閉鎖病棟入院0日目「入院準備」
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さて0日目。残念なことにまだ入院してません。
このメンタルヘルス大国ニッポンで入院することが決まった私がまずはじめにしたことは「病棟のベッドが空くのを待つ」ということでした。
精神科というのはとかくヒトの多い場所で、診察一つも大病院だとまるっと半日潰れるようなことがあります。
精神病んでて外出したくない人が怖いな状態でも、病院だからというのでやっとこさ起き上がって着の身着のまま出かけるのに半日病院で潰れるんですよ。
もちろん周りの方もそんな感じにしんどい方が多いので、もう病院のオーラがとんでもない色。その辺の汚染された川ですか、という按配。
たまに身なりも化粧も完璧な丸の内OLみたいなヒトがいるなぁ~と思ったらスカートから伸びる足が骨と皮!左手に包帯!みたいなことも。
正直病院に行って病気をもらっているような気分。
(勿論、私の経験談なのでこういう病院が全てというわけではないです)
脱線した。話を戻して。
そんなふうに患者は掃いて捨てるほどいるので、入院一つにもなかなか時間がかかります。そもそも空いているベッドがあるということは、まず、ない。
私の場合は二週間前後でベッドが空く予定です、と言われたのでゆるゆると準備を始めました。
私が入院するのは閉鎖病棟なので、危険物の持ち込みは全面禁止。
この危険物がかなり幅広く、産毛剃りのカミソリは勿論、ハサミは眉ハサミですらダメ、ケーブル類も首をくくる可能性からダメ、果てはガラス製品は割って刃物にすることがあるからダメ、という徹底っぷり。
あ、あと携帯や外部につながる通信手段もダメです。開放病棟だと大丈夫なところもあるようですが、今回は閉鎖病棟なので全面アウト。
そんな状態の私が真っ先に買ったものはなにか。
それは「ふりかけ」。
「どんなにおかずがまずくてもふりかけご飯があればなんとかなる」、というのはその頃閲覧した精神科入院日記サイトのお言葉。
拒食症ではなかったので(むしろ今も昔も丸々してる)食べるものは一番大事。
そう思うと一番自分ができる「安定しておいしいものの準備」って、ふりかけなんですよね。納豆は好きだけど持ち運びと常温保存には些か臭い。
今後のネタバレになりますが、これ本当に助かりました。
あと買ったものは寝間着や服(入院患者でも身体的な病気ではないので、昼はきちんと服に着替えることを推奨している病院でした)、シャンプーリンスに歯ブラシなんかの洗面道具。
この時SALAのシャンプーをチョイスしたせいで、私は未だにSALAの香りを嗅ぐと入院した頃を思い出します。香りと等号でつながる記憶って強い。
それと筆記用具とノート。日記を書くために必要。この頃から小説も書いていたので必要。
そしてビッグイベント、病棟見学。
まず出迎えるのは分厚い強化ガラスの扉です。閉鎖病棟ですから当たり前の設備。
向こう側が見えるのに別世界です。生と死のメタファー、とでも評論家が言えば現代アートになりそうな佇まい。
うっかり迷い込んだ様子の患者さんが側のベンチに腰掛けて頭を抱えていたりして、もうなんていうかまさに「現代版地獄の門」。
看護師が鍵をあけて中に侵入。
まず左手に扉が二つ。面会室とのこと。ここで時間制限アリでしか外の人との面会はできないという患者さんもいるとのこと。
私はそうでなく、普通に面会したいなら時間はそんなに束縛ナシだったのでその部屋は簡単な紹介のみ。
その隣にはこれまた透明な壁。中は喫煙室。
娯楽のない入院生活、ここでタバコを吸うことが唯一の娯楽だとか。
ライターは危険物なのでここの中でしか使えないとのこと。煙と煙より淀んだ目でタバコを吸う人々の隙間で、天井からチェーンでぶら下がるライターを発見。なるほど。
そこから左手に伸びる廊下は女人禁制。男性病室だとのこと。
右に少し歩くとナースステーション、その前にロビー。
基本入院患者はこのロビーで食事をするようです。タバコを吸う以外はここで遊ぶとか、病室で寝てるとかするそうです。
女性病室はこのロビーの奥だと説明を受け、ナースステーションに軽くご挨拶。
といっても精神の不調を発酵させてここにお世話になる身なので、コミュニティ障害はきちんと装備しているわたくし、きちんと挨拶した覚えは一切ありません。
たぶん「はぁ……」とか、「へぇ……」とかそういうこと言ってました。向こうも慣れてらっしゃる様子。
基本的に同伴してもらった母親に全てを任せてました。
(って書くとなんか母親と仲いいように見えちゃってイヤですね。これは追々。)
なんてことをして帰宅。
数日後、ちょっと短めに髪を切っておいたりしたらばベッドが空きましたという連絡。
喜び?勇んでまとめた荷物を持っていき、入院説明。
本人同意の上での入院ですね~とか、書類にサインとかそういう手続を済ませて、強化ガラス製の地獄の門、アゲイン。
少なくとも今より地獄ではないんじゃないかなぁ……。
と、ぼんやり考えながら扉をくぐります。
入院生活が始まりました。
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