remora / 水槽

(少年少女)は雪のよう、
ちり紙からレタスを創り出した彼は
林檎飴原理主義者の彼女をもう一度産もうと考えた

駅前で、或いは輝く白い目で
花蕾を食べる幼き手指を
おもいだす

ティッシャーは冬の光を配り終え、聖職者は日陰で休む
口から六角形の泡を飛ばしながら老人が怒鳴る
公園でサラリーマンがにやけているあいだ母子寮に白い犬が留守番し
冷たい土にキャベツが膨らみ
烏が突いたゴミ袋からは生理ナプキンが雪崩れている
道徳を習わない国にも道徳があり南向きのバルコニーからシャツが自殺する
彼女はブラジャーを捨てなければならない
送金に不具合があり扁桃腺が腫れる
公務員は相槌のタイミングに混乱する
(your pc is madly in love)
スペインで黒魔道書が増刷される
コンビニは眠らないがスーパーは眠る
下水管がタンポポで窒息する
国境警備に掃除機が導入される
アサルトライフルが花束に劣る
見つめれば孤独か分かる
医者と乞食の区別がつかない
ジョン・レノンにも面皰ができる
羊の成る木が粉を飛ばして
やがて彼女を眠らせる、

彼は夕方を選び、抒情の雨を降らせる
以後、僕と彼女が夜明けを愛しはじめるまで沈黙する