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国際協力と論文数(CSETの報告書)

写真出展:Md Babu MiaによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/mdbabumia960-12596297/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4270987

 2021年11月にCSETは、世界各国の科学論文数と国際協力の関係に関する記事を発表した。内容は、科学競争については米中を軸に語られることが多いが、世界的な情勢を大まかに把握できるような情報はあまりない。このため、今回は参考として、本報告書の概要について紹介させていただく。

↓リンク先(Research Impact, Research Output, and the Role of International Collaboration)
https://cset.georgetown.edu/publication/research-impact-research-output-and-the-role-of-international-collaboration/

・今回の報告書では、スコーパスとCSETの統合コーパス(Dimensions、Web of Science、マイクロソフトアカデミックグラフ、中国国家知識インフラ(CNKI)、arXiv、Paperw with Code)を活用して、2010年から2019年までの世界の論文数を調査した。今回の分析では特に国際協力と論文発行国に着目しており、単独組織の論文であれば、その組織が属する国の論文として扱い、複数組織にまたがる場合には、共同論文として取り扱う。EU27か国は、地域統一的な基金を持ち、各国の共同数が多いことから、1つの国として扱った。

・論文発行数上位10か国の共同率は、中国以外はそれなりに高い水準にあることが判明した。また、共同論文と高頻度引用研究(上位10%以上)の関係性を分析し、共同国が多いほど論文が注目されやすいということが判明した。(詳細図1参照)

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 表1は、CSET統合コーパスの論文発行数の上位10か国を抽出したものである。中国の論文数が圧倒的に多く、全体の約43%を占めている。これに続いてEU、アメリカが約18%であった。

 図2は、各国の共同論文の比率を示したものである。英語を第一言語とする国々(イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカ)は、高い比率を示しているが、中国は非常に低いことがわかる。また比率の順位が固定的であることもわかる。

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 図3は、共同論文と単独論文別の引用頻度を比較したものである。共同論文ほど高頻度に引用されており、中でもイギリス、オーストラリア、カナダの共同論文の引用頻度が大きくなっている。

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 図4は、共同国数別の引用頻度を比較したものである。共同国数が多いほど、引用頻度が高くなっていることがわかる。特にブラジルは、4か国以上の共同論文が単独論文よりも30%引用頻度が増加しており、共著の重要性がわかる。

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 図5は、コンピューターサイセンス、物質科学、医学分野におけるそれぞれの引用頻度を比較したものである。特に共同論文の引用頻度が高くなっているのは、医学である。中国とインドは、物質科学に関する単独論文の引用頻度が高い。アメリカとイギリスは、コンピューターサイエンスに関する単独論文の引用頻度が高い。

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 図6は、中国とアメリカから共同論文を除いた場合の発行数の変化を比較したものである。共同数上位5か国を除いた場合の比率となっている。
 中国は共同論文数が少ないことから、比率が下がらないが、アメリカはEUや中国との共同論文を除くと比率が大幅に下落する。

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 図7は、中国とアメリカの共同論文を除いた場合の、各国の論文発行数の変化を比較したものである。特に、中国との共同論文を除いた影響が各国とも大きくなる。

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 付録図Aは、中国国家知識インフラ単独掲載論文とそれ以外の論文の引用頻度を比較したものである。中国の高引用頻度論文が少ないのは、中国国家知識インフラが原因ではないことがわかる。

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付録表1Aは、EU27か国の論文発行数の内訳である。


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