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播磨陰陽師の独り言・第480話「木々の祟りのこと」

 あまり寒くはありませんが、冬にむかっているのは確からしい今日この頃、そろそろ木々も休息期に入ります。この世で恐ろしいものは井戸と木々の祟りです。木々が休息期に入ると言うことは、祟りも少なくなると言う意味です。
 唐突に、祟りの話?
 何を言い出すのかと思ったら、これですか?
 とか、思う方も多いと思います。
 しかし、祟る種類の木を切ると、確実に不幸な目に出会います。切ってしまった後では誰にも止めようもありません。
 よく困った人から相談をされては、
「切る前に言ってください」
 と苦笑いしています。
 では、なぜ、そしてどのようなことにより、木々が祟ると言うのでしょうか?
 植物は地下に根を張って地上に伸びて行きます。この地下の部分がつながっていることが最近の科学で分かって来たそうです。同じ種類の木は地下でつながっていて、その集合した形は、人間の思考回路に似ているそうです。つまり集合した植物は物事を考えたり感じたり出来ると言う意味です。
 これを古い言葉で〈精霊しょうりょう〉と呼びます。同じ漢字を書いて〈せいれい〉と読むものとは別な存在です。
 能にもたくさんの精霊しょうりょうが出て来るように、昔はとても知られた存在でした。今となっては、わざわざ説明しなければならなくなってしまったことが残念でなりません。
 精霊は心を持ちます。心を持つ存在は、人にその姿を見せようとします。そして、人が心の内に思い描くような……仙人のような姿をあらわすのです。霊的なものがその姿をあらわす時、見る人の心の中にあるイメージを具現化します。だから思うような姿に見えるのです。ただしこれは、人の心の隙間に入り込んで幻覚を見せているだけなので、その実態は異なります。
 木々は時として凶暴な姿を人に見せます。他の植物や生き物を攻撃するのです。もちろん、直接的な攻撃は出来ません。しかし、匂いを発して虫や動物を引き寄せ、操ったりします。時には他の生き物を攻撃するように操ることも知られています。その最たるものが〈祟り〉と呼ばれる現象です。木々が人を攻撃する時は様々な方法をとります。毒を持つ虫を仕掛けることもあります。そうして誰も対処出来ないまま、多くの人々が不慮の死を遂げると言う訳です。

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