余談

2019.05.14   耐性が無いな、の話。

いつも通り、まとめは下にある。


アエロフロートに乗り込み、経由地のモスクワに向かう便。ロシアのCAさんみんな美人で写真撮りたかったけど、日本人が多かったのでやめた。

ほぼ全席埋まってる感じだったのだが、途中トイレしたくなり、窓側だった私はいかにも申し訳ない顏をしながら隣のご夫婦に声を掛けて行かせてもらった。人が1人待っていたのでそこで並んでいると、パーカーを着た金髪の美女が後ろからついてきていた。振り向きざまに飛び込んできたその小さな顔面とすらっとした首そして背も高い。172はありそうだった。そして僅かに微笑んでいるのはどうしてなのだろう。

自分の番が来たので先に済ませ、なんて言えばいいかわからず、美女に(待たせて)すまない。  と声をかけながら入れ替わりでトイレを出た。

先に戻ろうと歩いていると、目の前にドリンクのカードを引くCAさん。道は閉ざされていた。呪文の言葉など持ち合わせていない私は、隣の席のご夫婦の旦那と目配せして、肩をすくめながら   やられたよ   という表情を浮かべて、トイレの元へ戻った。

美女が出てきた。彼女も方向は同じだった。私に気がつかずに戻ろうとしていたが、案の定行く手を阻まれてしまった。引き返してきた彼女は、そこでやっと私に気づいた。  うぅ、私の目を見つめながらそっと言う美女。私は首を振り、肩をすくめながら   やられたよ   という表情を浮かべた。美女は微笑んでいた。

日本はどうだった? 何が好き? 出身地は?  など聞きたいことは山ほどあった。しかし、日本からまだ2時間も離れていない現状、さらには日本人の乗客も多数いる。まだ恥ずかしさが拭えなかった。お互いにちらちら見合っては微笑むばかり。CAさん、永遠にそこを行ったり来たりしててくれ。心の中でそう願っていた。

が、そんなはずもなく、その時を迎えた。カートが通過したのだ。美女は私の方を見ると  先いいよ  みたいなジェスチャーをしてきたので、いやいや君こそ先にいいよどうぞどうぞ   みたいなジェスチャーで返答した。先を行く美女の二歩後ろを、急に止まってくれれば思わずぶつかれるのにな  とは思わず付いていく。

美女は私の後ろから来ていたため、先に私の席に辿り着いた。ご夫婦にいかにも申し訳ない顏を浮かべながら席に座らせてもらった。この時はほんとにただ申し訳ない顔をしただけだった。席に着き数秒後、私は背筋をピンとして  ぱっと振り返った。二個後ろの、真ん中の席に金髪の美女はいた。ほんのりそばかすをちりばめた可愛らしい顔に微笑みがのぞいていた。2人の視線は交差していた。


という、言葉にするとながーい、でもその実短ーい出来事があったわけです。付け加えるなら、見慣れない外国人の顔は、男はイケメン、女は美人 に見えやすい、つまり、耐性が無いな、と実感した。

モスクワ到着後、1日泊まるため移動する最中たまたま美女と近い距離だった。美女は友達、いや姉妹かもしれない、身長も顔も髪色もそばかすも似てる気がした。美人姉妹だ。美人の連れ人も美人だが格好は少しパンク系だった。2人はとても楽しそうに会話していた。こちらには気づかなかった。

飛行機からバスに乗りターミナルに着くとエスカレーターを上がる。2連あるエスカレーターでたまたま姉妹と別のエスカレーターに乗ることになった。右斜め前にいるなー、と思いながら、トイレ事件で変な仲間意識を持っていた私は、直後にちらっとこちらを見てきた美女に思わず、同志よ!  と言いたげな顔もできずに微笑んだ。


美女とはこれっきりである。言語できれば楽しい会話の一つ二つくらいはできたのになー、いや片言でいいから話すだけ話す勇気、それが一番足りなかった。    学びのある時間だった。


★まとめ

飛行機でトイレ事件に巻き込まれた2人、私と美女、がただ微笑み合うだけのつかみ所のない話。学びがあったとはいえ。


三行で済むのか。