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ヘルスケアを破壊する3.5兆ドル予算案(ヘリテージ財団の記事)

写真出展:Elf-MoondanceによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/elf-moondance-19728901/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=5898771

 2021年10月20日にヘリテージ財団は、昨今のサプライチェーンの混乱について分析する記事を発表した。内容は、バイデン政権の縁故主義的政策や環境政策などの規制が、サプライチェーンの悪化に拍車をかけていることを批判するものである。最近インフレのニュースが取りざたされているが、その要因としてのサプライチェーンの混乱が良く分かる内容であることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(7 Ways Democrats’ $3.5 Trillion Tax-and-Spend Bill Would Take Over Your Health Care)
https://www.heritage.org/health-care-reform/commentary/7-ways-democrats-35-trillion-tax-and-spend-bill-would-take-over-your

1.本記事の内容について
 ・3.5兆ドル予算の妥協案として、社会福祉予算を削減しようとしているが、全く的外れである。福祉法案に反対している理由は金額だけでなく、患者や家族から権利を奪い、連邦政府に権限を委譲する強権的なものだからである。本法案は、かつてないほど連邦政府がヘルスケアを管理する中央集権的な内容になっている。
・本法案に含まれる、ヘルスケアを破壊するないしはサービスを低下させる7つの項目は以下の通りである。

 ① 連邦政府が管理するヘルスプラン
  本法案には、一定の低所得者に医療サービスを提供する連邦政府と州政府が共同で展開している、メディケイドをモデルとしたプログラムが含まれており、オバマケアを採用していない州の住民にも適用されることになっている。
  一見限定的に見えるが、容易に拡大することが見込まれるものであり、保険料の負担が増大し、民間の医療保険などを不当に排除することになる。また政府の権限強化のため、官僚的な制度も強制的に導入されることになるだろう。

 ② 富裕層優遇
  本法案は、既存のオバマケア補助金をさらに拡大し、収入要件を設けずに適用しようとしている。保険料についても、連邦政府が設定する貧困収入の1.5倍までは増額されない。更に貧困収入の4倍の収入を有する富裕層にまで適用が拡大されることになっている。このことにより、すでに民間保険に加入している人々まで政府の保険に入ることになる。
  オバマケアの加入者が増大するほど政府の権限が拡大し、政府の非効率かつ偏った運営により医療コストが増大し、この帰結として保険料が増大し続けることになるだろう。

 ③ 民間保険、共済保険の削減
  本法案により、企業の共済保険に加入している労働者もオバマケア補助金を受領することができるようになる。現行法では、保険料が収入の9.2%を超過していない限り、共済保険に加入している労働者はオバマケア補助金の恩恵を受けられないが、本法案では8.5%まで率を下げている。
  民間保険及び共済保険はアメリカ人の主たる健康保険であり、政府主導の保険が主流になっていない要因になっているが、本法案の改正はこれまで順調に機能してきた非政府の保険市場を破壊することになる。本法案が可決されれば、280万の労働者が共済保険から脱会することになる。

 ④ オバマケア以外の選択肢を狭める
  本法案は、連邦政府の基金をオバマケアの要件に合致していない保険に活用することを禁じており、しかも短期間かつオバマケアに関連するものに限られている。このことにより保険料が上昇することになるにも関わらず、選択肢が狭められることになるため、多くのアメリカ人は代替の保険を探すことに躍起になっている。この政策の推進により、民間の保険が衰退することになり、ますます選択肢が狭まることになるだろう。

 ⑤ 政府保険の不当な拡大
  本法案には、介護保険への連邦政府の補助金投入が盛り込まれており、1900億ドルが計上されている。更に州政府のメディケイド事業に連邦政府が新たな要件を追加しており、州政府の裁量を狭め、民間部門の選択肢を排除し、負担にまみれているセーフティネットを更に苦しめることになる。

 ⑥ 時代にそぐわない医療保険への新たな診療科目追加
  本法案は、歯科、耳鼻科、眼科に新たに医療保険を適用しようとしている。高齢者は一定の医療費を負担しているものの、実際には他の納税者の負担が大きくなっている。
 これら診療科目はすでに民間保険が主なサービスの対象としており、危機的な水準にある公的保険の財政を更に苦しめることになるだろう。

 ⑦ 政府による処方薬の統制
  本法案は、他国の薬価との比較により、連邦政府が特定の処方薬の薬価を決定するとしている。政府の価格決定に従わない製薬企業は、消費税を課されることになる。また政府の統制は薬品に留まらず、ヘルスケアサービスにも及ぶことになる。先例として、イギリスやカナダの医療システムがあるが、これらの国では医療ケア待機者が多くおり、サービスも少ないないしはほとんどない状況である。

2.本記事読後の感想
  今回の記事を読むと、健全な国民皆保険の良さが良く分かる。民間保険の重要性を強調しているが、これは適正な国民皆保険がないからと言うこともできるのではないだろうか。
  ただ、今回の法案に含まれている医療政策は非常に悪いものである。日本で言う国民保険の適用を拡大したり、やたらと診療科目を追加したりすると、保険料が増加し、低所得者ほど社会保険料の負担が増大する。国民保険は最低限のものであるべきなのだが、あらゆる医療を提供するものになれば、その負担は健康な人にしわ寄せがいく。しかも高齢者が増えれば、若年層の負担が不当に増大することになり、保険財政が持続不可能になる。
  大事なことは、基礎的な医療サービスを手厚くし、高度な治療に関しては民間保険に委ねるなどの適切な住み分けである。あらゆる診療科目を対象にするのは安心感を得られるだけで、実際の利益はほとんどなく、かといって削減しすぎれば不健康な人口が増加し、結果として医療費が増大してしまう。
  日本ができることは、愚かな政策を真似ないこと、時代に合った政策を実行することである。医療保険に関しては、最近ようやと国籍を確認するなどして過度な保険適用拡大を防ぐようになっているが、まだ不十分である。現在の医療体制を維持しつつ、高齢者に適切な負担をお願いしていくという方向しかない。

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