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Sound Horizonの好きなアルバム3選

Sound Horizon(サウンドホライズン)とは、主宰Revo(レヴォ)率いる音楽ユニットのことである。通称は「サンホラ」あるいは「SH」。音楽で物語を、いや物語で音楽を・・・・・・表現した「幻想楽団」。曲ごとに、アルバムごとにストーリーがあり、楽曲のジャンルは様々、多くの声優を起用し、歌詞の内容はときに難解。そんな「物語音楽」という独自のジャンルを切り開いたアーティスト。
と、いうのがいま現在のサンホラに対する私の認識である。
おそらくRevoのことは、ゲーム『ブレイブリーデフォルト』、あるいはアニメ『進撃の巨人』では主題歌「紅蓮の弓矢」なんかで知る人も多いじゃないかな。
サンホラが活動を開始したのは1999年ころからで、以降アルバムを出したり、コンサートを行ったり、ネット上でも様々な活動をしていて根強いファンがたくさんいる模様。私がちゃんとこの人(たち?)のことを認識したのはつい最近のことで、耳馴染みのない独特の楽曲群は新鮮なものばかりだった。
で、まあメジャーアルバムを中心に一通り聴き終わったので、気に入ったアルバムとか曲について、その魅力を自分なりにまとめてみようと思う。


『Elysion~楽園幻想物語組曲~』

まずはこれ。Sound Horizonのメジャー二作目のアルバム。
サンホラの曲は歌詞=物語となっているため一曲ごとしっかりと歌詞を読まないと良さを理解するのは難しいです。もちろん楽曲としての良さ、つまりメロディの美しさや気分をあげる効果などは、ながら聴きでも伝わっては来るものの、当て字が非常に多いため「歌詞を読みながら聴く」ということを前提に作られている気がします。さらにその歌詞には叙述的な言い回しや考察を必要とする部分も多くあり、なんだかんだで「曲を聴く」→「物語を読み解く」というところまで行かないと楽曲を100パーセント理解したことにはなりません。その上、アルバム単位で見ると全体でひとつの物語が(なんとなくではあるものの)用意されており、しかしながら曲の順番が物語の時系列に沿っているわけでもないという……まあクセが強いです。かなり。
私は一度通しで聴いた後、2回目は歌詞を見つつ、さらに聴き終わったら解説を調べる、みたいな時間のかかる聴き方をしました。
それくらいしないとよく分からない箇所が多いんだもん、このアルバム。
でもその分、楽曲が耳に馴染み、物語を把握し始めると、音楽の世界に浸かり、耳だけでミュージカルを楽しむような独特の体験ができます。おそらくサンホラの魅力は楽曲の良さだけでなく、歌詞を楽しむこと、その内容を考察すること、という「二次的」な部分にあるのだと思います。本アルバムは、サンホラで特に有名な曲「StarDust」が収録されており、聴きやすさの度合いは高く、最初に聴くのにおすすめです。
人を選ぶ部分はありますが、サンホラの知識が増えれば増えるほど、より良さがわかってくる、そんな作品。

とまあ、いくら言葉で説明しても本質は伝わらない気がしますので、まずは曲を聴いてみてください。愛する人とお揃いの服を着ることに憧れながら、裏切られ、復讐する少女の物語。その歌を。


『Roman』

メジャー三枚目のアルバム。
声優さんが多く参加しているようで、曲中に台詞や語りが挿入されるパターンが結構あります。そのため聞き心地としては「歌を聴く」というよりも「物語を聞く」という感覚に近い。思い浮かぶ情景の多くは中世ヨーロッパやメルヘンの世界によっているため、ファンシーなミュージカルを”聴いて”いるようでもありました。

収録されている曲は前半特にアップテンポなものが多く、アルバム一曲目の「朝と夜の物語」は男性ボーカルと女性ボーカルが入り乱れながらこのアルバムのテーマ「生と死」について歌い上げます。続く2曲3曲目もテンション高めでポップな曲調。なので流れとしては最初で一気に「燃え上がらせる」ようになっています。前半はプログレ、メタル、パンク、ゲーム音楽、民族音楽といった勢いのある曲を。後半からはしっとりとしたバラード調の曲が用意されているという印象ですね。

そしてやはりサンホラなので内容は難解。じっくり歌詞を読みながら聴くのが前提となっていますし、しっかり読んだとしてもわからないものはやっぱりわからない。でも曲それぞれの登場人物たちが持つ情熱や悲しみや喜びはストレートに伝わってきます。そこの部分はいちいち考察とか解説を調べなくても聴いてるだけで十分わかるので、ちゃんと耳を傾けていれば誰でも感動するパワーを持っているなと感じました。

作品の方向性としては、業を背負った人間たちが輪廻の中に囚われてなお、生きることの意味を探し求め、そのすばらしさを切ない物語として謳いあげる、といった感じでしょうか。
「生まれ変わり」とか「残酷で哀しい展開」とか「個人の苦悩が世界の崩壊と直結する」あたりは何となくゼロ年代的な空気感もあって懐かしさを覚えます。美しく情熱的なロマン(物語)でした。


『Nein』

メジャー通算6枚目のアルバム。
本作は言ってみれば「サンホラの二次創作をそのまま楽曲にしたアルバム」という体裁の作品。サンホラを聞いたことのない方からすれば、何を言ってるのかよくわからないと思いますが、その通りなのだから仕方ない。
サンホラはこれまでいくつもアルバムを出しており、そのひとつひとつが「物語を音楽で表現する」というコンセプトのもと作られていました。本アルバムは、それら今まで語られてきた物語をハッピーエンドに導くストーリーの楽曲となっているわけです。そういう意味では上記したアルバム以上にファン向けの作品と言えるでしょう。なのでどうしても全体の、つまりサンホラの歴史そのものを知っていないと感動の度合いは下がります。てか私はこのアルバムを理解したくて、イチから遡って色々聞いてた様なところがありますし、容易に理解するのははっきり言って難しいと思います。
でも音自体は割とメロディアスですし、転調の多い曲、台詞多めの曲が多い分、そういうミュージカルっぽい演出やアニメっぽい口調が苦手じゃない限りは、初見でもある程度は楽しめるかと。歌詞の内容については、童話を読み聞かせてもらう様な感覚で聞けばいいと思いますし。

二次創作。それは主人公たちに違う「生」を与えるという行為。それはとても幸せで美しいことですが、公式がそれをやることで(というよりサンホラがそれをやることで)、より元のアルバムで語られた物語の悲しみや絶望が際立ち、より輝きを増したようにも感じます。つまりこの『Nein』というアルバムは、変えることの出来ないはずの現実を変えて見せることで、逆説的に元の世界で生きた人々の生に価値を与えようという試みの作品なのだと思います。

以上、サンホラの好きなアルバム3選でした。
壮大、幻想的、頽廃的、複雑怪奇、謎だらけ……サンホラの魅力を一言で言い表すのは難しいですが、物語が好きな人、ミュージカルが好きな人、言葉遊びが好きな人なら、どこかしら引っかかる部分があるはずで、それが見事に突き刺さった場合は無限にリピートしてしまうくらい、唯一無二の強烈な個性を持っています。
ファンタジックな世界観のなかに「現実」というキーワードを巧妙に忍ばせているのも特徴で、その境界線を美しく描いているあたりが多くの人を惹きつける要因かとも思いました。
歌詞を解釈すること、考察することで物語に浸る喜びを知る。そんな物語音楽の世界はときに眩く感じるほど魅力的だ。




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