カールモール手帖第5回リレーコラム「ポエム」広島ブレイカー(東京ブルースブレイカーズ)

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はじめまして、マダムからバトンを受けました東京ブルースブレイカーズの広島ブレイカーと申します。本名は松村と言います。マダムからのお題は、ポエムですね。むむ、ポエムと言えば、思い出すのは故郷広島でメジャーな銘菓「母恵夢」です。これ、ポエムと読みます。東京でいう「ひよ子」タイプのお菓子で、モグモグうまい。子供の頃、よく食べてました。

そんなころ、私が広島で、なぜ音楽に目覚めたのか、なぜパンクロッカーになったのか、あたりをお話ししてみようと思います。

僕は小学生の頃、通知表を貰えば学校始まって以来の最高スコアを叩き出し、作文を書けば広島県知事から表彰され、卒業式では生徒代表で答辞を読み上げる、そんな神童で、中学も県下ナンバーワンの男子校に合格し

「将来は東大でも行って、なんかの大臣にでもなるか〜」と

母恵夢(ポエム)をモグモグほおばりながら、のんきに暮らしてました。でも、中学に入ってはたと気づくのです。

「お、男しか、いねぇ・・」

そしてこの暗黒な状況は高校卒業まで6年間つづく・・・僕の青春には、タッチの南ちゃんもいなければ、きまぐれオレンジロードの鮎川まどかちゃんもいなければ、ドカベン岩鬼の夏子はんも、いない。

すっかりガックリきていたその頃、社会科見学で広島映像文化ライブラリーというところに行きます。そこは映像の図書館のようなところで、司書のおばさんにリクエストを出せば、小さなブースでその映像が観られるというシステム。で、友達と、なんとなくタイトルがおもしろそうだったので、「ザ・カンニング」という洋画を観ました。愉快な学園ものなのですが、なんと、ちょいちょいエッチなシーンも出てくる。

「お、こんな公共施設で、こんなのアリ?」

友達と僕はニヤリとし、分厚い目録をチェックし直します。目を皿のようにしてタイトルを読んでいく。しかし、そのほとんどが真面目な資料映像で、高度経済成長期のニュース映像とか原爆関連のものとか。

でも、そんな中、見つけました!「処女の泉」という映画。

これは!これは、なにかエロス、が溢れ出てるではないですか。震える手で、リクエスト用紙に「処女の泉」と書き、司書のおばさんへ。怒られるかも、と思いきや、意外と笑顔で授受してくれる。ラッキー!友達と期待度マキシマムで、視聴しました。

・・・が、そこにはエロは皆無でした。

1960年のイングマール・ベルイマン監督作品。モノクロの沈痛なトーンの中、人間の信仰心と神の沈黙が描かれるド・ストイックな悲劇の映画。
僕たちは思わず、我々の罪を主に懺悔しそうになりましたが、中学生の
探究心は信仰心よりも強い。
再び、分厚い目録からエロいタイトルを血眼で探します。

すると、あ、ありました!
「セックス・ピストルズのロックンロール・スウィンドル」

何だ?セックス・ピストルって?セックスがピストルするってのは、どういう状態なのかさっぱりわからないけど、きっと何かすごいエロい事態に違いない!
司書のおばさんは今度は、明らかに嫌悪の表情を浮かべながらリクエストを授受しました。お、逆にこれは、期待できる!僕らは、はち切れんばかりの期待度で視聴します。

・・・そこにもエロはありませんでした。

だけど、そこには、NOという態度や、権威を嘲笑する精神、他人と同じじゃなくても良いという寛容性、そしてデザインの醜さと美しさ、つまりパンクがありました。

脳天に電撃が走った僕は、その日のうちに心はパンクロッカーになり、お年玉貯金をおろして一番安いプレシジョン・ベースを買いました。中学2年生の秋の話です。

そこからは70年代のパンクに血道を上げ、ピストルズのジョニー・ロットンがヒーロー。彼がプログレバンド、ピンク・フロイドのTシャツに、自分で「I HATE」と書き殴り、「ピンク・フロイドなんか嫌いだ」として着ていた、なんてエピソードに感銘を受けると、
僕も真似て手持ちのアディダスのTシャツに「I HATE」と書き加えます。そんで、部活で友達に

「ありゃ、松ちゃん、アディダス好きじゃ、言うとったけど、嫌いになったんね?プーマ派になったん?」

と問われ、

「う、うん、・・・プ、プーマの方がかっこええけん」

と頓珍漢に答えるという感じの、頓珍漢な地方都市でのパンク人生が始まり、神童だった僕はずんずん下降線をたどり、今に至ります。こんな僕でも受け入れてくれるカールモール!ファッキン・アイラブユー!

ではバトンをマダムに戻します。お題は「下降」で。よろしくお願いします。

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