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【映像で観るボーカロイドの世界】③『初音ミクであること。』

”電子の歌姫”初音ミクが誕生し、ニコニコ動画でその楽曲がアップロードされた2007年8月29日から約10年。
この10年であっという間に全世界へと拡大した彼女を中心としたVocaloidというムーブメントのなかで最も重要な位置を占めたのが、ニコニコ動画でありYoutubeであるといった各種動画サイトであり、ボーカロイド系の楽曲を聴かせるための動画――いわゆるPV(プロモーションビデオ)というアプローチであったことは明白である。
この10年間で公開された様々な『Vocaloid-PV』。
それらの中から強く印象に残った作品を紹介していくことで、Vocaloidというムーブメントを紐解いていこう、というのが、『映像で観るボーカロイドの世界』の主旨である――

『映像で観るボーカロイドの世界』③
『初音ミクであること。』


まずはこちらを見てほしい。2015年3月公開、23.exeさんの『ONLY 1』という曲である。


この動画で使用されている楽曲の作者でもある23.exeさんは、これまでにも数多くの初音ミクを使用した作品を公開している。

私が23.exeを初めて知った曲『OneMoreTime!』

ポップさを前面に押し出した名曲『Skip99』

タイポグラフィだけで表現された『It doesn't matter anyway』

ニコニコ超パーティー2016のオープニングを飾った曲『Shelter』

テクノサウンドに乗せたメロディアスでセンチメンタルな歌詞。
その中心となっているのは『初音ミク』の持つ『不確かな存在性』や『音楽』の持つ『確かな可能性』である。

しかしそれらはこれまでの10年で数々のボカロPが表現してきたいわば『定番』のテーマであり、今さらそれらを前面に押し出しても、現在の主流である『自らの曲をボカロに歌ってもらう』タイプの曲と比べるとどうしてもマンネリ感が強く感じられてしまい、強い衝撃を聴くもの、観るものに与えることが難しい。

にも拘わらず、この『ONLY 1』という曲が当時のニコニコのVocaloidカテゴリで一気にフューチャーされたのは、やはりこの映像表現があったからこそだと私は考えている。

『ONLY 1』はその他の作品同様、23.exeさん自らが動画制作も行っている。
動画自体はLat式ミク(Latさんがモデリングした初音ミクのMMDモデル)のみを前面に押し出したシンプルな演出であるが、シンプルだからこそ、その細やかでリアリティのある動きから描き出された『初音ミク』の持つ生き生きとした仕草が際立ち、そこに『It doesn't matter anyway』の際にも使用されたタイポグラフィの演出が加わることで、最後まで目が離せない、インパクトのある映像になっているのだ。

――と、そこでふと思う。

それぞれのVocaloidがマスターに依存することなく『この世界に存在するボーカリスト』として存在できるようになってきた昨今。
いわゆる『初音ミクの曲』――VocaloidがVocaloidとして、ディスプレイのこちら側で苦悩する『マスター』たちを応援しようとするそれらの曲が『初音ミク生誕祭』や『ミクの日』以外ではフューチャーされることが少なくなったこの時代に、だからこそこのような『初音ミクであること』を前面に押し出したPVは強いインパクトをリスナーに提供できるのかもしれない。


ちなみに余談だが、UTAUやCevio、Voiceloidに関しては未だ使用者であるマスターと寄り添っている印象が強いため、これはあくまでもVocaloidに関しての話だ、と受け取ってほしい。

もっともそれらの合成ソフトのキャラクターたちも、いくつかのブレイクスルーは来ているため、遠くない未来には現在のVocaloid達と同じアイデンティティを勝ち取ることになるだろうとは思う。

存在しないはずのものが存在する未来が、音楽の力で作り出されることに。


#vocanote

#初音ミク

#Vocaloid

#23exe

動画もしゃべりも未熟な私ですが、何か琴線に触れるものがありましたら、ぜひサポートお願いします。