温泉に行ったよ / 菫雪洞

ぼくには意志がありませんでした
どちらがいいか決められなかったのです
只とある方々が無理をして、出来ないものを作ってしまった
がんばったから出来損ないなのでしょう
あの方々はどうしてあんなことをしたのか、そこに快楽はあったのか、不思議に思います
ぼくは無理をしませんでした それだけがあの方々と異なるところ
彼らはきっととてもがんばったので、じきに死んでしまいます
否、ひょっとしたらもう死んでいるのかもしれません
自然の流れに逆らってぼくを生んだから、そのとき死んでしまった
なのに自分がしたことに気づかないから、自分の姿にも気づかない
自然の流れに逆らって生まれたぼくは、そのとき死んでしまったことを覚えている
無理なことをしたのでもうどこにも力が残っていない
その記憶
ぼくは知っていて、親は知らない