思われたのです。そして、手元にあった無関係な浮世絵まで外国人に売り払ってしまいました。後に大切な文化遺産となる浮世絵は、明治の頃は安物の印刷物にすぎなかったのです。

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