見出し画像

南米のリチウムとアメリカの戦略(CSISの記事)

写真出展:Derrick SherrillによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/derricksherrill-9763230/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4300481

CSISは2021年8月17日に、南米のリチウム生産とアメリカの戦略に関する記事を発表した。内容は、チリ、ボリビア、アルゼンチンの各国との連携を深め、重要物資であるリチウムを確保するための提言である。リチウムの重要性は認識されているもののその情報が少ないことから、参考地して本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(South America’s Lithium Triangle: Opportunities for the Biden Administration)
https://www.csis.org/analysis/south-americas-lithium-triangle-opportunities-biden-administration

1.記事の内容について
  ・1991年にリチウムイオン電池が開発されて以来、電池業界が一変し、軽量で充電可能な大容量バッテリーが生産されるようになった。過去5年間においても、2016年から2018年にかけて需要が倍増した。2027年までに約8倍近くまでリチウム産業が拡大すると見込まれており、更に電気自動車やクリーンエネルギーの需要が高まることで、リチウムの確保が地政学的な紛争にまで発展することになることが予想される。
 ・ラテンアメリカは、リチウムの最大埋蔵量を誇る地域である。アンデス山脈南西部のアルゼンチン、ボリビア、チリの国境付近は「リチウムトライアングル」と呼ばれる、リチウムが豊富な地域であり、世界の約58%を占めているとされる。チリは商用化に成功しているものの、アルゼンチンとボリビアは投資の不足や地理的要因により、経済的には失敗している。
・オーストラリアはリチウムの世界最大の生産国であるが、岩石層から直接掘削している。リチウムトライアングルは、地下の塩湖かん水に埋蔵されており、掘削が困難である。アルゼンチンは、2019年から多くのリチウム鉱山を開発しており、鉱山投資への減税などの政策を打ち出している。ボリビアには世界最大級の塩湖かん水があるが投資が不足しており、ドイツの企業との共同事業も政治的混乱で停滞していることから、経済的な成功に至っていない。チリは地理的要因や歴史的経緯から成功しており、アメリカ企業と国有企業がリチウム産業を先導している。
・リチウム生産においては、18か月間の不純物除去の後、蒸発、中和などの作業が必要となり、リチウム1トン当たり50万ガロンの水が必要となる。このため、本事業の持続可能性が問題となっており、農業などの地域の産業に悪影響を与えている。
・それでも、リチウムトライアングルの地政学的に重要であり、中国への対抗において、必要不可欠である。中国はリチウム化学製品生産量の55%を占めているが、この優位性確保のため、リチウムトライアングルへの投資を増額している。ガンフォンリチウムは、2022年中ごろにアルゼンチンで最大級のリチウム鉱山を開発するよう働きかけている。また天斉リチウムはチリ国有企業のSQMの株式を大量に取得し、2番目の大株主となっている。これだけでなく、ワクチン外交でも両国との関係を深めており、アメリカはこの状況に適切に対処しなければならない。
 ・バイデン政権は国際的な官民連携を強化し、リチウムトライアングルへの投資を促すべきである。またリチウムのみならず、技術や製品へも投資するべきである。現在の南米各国とアメリカの関係は良好とは言えないが、投資を通じて各種外交政策も多層的に展開するべきである。クリーンエネルギーフォーラムの開催などにより、持続可能なリチウム生産を議論、開発するなどの手段も考えられ、各国がその価値観に関わらず連携がしやすくなるだろう。新たな抽出技術の研究も発表されており、従来の手法の2%程度しか水を使用しないものもある。戦略的な投資、研究開発、効果的な外交の展開により、リチウムトライアングルを有効に活用することが重要である。


2.記事読後の感想について
  半導体やレアアースばかりが着目されがちだが、リチウムも重要資源の一つであり、当面はバッテリーの主力となる。並行して他の資源や技術も開発中であることから、リチウム一点買いというわけにはいかないが、いかに確保するのかが短中期的な戦略的課題になるだろう。
  電気自動車は中国が優勢であり、リチウムが中国に奪われないようにすることが目先の目標になる。南米は中国に侵食されつつあり、アメリカの裏庭だからと安心することはできない。政府がどこまでの絵を描いているのかは不明であるが、ボリビアで共同でのリチウム抽出実験を行うなど、決して手をこまねいているわけではない。通り一遍の資源国への円借款だけでなく、投資促進、経済協定などの多層的な取り組みに陣rひょくしてもらいたいものだ。南米に手を出すのは困難だろうが、アジア地域での役割分担とバーターに、リチウムの確保で民主主義陣営が連携していくことを期待したい。
  
英文を読んでわからないという方は、メールにて解説情報をご提供させていただきます。なにぶん素人の理解ですので、一部ご期待に沿えないかもしれませんので、その場合はご容赦願います。当方から提供した情報については、以下の条件を守ったうえで、ご利用いただきますようよろしくお願いいたします。

(1) 営利目的で利用しないこと。
(2) 個人の学習などの目的の範囲で利用し、集団での学習などで配布しないこと。
(3) 一部であっても不特定多数の者が閲覧可能な場所で掲載・公開する場合には、出典を明示すること。(リンク先及び提供者のサイト名)
(4) 著作元から著作権侵害という指摘があった場合、削除すること。
(5) 当方から提供した情報を用いて行う一切の行為(情報を編集・加工等した情報を利用することを含む。)について何ら責任を負わない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?