見出し画像

播磨陰陽師の独り言・第502話「トコジラミ」

 最近、何かと噂のとトコジラミ。フランスや韓国で大量発生して、とうとうわが国でも発見されたそうです。なぜか千葉県ではトコジラミを皮膚科に相談する人が5倍に増えているそうです。
 このトコジラミと呼ばれる虫は、昔は〈南京虫〉と呼ばれていました。南京から来た荷物に紛れ込んでいたのでこの名があります。
 カボチャの関西での古い呼び名も〈ナンキン〉です。これも南京から来た野菜だからです。関東ではカンボジアから渡って来た野菜なので〈カボチャ〉と呼ぶそうです。
 シラミと言えばDDT。戦後間もない頃のニュースフィルムを見ると、坊主頭の子供たちに白い粉が振り撒かれています。あの粉がDDTと呼ばれる殺虫剤です。こちらはトコジラミではなく〈コロモジラミ〉と呼ばれる種類のシラミだそうです。コロモジラミはすでにわか国では絶滅しているようです。これはひたすらDDTを振り撒いたおかげです。
 モノクロのニュースフィルムを見るたびに、
——よくあんなに危い薬を子供たちの頭に振りかけたものだ。
 と感心します。
 あの粉のせいで人が死んだと言う話は聞いたことがありません。また、病気の原因となった話も耳にしてはいません。
 しかし今は、環境に悪いとか、野性生物に悪影響があるとかの理由でDDTの使用は禁止されているそうです。
 以前、東京のエアビーに宿泊した時のことです。部屋の掃除が行き届いておらず、シラミが出て来て驚きました。
「今どきシラミとは」
 と妻とも話し、すぐに別な宿に代えました。
 シラミは変わった生態をしています。人につくシラミは人から人に感染します。犬につくシラミは犬にしかつかないので、人には感染しないそうです。これがダニだと猪から人につくので、猪を素手で触るのは危険です。
 今のわが国にいるシラミの大半はアタマジラミとケジラミだそうです。
 アタマジラミは、昭和50年代初頭、幼児や低学年の児童から発見されるようになりました。理由は、海外旅行が増えたため、外国から持ち込まれたそうです。
 今年は海外旅行した人々からトコジラミが運ばれて増えはじめていると聞きます。殺虫剤が効かない物もいるようですので、
——見つけたらどうすれば良いのかな?
 と思いました。出会わないことを切に願いながら……。

  *  *  *

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?