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『映像で観るボーカロイドの世界』⑤海外に目を向ける。

”電子の歌姫”初音ミクが誕生し、ニコニコ動画でその楽曲がアップロードされた2007年8月29日から約10年。
この10年であっという間に全世界へと拡大した彼女を中心としたVocaloidというムーブメントのなかで最も重要な位置を占めたのが、ニコニコ動画でありYoutubeであるといった各種動画サイトであり、ボーカロイド系の楽曲を聴かせるための動画――いわゆるPV(プロモーションビデオ)というアプローチであったことは明白である。

この10年間で公開された様々な『Vocaloid-PV』。
それらの中から強く印象に残った作品を紹介していくことで、Vocaloidというムーブメントを紐解いていこう、というのが、『映像で観るボーカロイドの世界』の主旨である――

『映像で観るボーカロイドの世界』⑤
『海外に目を向ける。』



mahlazerさん、というMMDer(MMDを使って動画を作る人の総称)がいる。

彼(?)を知った初めての動画作品は、第15回MMD杯に参加した(は良いがレギュレーション違反で残念な結果になった)、この作品だった。

元ネタは海外で公開されたコラボ作品なのだが、驚くべきことにこれはモーショントレースをしたわけではなく、全てお手製のモーションなのだ。

これだけのキャラをそれぞれの個性を活かしつつ生き生きと歌わせる事が出来ているMMD作品を、私は他に一つしか知らない。キシドーPの第12回MMD杯参加作品『ハッピーエンド・レターズ』だ。

こういったお祭り系の作品はただ見ていて楽しいのだけど、mahlazerさんについてはそこにもう一つ驚きの事実がプラスされていた。

なんとこの人、海外在住なのである。
もっと言えばこの人、ガイジンさんなのである。

MMD=MikuMikuDanceは、和製のフリーソフトだ。しかもこれの発祥は(たしか)ニコニコ動画からで、海外がメインのプラットフォームになっているYoutubeからではない。
つまり、このガイジンさんは、わざわざMMDを手に入れて、情報の少ない海外でコツコツと動画を作り続けてるわけなのだ。すごい。

実は、以前からプッシュしている”調声の女神”Cilliaさんや『ECHO』でおなじみのボカロPであるCrusher-Pなど、ボーカロイドに魅せられて海外で活動を続けている外人さんは意外と多いのだけど、MMDをメインプラットフォームにして動画を作り続けている外人さんは意外と少ない。
ましてや、日本人のユーザーよりも高いレベルの作品を作り続けてる人、となると、ほんとに数えるほどしかいないと思っている。

ちなみに彼(だとおもう)はYoutubeで活発に作品を公開されている。
その作風はダンス系、モーショントレース系、創作系と、まあ本当にいろいろと作られていて、そのどれもが(そのネタがあちらの国じゃないと理解できなくとも)高水準の作品に仕上がっている。

例えばいくつか紹介しよう。

ひとつめは、げるPさんの13回MMD杯本選作品からのインスパイア『Way  We Are』。

ふたつめは最初に紹介した『STARSHIPS』と同じくアカペラ動画からインスパイアされて作成された『Acapella』。

三つめは、海外のYoutuberがホラー映画の予告編を見たリアクション動画をもとにして作成された『Vocaloids React to Horror Trailer』。

あ、これも紹介しておこう。同じくYoutuberのリプレイ動画から。『Rin "Tries" to play Cold E-Mail (Rage Game)』

おわかりいただけただろうか。
彼の真骨頂は、むしろ既存のモーションを使用した動画ではなく、むしろそこに至るまでのドラマ仕立てのパートや、上記のYoutuberネタにあるような、さりげない仕草やリアクションなどに見受けられる、とても自然な動きの付け方にあるのだ。

まるで海外のCGアニメ映画をほうふつとさせるそのダイナミックだが繊細な動きは、たとえそのネタが面白いと思えなくても魅力的で。
この動きを表現するために、この人はどれだけの手間と時間をかけているのだろう……と思うと、尊敬を通り越して戦慄すら覚えてしまうのだ。

ボーカロイドのムーブメントが拡がっていく中で生まれたMMDが、むしろ単体で世界に飛び出し、このように素晴らしい作品を生み出している。

これもまた、ボーカロイドというムーブメントが及ぼした影響なのではないだろうか。


そして最後に、個人的には大好きな作品『I Will Fly』を紹介してお別れとしよう。

というわけで。
ここまでご視聴いただき、ありがとうございました!


動画もしゃべりも未熟な私ですが、何か琴線に触れるものがありましたら、ぜひサポートお願いします。