PWJ、危機管理マニュアル作成を放置 神石高原町は文書で要請も検討へ

 大災害など不測の事態が生じたとき、飼い主のいない犬を多数収容しているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)はどんな対策を用意しているのでしょうか?

 2018年12月12日開催の広島県神石高原町議会では、幹部らが狂犬病予防法違反などの容疑で書類送検されたPWJについて、入江嘉則町長が「法令順守の徹底と危機管理マニュアルの作成などを指示している」と答弁していました。

 2019年6月、PWJ幹部が動物愛護管理法違反で書類送検された時も町長は同様の見解を明らかにしています。その後の進捗を町役場政策企画課に現況を問い合わせたところ、以下のような返事が届きました。

 Q 危機管理マニュアルはどんな事態を想定して準備させているのか?

A 危機管理であるので当然、不測の事態も含めて、運営上の想定できる危機に対する対応方針です。

Q PWJから上記マニュアルが提出されていますか?

A 未だ,提出されていません。

Q 文書で上記指示を明確に伝える必要がありませんか?

A 必要があると考えます。

 9カ月が経過してもPWJからは危機管理マニュアルが提出されないので、町役場としてもしびれを切らし、マニュアル作成についても行政文書として記録に残るよう文書で指導するということのようです。

 広島県では近年、大規模な地滑りや豪雨被害が発生しています。主として中国山地の日本海側ですが大きな地震も起きています。

森の中にある第2シェルター、スコラ犬舎では、落雷や山火事も想定しておかなければならないでしょう。

 収容頭数の激増で狂犬病予防注射ができず、混乱をきたしたこともありますし、狭いところで多頭飼育したため犬同士のケンカによる殺傷事件が起きたことも広島県警の捜査などで確認されたようです。

リスクはまだあります。

清掃業者が突然、業務を打ち切ったり、従業員が一斉に退職したりするとどうなるのでしょう?

過去にも犬の脱走事件がありました。もし、悪意を持つ侵入者が犬舎を破壊して、収容犬を野に放った場合、短期間で捕獲できるでしょうか?

頭数が半端ではありませんから、隣接の市や町も巻き込んで住民の間にパニックが生じることだって想定しなければなりません。

年間10億円規模の運営財源確保は、目下、直面している現実的なリスクの一つです。

もうけを生むことのない事業なので、善意の寄付が頼みです。話題性に左右されやすい「ふるさと納税」の寄付金になお多くを依存しています。

PWJは神石高原町のふるさと納税のメニューの1つとして、2019年4月5日から12月31日までの期間に5億円の寄付を募集しています。しかし、終了まで残り121日となった9月2日の時点で、寄付は6千6百万円台にとどまっています。法令違反によるダメージが如実に表れているのではないでしょうか?

寄付が計画通りには集まらないと、スタッフに支払う人件費、膨らみ続ける医療費や給餌予算が賄えるのか、監督する広島県や神石高原町、それに従業員や住民からも納得が得られるような運営計画を示す必要もあるでしょう。

危機管理マニュアルの作成は、PWJが地域に受け入れられ、共存していくために欠かすことのできない責務です。瀬戸内海の離島でのアートや観光事業にかかわる時間があるくらいなら、一刻も早く作って、住民にも説明していく義務があるはずです。

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