見出し画像

祈りのカタログ・第二十七話「もののあわれ」

 前回、感情の起伏が激しい人は亡霊空間に入りやすいと書きましたが、ただ、単に起伏が激しいだけでは入ることは出来ません。心の中に、もののあわれと言う感覚がなければ無理です。そして、祈りの世界にその感覚が必要です。
 また、前回に、
「祈りとは、心が出すエネルギーをコントロールする行為です」
 とも書きました。このコントロールする行為では、心の中の最もコアなエネルギーの源に働きかけなければなりません。それが、もののあわれと言う感覚なのです。
 多くのトランス状態も、それに関わるシャーマニズムも、感情の起伏や暴走を超えたところにテクニックの主体があります。
 世界的に見て感情の起伏が激しいだけと言う種類のシャーマンは、自分でなる場合であっても、生まれつきであっても、
「シャーマンの中ではその能力は低い」
 と分類されています。そして、ただの心が暴走するだけでは亡霊空間に入り込むことは出来ても、帰って来ることは出来ないのです。もし、普通に帰って来たとしても、その多くは、本人とは別な何かの心に入れ替わって、本人のフリをしながら生きているだけのことです。
 それらを見分けるのはとても難いことです。と言うのは、そう言う人は自分自身が分からなくなっているからです。
 入れ替わったその何かも、やがて時間が経つと、
「生まれた時からずっと今と同じ自分である」
 と信じ込んでしまいます。ですので見分けられなくなるのです。
 本人が、
「昨日と同じ自分である」
 と思っている以上、それを否定することは出来ません。しかし、周りのごく親しい人たちは、
「こんな人ではなかったのに……」
 と言う不思議な感想をつぶやきます。

ここから先は

2,002字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?