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「どんなリサーチをするのですか?」への返答

こんにちは、デザインリサーチャーの浅野翔です。昨日は京都造形大学の課題講評会にゲストとして参加しました。

grafの服部滋樹さんが指導する3回生を対象とした「Material and tools」という授業。身近にある好きな「素材」の現在過去をリサーチし、未来に残るカタチをビジュアルプレゼンテーションするという思索的なものです。むっちゃおもろい。

学生たちの個々の素材にたいするリサーチはとても面白かったのですが、提案とのあいだに大きな溝があるように感じていました。そこで、未来への仮説とその提案に対して、僕はふたつの質問を投げるようにしていました。「具体的なシナリオは?」と「(リサーチから)どんな行為が発見されたのか?」です。

前者のシナリオとは、個々に行われていたリサーチをどのように統合したのか(=デザインの構造化)を問うもので、後者の行為はそのシナリオに没入させる強いケーススタディ(=共感可能性)を問いかける意味がありました。多少強引にでもインサイトを同じ土台に乗せること、そして引力を強めることでデザインの強度は高まるからです。

服部さんと同じく指導されるUMA/design farmの原田祐馬さんが講評の中でデザイナーの資質は「根源的」かつ「前衛的」であることとお話しされていました。これはまさにリサーチがあるからなせることです。モノの始まりまで遡ること、歴史の中に自分のデザインを位置づけること、そして、まだ見ぬ未来のビジョンをデザインによって示すこと。そのためには、身の回りのものになるべく興味を持って触って、調べてみようねと諭されていたのが印象的です。

講評後に学生から「どんなリサーチをしているのか」と質問を受けました。ILPO KOSKINENらの「Design Research through Practice」にもあるように、デザインリサーチのアプローチはとても複合的です。調査設計のためのパイロットリサーチでは、書籍や論文などの文献調査から歴史的な概要と現在の潮流を掴んだり、フィールドワークなどのエスノグラフィック調査から深める項目を洗い出したり、ラピッドプロトタイピングやワークショップを通じて具体的なシナリオ設計をしたりしています。

つまり、リサーチのためのリサーチデザインを通じたリサーチの2回のデザインリサーチ 行っているわけです。各所で見かけるダブルダイヤモンドのアプローチをまさに実践していると言えます。リサーチからまっすぐ伸びていき、どこかでデザインにすっと変わるアプローチなんて当然ありません。何度も往来しながらグルグルと回っていくのです。そのために、とにかく早く手を動かしながら考え、失敗を踏まえて次のステップに進むことが大切です。

着想が面白い課題でした。卒業制作までにどんどんとこのアプローチを身に付け、面白い提案をしてくれることを期待しています!

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