ぼくの宿敵 / 岩倉文也

上ばかり向いていると魂が轢かれる
引き摺られる
飛行機

拉致された夢が
また
ゆめみてるくずおれた塔を
遠目に
ぼくの来歴は透かされた影になる
から
虚ろをさまよい歩く
在処

探している
沼に足を突っ込み
こみ上げてくる嘔吐感を堪えながら

降り
雪がふり
振り向けば
真っ白な意志を返して欲しいと叫ぶ
んだよぼくは
まだ
豆粒のようになって
見下ろされてんだ
鷹の目
高みに立った鴉の
残酷な告解に
恋に
破れたときもあったが
頭が
冷え切ってなにも感じない
何もかもが
色褪せた樹木にみえる
まみえることのない数々の理想
理想郷から追放されてこれまで
ことばで
遊んできたがぼくは
低く
地を這いまわる獣
獲物を
掠め取られた狩人と同じ
病気を持っているんだ

いま
腐り落ちたとしても
だれも気づいちゃくれないだろう
紅に染まるもの皆が
ぼくの宿敵になって久しい

ひとえに
遍歴することがぼくは楽しい
強いて言うのなら
死んだまま氷柱になって砕け散りたい
ちらちらと
氷雨になって降り注ぎたい
ただ
ぼくがぼくであることを
やめたい
闇に呑まれたい
痛い
いたいけな子供になりたい

今行け
孤独

言葉は放たれた瞬間が華じゃないか