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閉鎖病棟入院3日目「生きてるってなんだろ普通ってなあに」



※投げ銭です。全文無料で閲覧できます。

※この話は実体験を元にしたフィクションです。登場する人物は全て仮名で、実在する人物・団体とは関係ありません。


 入院したから担当医が変わるということもないので、私の担当医はポッチャリとかわいらしくて和む雰囲気を持っているY先生のまま。
 私はこのY先生の癒し系な佇まいもおっとりしたしゃべり方も大好きで、故に診察も楽しみだったのです。
 変化のない入院生活ですから、ちょっとしたことでも大イベントで、ソワソワして待っていたのです。
 しかも待ち時間なし、イコール、待合室のどんよりドロドロオーラにのまれることもなし!!半日潰れることも、ない!!

 のに、今日も診察ナシ~!!

 なんでも先生が風邪をひいたとのことで。体調不良なら仕方ないです……。
 明日はなんとか出てこられるかもとのことでしたが、大丈夫なんでしょうか。
 ていうか私は自分のことを心配しろって話だし、入院患者に心配される医者というのも皮肉めいてて、なんだかなー。


 今日は改めて入院初日にテトリスを貸した、レンさんのお友達とお話してました。
 レンさん、って、いままでずっと書いてたんですけど、実際はレンちゃんって呼んでるんで、今後はレンちゃん表記にしますね。書いててややこしいんで。


 いろいろと教えてもらい、やっと顔と名前の結びつきがキチッとしてきました。

 重度の鬱と拒食症で入院されたという木崎さん。
 でもだいぶ回復されたようで、細いなぁとは思ってもモデルさんみたいな細さで病的な感じはなく、とっても明るいオネーサマです。
 見た目からして25歳ぐらいかな?っておもったんですが、なんと31歳だそうで……いやいや全然みえないです……。
 レンちゃんが一番懐いててどこに行くにもチョコチョコついていってます。二人してとってもかわいらしい。
 あ、でもどちらかというとレンちゃんはかっこいい系です。少年っぽいです。

私と同じ自傷癖から統合失調症を併発させた上、過食嘔吐も追加で入った水城さん。
 一児の母だとのこと。
 妊娠して自傷をきっぱりやめたあと、産んでから幻聴に悩まされそれでもなんとか五年がんばってきたという話に母の強さと悲しさみたいなのを感じて思わず泣いてしまう私。スイマセンスイマセン……。
 気を悪くされなくてよかったです。むしろ泣いてくれて嬉しかったとのこと。
 スイマセンスイマセン、感受性だけは通信簿で常に褒められてました。


 もう一人の櫻井さんはいつも率先してみんなを笑わせて、服装もスウェットにキティちゃんのサンダル、そして金髪じみた茶髪!という、こんなところよりドンキホーテにいたほうがずっと似合いそうな方。
 私も子供三人いるよ~とニコニコ教えてくれました。まだまだ小さいそうです。
 話の流れ的に訊くなら今だと勢いづけて、「どうして入院してるんですか?」とズバリ聞いてみました。
 「ん~コレだよ、コレ~」と、やおら腕まくりをして注射をする真似。 ……瀉血系の自傷かな?と、状況の飲めない私を見かねた水城さんが「櫻井はシャブ中だったんだよ、注射はそれ」と教えてくれました。
 ほう、シャブとな。しかもポンプとはまた乙なもので。はぁ、へぇ。はぁ?!
 「どういうことです?!」と思わず身を乗り出して詳しく聞くと、なんでもこの病棟では患者も受け入れているとのこと。はぁぁぁ……世界はなんと広いことか……。
 この中で一番の古株な水城さんは櫻井さんを入院当初から知っているようで、やはり最初は結構怖い感じだったということを教えてくれました。
 でも、櫻井さん私には本当に普通の方なんですよ……いつも明るく笑ってて話しやすくて。見た目はヤンキーそのものだけど。
 そんな普通の方でも使ってしまう薬物。怖いです、ほんと。


 濃い話をしているとあっという間に午前中が終わってお昼ごはん。
 なんとお昼にツナの挟まったコッペパンが出ました……ツナ……嫌いです……ふりかけもかけられない……。
 ほかはサラダとかスクランブルエッグとか、妙に朝ごはんみたいなお昼です。

 おかずだけだとさすがにお腹が空くので、我慢してツナパン食べました。が、これが意外にもおいしくて。
 なんか人生食わず嫌いのツナパンみたいなものなのかな、と哲学めいたことを考えてました。疲れてます。


 その後は夕方までどっぷりとベッドで寝てました。いくら寝てもなにもしなくても心が咎めない、というのが精神科入院の大きなメリットだと思います。
 どうしても家だと家族の目が気になります。
 かといって一人暮らしで寝てばかりだとお金はどんどん減って焦ってパニックになるし、友達と比較して劣等感でキツイよ、と教えてくれたのは木崎さん。
 ここにいる人はみんな、入院してよかったと思っているのかな、と新参者は思うのです。


 夕方起きると鈴谷さんがなんだかとっても嬉しそうにしていたので、聞いてみると職場の子どもたちからプレゼントをもらったとのこと。
 鈴谷さんはフリースクールの先生をしているとのこと。プレゼント、見せてもらったのですが、とっても綺麗に描かれた鈴谷さんの似顔絵でした。
 嬉しそうな鈴谷さんも、ここにきてやっと落ち着いたのかなぁとまだ少し眠い頭で思ったり。さすがにそれを聞くような無粋者ではありません。


 夕飯がハンバーグと知ってレンちゃんと二人でとっても楽しみにして「ハンバーグ!ハンバーグ!」と廊下をスキップしたりしてました。
 なのに、なのに!!ハンバーグといって出てきたソレは豆腐ハンバーグ~……。
 二人で悲しみを噛みしめるように食べました。

 同じ昼間話をしたメンバーも同じテーブルでしたが、皆様ここのご飯に不満を持ってる様子。
 私は不満を持つほどではないとは思うのですが……でも豆腐ハンバーグ、お前は許さない。
 豆腐ハンバーグといって出てくるなら私も覚悟がきまっていたのに……上げて下げないでください……。


 悲しみと共に消灯時間になります。

 明日は待ちに待ったお風呂の日!楽しみ!




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