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播磨陰陽師の独り言・第518話「半自然工法による壺池」

 春が近くなると壺池のことを考えます。
 壺池と言うのは、ひと抱えほどある大きな壺に水を張り、池にしたものです。この中に水草、ミジンコ、メダカ、ヌマエビ、タニシなどを入れて外に置いたものです。一度造れば、水を足したり餌を与えたりはしません。数年はそのまま放置します。しかし、自然の中で、周りの空気を浄化しながら、自然に綺麗なまま保たれるのです。
 この中に入れるもので、まず水草は、太陽の光を浴びて酸素を放出します。見ていると、水草から泡が出ているのが分かると思います。これが酸素です。この酸素をミジンコが吸収しながら水を浄化します。
 また、ミジンコはメダカの餌となります。ここにメダカがいる理由はボウフラ対策です。メダカのいる水面に蚊が卵を産むと、メダカは真っ先にボウフラを食べます。普段はミジンコを食べていますが、ボウフラ対策にはとても良い生き物です。しかも、蚊はある程度の大きさがある水の中に卵を産むのです。わが家の庭にはこの壺池のおかげで蚊が減りました。
 ヌマエビは、メダカの排泄物を食べてくれます。また、メダカが死んだ場合も死骸を食べて浄化してくれます。そしてタニシは水に光があたり過ぎてミドリ藻が繁殖するのを抑えてくれます。これがないと、水が緑色一色になることも稀ではありません。
 これらは〈近自然工法〉ならぬ〈半自然工法〉と呼んでいます。近自然工法はビオトープと呼ばれる技法で、自然に近い環境を生み出すことによって、自然が回復する機能を利用するものです。
 こちらは半分だけ自然に近い方法で、目的を絞った機能を利用するものです。この壺池の目的はボウフラ退治と空気の浄化です。
 昔の陰陽師の屋敷の周りには大きな池がありました。それはボウフラなどを退治する目的と空気を浄化して健康を守るためでした。それを最小限にした物が壺池だと思ってください。
 平安時代はある意味、ひどい時代でした。あちこちに仏像が造られ、その所為せいで重金属中毒になる人が増えたのです。と言うのは、金と水銀をまぜた金属〈アマルガム〉を仏像に塗って、火であぶって水銀を蒸発させ、金を残す技法が主流だったのです。蒸発した水銀は空気を汚染します。そして流行り病として重金属中毒が蔓延したのです。
 そんな頃に科学的にではなく、空気中の重金属を浄化する効力がみられたのが壺池でした。だから陰陽師の家には中毒患者が少なかった訳です。今でも壺池には空気中の排気ガスなど重金属を少なくするおまけが付いて来るのです。

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