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安易に富裕層増税法案を可決してはならない(ヘリテージ財団の記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2151319

 2021年10月29日にヘリテージ財団は、現在審議されている社会保障拡充に伴う増税法案に関する記事を発表した。内容は、富裕層に対する資産課税や外形標準課税を適用しようとしていることに対して批判するものである。巨額の財政政策ばかりが注目されており、株式市場もそちらのニュースに引っ張られているが、その財源として増税が審議されていることが知られていないことから、警鐘を鳴らす意味で本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Why Congress Shouldn’t Rush to Enact Poorly Conceived New Taxes to Fund Spending Spree)
https://www.heritage.org/taxes/commentary/why-congress-shouldnt-rush-enact-poorly-conceived-new-taxes-fund-spending-spree

1.本記事の内容について
 ・社会保障拡充に伴う増税法案が審議されており、ここ数週間で民主党が提案してきた案は、悪いものばかりである。下院歳入委員会では、法人税、所得税及びキャピタルゲイン税を増税する法案を推進してきたが、法人税率は先進国で最高レベルに設定されていた。
 ・一部民主党議員から強い反対を受け、今度は富裕層課税に転換することにし、修正第16条以来の所得税を根本的に変革させる内容のものを出してきた。それは、資産の含み益に課税するというものである。これは一つの資産に依存している場合に大きな問題となり、他に十分な収入がない場合は資産を売らざるを得なくなる。
 ・感覚に反して、富裕層の資産の90%以上がビジネスで保有している株である。ベゾス、ザッカーバーグ、バフェット、マスクなどは保有株を主な資産としており、その利益はベンチャービジネスに投資されているのである。
・もし経済が順調に成長するとしても、富裕層が生活費の2%から十分な税金を支払うことができると考えるのは非現実的である。むしろ富裕層は、ビジネスに投資している98%の資産から税金を支払っているのである。
 ・OECDは、EUの富裕層課税はほとんど所得再分配機能を果たすことができていないと結論付けている。また富裕層課税から得られる税額は非常に少なく、むしろ富裕層が税率の低い国や地域へ資産を逃がしてしまうことから、それだけ一層歳入が減少するのである。事実、フランス、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、アイスランド、フィンランドが富裕層増税を断念している。
 ・含み益の課税は、税当局にとっても大きな負担となる。1年単位で資産価値を容易に確定する方法はなく、官僚主義的手続きで資産を把握するか、それとも価値を確定することが難しい資産については、売却時に課税するかの二択になる。民主党内の反対により、含み益課税案は一時的に撤回されたように見えるが、より複雑な折衷法案を出してきた。今度の法案は、大企業の法人税の最低税率設定である。これは大企業の簿価上の利益剰余金に15%の法人税を課すというものであり、利益の算定は、コネチカットにある財務会計基準審議会というNPOが担うことになる。
 ・企業はしばしば赤字の場合や通算して赤字となった場合に税金を払わないことから、こういった簿価への標準外形課税は一定の支持がある。純営業損失という制度は非常によくできた仕組みであり、一時的に大きな損失を被る企業や利益が出るまで長い期間を要する企業が救済されるのである。
 ・現在の法案には30の法人税優遇制度が盛り込まれており、この対象となる企業が拡大されることが見込まれており、国際的な課税にも広げようとしている。こういった税制の複雑化は、監査人や会計士にとってはいいニュースであるが、起業家にとっては悪いニュースである。議会はヒポクラテスの「まず何よりも害をなすなかれ」という言葉を思い出し、これ以上税を複雑化させる法案を可決してはならない。

2.本記事読後の感想
  アメリカの増税法案の話は、なかなかメディアに出てこない。民主党を守るために意図的に隠蔽しているのだろうか、それとも難しくて解説ができないのかのいずれかだろう。ただ現状は、財政支出ばかりが着目され過ぎであり、その財源として増税法案が提出されているという事実はもっと知られるべきだろう。
  税金は財源の一部ではあるが、全てではないのであり、国債で賄うという方法があるし、中央銀行の金融緩和のような通貨発行という形もあり得る。財政均衡を重視するあまり、財源が税収しかないという意見に偏っているのは残念である。また税は国の経済の体系を形作る重要な要素であり、増税は確実に経済を縮小させる効果を持つ。増税によりビジネスが成り立たなくなる、新しいビジネスに挑戦するインセンティブが無くなる、といったことにより経済には悪影響が及ぶ。無論、無税では政治行政が成り立たないため一定程度の課税は必要であるが、政府は極力経済を毀損するような制度を採用するべきではない。経済にとって重要なことは自由である。自由により様々なアイディアが誕生し、新たなビジネスが創出されていく。危害を加えない限りは規制することなく自由にやらせるべきであり、税収を増やせると言った単純な理由で課税してはならない。

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