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新疆ウイグル自治区の人権侵害に関する中国の情報工作(2)(ASPIの報告書)

liuguangxiによるPixabayからの画像 https://pixabay.com/ja/users/liuguangxi-16071741/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6559401

本記事は、新疆ウイグル自治区の人権侵害に関する中国の情報工作(1)(ASPIの報告書)の続編である。前回の記事は、以下のリンクを参照。

1.本報告書の内容(2)について
  今回の分析対象は、データ群「新疆オンライン」(CNHU)である。
  詳細な内容については、以下の通り。
  ① アカウント作成状況
    このネットワークにおけるアカウントは、2020年3月以降に急増している。(図4)

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 このうち、簡易体中国語のアカウントは4件であり、その他は英語である。また実在の人物のものかどうかが怪しく、プロフィールを表示しているアカウントは26件のみであり、居住地を表示しているものはない。

  ② 活動状況
    活動は極めて少なく、フォロワー数やいいね数が極端に低いユーザーが多い。ただいいねが多いアカウントは、中国共産党の外交官がツイートやシェアなどするしているものばかりである。中国共産党の外交官は、新疆に関する情報を発信しているいくつかのアカウントを推奨しているが、これらは前向きな情報発信をしているものに限られており、3つのアカウントはツイッターにより停止されている。(図5)

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 ③ シェアしているコンテンツ
  ・まずこのネットワークにおいては、「平和で幸せな生活」を送っているウイグル人についての話が頻繁にシェアされている。ただそのシェアされている元の記事は、中国日報のものである。(図6)

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 また新疆の「職業教育及び訓練センター」の受講者のインタビュー動画もシェアされており、2020年1月3日以降、ウルムチ市及び北京にて「新疆関係事項」の記者会見が55回以上取り上げられている。(図7)

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新疆の国家メディアドキュメンタリーのシェアも多く、例えば「ウルムチ市のエピデミックとの格闘」と題された画像は、400回以上シェアされている。(図8)

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 またこのアカウントは、中国国務院情報室のツイッターアカウントの切り抜きを、少なくとも187回シェアしていた。
 ・海外メディア及び政府に反論するコンテンツもシェアされている。例えば、BBCの中国報道を標的としたコンテンツは、少なくとも20回以上シェアされている。(図9)

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 その他として、アメリカ、ヨーロッパ、イギリス及びカナダによる中国共産党幹部に対する制裁に関する「天山網」(新疆の公式国家ニュースウェブサイト)の記事は、1日で39回シェアされた。(図10)

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 ・海外の親中派によるコンテンツも数多くシェアされている。パキスタンの駐中国大使であるモイン・ウル・ハキエの公式ツイッターアカウントは、新疆訪問についての投稿した後、少なくとも30回リツイートされた。(図11)

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 また、人民日報ウェブサイトのパキスタンジャーナリストであるモハマド・アシュガーとのインタビューを約40回シェアしている。このインタビューにおいて、アシュガーは新疆の「職業訓練センター」を訪問したと語っており、「再教育キャンプ」であることを否定した。(中国日報記事は、国家メディアにより主催された新疆への旅行について記述しているが、そこには参加者としてアシュガーの写真が掲載されていた。コメントがこの旅行の一環として作成されたものであるか否かは不明である。)また同様の主張を展開する、パキスタントゥデイのニュース記事もシェアされていた。

・中国在住の外国人によるコンテンツもある。新疆についてのBBC報道に反論する「バリー」というイギリス人によるYoutube動画は、本ネットワークにおいてシェアされたURLの上位20に入っている。同様に、イギリス系オーストラリア人のジェリー・グレイのツイッターアカウントは、40回以上もリツイート、タグ付けされた。(図12)

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 その他、新疆における強制労働の存在を否定するコンテンツを作成しているインフルエンサーである、カール・ツアのツイッターアカウントは、60回以上も言及されている。(図13)

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 ④ CNHUネットワークの戦略概要
  ・自動化ツール活用の可能性
   2020年1月ごろ自動化システムの動作試験もしくはフォロワー数の増加などの、自動化システムを導入する準備を始めていた。例えば、CNHUデータにおける700のツイートは、ランダムな4文字コードで終わっている。(図14参照)

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その他の証拠として、同様の投稿パターンや行動を示す傾向にある。例えば、2020年4月3日以前に作成されたアカウントは、同じ日に、同じ言語でツイートする傾向にある。協調の兆候を示す活動日は、2020年4月14日、2020年6月26日、2020年7月30日、2020年10月20日、2020年11月19日である。

・画像シェアの繰り返し
 CNHUデータにおける全てのツイートのうち、ほぼ半数(41%)が画像もしくは映像を含み、本データにおいて合計1万2400万の画像及び466の画像が存在する。図15は、イェールデジタル人間科学研究所のPixPlotによりCNHUデータ群における全ての画像を表示した示したものである。左側の白の四角形は、中国日報記事のスクリーンショットであり、上部左側の緑色の四角形は中国国務院情報室の記事である。

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・灰色の透かし文字入りの画像シェア
 シェアされている画像には、文字と数値からなる視認可能な灰色の透かし文字が入る傾向にあることが判明した。(図16)目的は不明であるが、自動化のマークである可能性がある。

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・ユーチューブもしくはツイッターへの直接リンクを含む、ビデオのシェア
 CNHUネットワークでは、動画は画像ほど流布していないが、一部の映像が繰り返しシェアされている。「新疆へのいざない」というバナーの入ったある動画(図17)などは、47回シェアされていた。

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シェアされた多くの動画は、抖音(中国本土のTikTok)を情報源とするものであり、動画の左上に抖音/TikTokのロゴが入っている。(図18)

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最も頻繁に用いられている言葉及びフレーズは、新疆及び中国共産党のCovid-19への対応関係のコンテンツである。
ジェリー・グレイ及びCGTNリポーターの李菁菁とのインタビューは、頻繁にシェアされている。

・中国共産党国家メディア、外交官及び親中国共産党インフルエンサーのリツイート                                本ネットワークのリツイートのうち48%(1308件)が、中国共産党の国家メディア及び外交官のアカウントである。(図19)

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 グローバルタイムズアカウントが最も多くリツイート(287件)されており、次に続くは中国外交部報道官の華春瑩(108件)である。ネットワークの円は、あるアカウントが他のアカウントによりリツイートされた頻度により大きさが決定され、近隣のアカウントは共に、同じアカウントをリツイートする傾向にある。

・他のプラットフォームにおける中国共産党国家メディアコンテンツへのリンク
 CNHUネットワークにおけるアカウントはツイッター以外の人々、中国国家メディア及びユーチューブチャンネルの方向へと向かっている可能性が高い。全ツイートのうち、35%が外部のウェブサイトにリンクしており、そのほとんどは中国日報、CGTN及びグローバルタイムズのような中国国家メディアである。(図20)

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・複数言語のハッシュタグの活用
 本ネットワークにおけるハッシュタグは、様々な言語を利用しており、国際社会を相手にしたものであることを示唆している。例えば、#MonCarnetDeRouteAuXinjiangというフランス語のハッシュタグは、本ネットワークにおいて約80回も用いられている。#新疆(アラビア語)は、190回も使われている。

⑤ CNHUネットワークのデータ
  今回分析したデータの結果については、以下の表のとおりである。

データ1:CNHUのハッシュタグベスト20

データ1:共有されたサイトベスト10

データ1:共有されたURLベスト20

データ1:リツイートされたアカウントベスト10

データ1:CNHUで使われているツイッタークライアント


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