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選挙とネットの誹謗中傷問題

ネットの誹謗中傷問題に取り組むと宣言

2020年8月、NHK党(旧N国党)の党首である立花孝志氏は党としてネットの誹謗中傷問題に取り組むという宣言をしました。それなりにNHK党を知っている方であれば、この宣言に違和感を覚えたことでしょう。
というのも、立花氏自身が炎上戦略=NHK党の売名のために有名人を利用して過激な言動を取ってきた人物だからです。
また立花氏は誹謗中傷問題へ取り組むきっかけとなった理由について以下のように発信しています。

当時のNHK党は支持率低下によって地方選挙に苦戦していました。しかし、それと立花氏の言う「誹謗中傷」との因果関係は不明です。
むしろ同年3月に威力業務妨害等、複数の容疑で家宅捜索を受け、4月には在宅起訴をされたこと。7月の東京都知事選でホリエモン新党を旗揚げし、自ら立候補するも惨敗を喫したことなど、犯罪容疑や迷走する戦略が支持者離れを引き起こした原因だと考えたほうが妥当でしょう。

Twitterユーザーに対する開示請求

立花氏は「名誉感情の侵害」として、Twitter上のいくつかの投稿に対して開示請求を行いました。長くなるので詳細は省きますが、仮処分の段階で示談を呼びかけながらも、開示が認められなかったケースは多々あります。立花氏の、普段の過激な言動も裁判の際には考慮されたようです。

※個別の事案については、裁判ウォッチャーの山口三尊氏がご自身のYouTubeチャンネルにおいて詳しく解説されています。興味のある方はぜひ。
https://www.youtube.com/channel/UCmt-nilJZFmw89dnWlLdygg

政治家、しかも公党の党首が開示請求を行うことは言論封殺に繋がる恐れもあります。相手が誰であれ誹謗中傷は許されませんが、開示の対象とする投稿は慎重に選ぶべきだったと思います。
ところが「この程度のものが(仮処分を)認められるとは思わなかった」という主旨の発言をし、投稿者を「犯罪者」と断定しながらも、プロバイダ裁判では複数回負けている(=違法性が認められなかった)という事実がある点は知っておくべきでしょう。

東京都知事選、区議選における言動

2020年7月。NHK党が「誹謗中傷問題に取り組む」と宣言をする一か月ほど前の話です。東京・北区議選にホリエモン新党から新藤加菜氏が立候補し、その過激な選挙ポスターが物議をかもしました。
このポスターを巡ってはSNS上でかなりの批判が巻き起こりました。立花氏はこれを鎮静化させるため、批判ツイートに対して以下の内容の投稿を繰り返し行っています。

※この騒動における立花氏の投稿についてはモンキーポッド様が詳しく解説されています。
https://note.com/saman2020/n/n96bf3d702899

その一方で同期間中、立花氏は都知事選の対立候補に対してLGBTを絡めた侮辱的なツイートや動画を何度も投稿しています。自分や身内への誹謗中傷は許さないとしながら、自らは他人を激しく攻撃する。なぜこのような矛盾がまかり通るのかといえば、そこには立花氏独特の持論があるからだと考えます。

立花氏はしばしば「私に名誉棄損されたと思う人はどうぞ裁判を起こしてください」と主張します。

これは開き直りとも取れます。
誹謗中傷問題に取り組むのであれば、まずは自身が過去の言動について反省し、今後はそうしたことのないよう厳に慎むべきではないでしょうか。(少なくともその意思は示すべきだと筆者は考えます)

「文句があるなら訴えろ」では、他人にやめろとしながらも自身が控える気など毛頭ないと言っているようなものです。こうした人物が「誹謗中傷問題に取り組む」と主張したところで説得力に欠けると言わざるを得ません。

2022年参院選における特定個人への攻撃

2022年の参院選を振り返ると、立花氏率いるNHK党は暴露系YouTuberを擁立し、芸能人や民間企業への攻撃といってもいい発信を連日のように繰り広げました。

事実なら、公益性があれば名誉棄損には当たらないというのがNHK党の主張ですが、芸能人の私生活のスキャンダルに公益性などあるのでしょうか。
公共の電波を利用しているのだから疑惑に対して説明責任がある、というのもNHK党が主張するところです。が、いざ裁判になった時、そうした理屈が認められるかどうかは疑問です。あくまでNHK党がそう主張しているに過ぎません。
忘れてはいけないのが、NHKや批判的なジャーナリストとの数多くの裁判において、NHK党の法解釈が通用しなかった例も多いという点です。

最後に

ネットの誹謗中傷問題に取り組む、その宣言から2年が経とうとしています。この2年間、NHK党は果たしてその問題へ真剣に取り組んできたといえるでしょうか。

支持者を扇動し、TwitterでYouTubeで、果ては街頭演説においてまで参院選の期間中、特定個人を激しく糾弾し続けたのは「第二の木村花さんを生まないため」だったのか。
今となっては、彼らのその主張はあまりにも虚しく聞こえます。


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