午前二時の芸術家 / 深井一

世界の秘密が明かされる朝
偽りの空は剥がれ落ち
ひしめく歯車が太陽にとってかわるだろう
低く続く地鳴りが終末を数える

苔むした遺跡を風が吹き抜ける昼
蒼く霞む都にまだ誰かいるのか
羽ばたく鳥が光を揺らす
無音よりも静かにうたた寝する歴史

降り止まぬ小雨に引き籠もる夕暮れ
窓ごしの雨の音に象られた文字列
名もなき思想はプレスされて相を転じ
紡がれたのははじまりの物語

夜は更ける僕は描く深く澄んだ孤独を
夜は更ける僕は歌う握りこぶし作って
固定された現在が文字盤を回す
輪郭を失いほどけてゆく言葉