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大間産マグロの謎を解く①規制お構いなしの過剰漁獲?豊洲だけで2021年は190トン超の出荷



 東京都中央卸売市場・豊洲市場から2021年(暦年)中の青森県大間町からのクロマグロ出荷に関するデータを取り寄せました。都の情報公開制度を利用して関係文書の開示を請求したもので、手続きをすればだれでも入手可能なデータです。


 開示された資料を分析したところ、2021年1月から12月までの間に豊洲市場に出荷された大間産マグロの総量は2210本、196トンという結果になりました。このうち管理年度が異なる1-3月分(30本、4トン)を除くと2180本、192トンです。単純な比較はできませんが、2020年度(2020年4月から2021年3月)は177トンでしたから、おおよそ1割ほど出荷が増えています。


 昨年は静岡市中央卸売市場にも8月、9月におよそ60トンもの大間産マグロが出荷されたもようで、豊洲と静岡だけで出荷量は250トンを上回った可能性があります。内臓などを取り除いた重量なので、漁獲枠の管理上は15%加算して計算することを水産庁は推奨していますから、2市場分だけで287.5トン以上の漁獲があったと推定できます。


 一方、大間町の漁業者に青森県が与えた漁獲上限は大間漁協分が260.8トン(うち小型魚8.1トン)、奥戸漁協分が8.6トン(同0.2トン)です。合計でも270トン弱ですから推定漁獲量はこれを大きく超過しているのではないでしょうか?


 もちろん、大間産マグロの出荷先は豊洲と静岡だけではありません。そして産地の民間業者が現地直売店や通信販売でもかなりの数量を販売しているとみられます。


 卸売市場に出荷されたマグロでも漁獲報告をしていないいわゆるヤミ漁獲のマグロがかなり混入しているとみておくべきでしょう。実際、静岡市場への大量出荷について、水産庁は昨年秋、青森県と大間漁協に漁獲報告漏れがないか調査するよう依頼していました。


 調査の結果、未報告が発覚したことが11月初めに報道されており、地元の漁業者はもちろん、大間産マグロを扱うバイヤーや卸売市場関係者は漁獲枠超過や法令違反のリスクに対して敏感になっていました。


 日々、大量の大間産マグロが売買される豊洲市場を監督する東京都の市場担当職員たちも漁獲枠超過のリスクを知っていたはずです。年間190トンを超す出荷が漁獲報告済みであるかどうか事後的であっても確認を進めてみてはどうでしょう。

 昨年夏、静岡市中央卸売市場に出荷された大間産マグロを複数の業者を経由して買い付けたFOOD&LIFE COMPANIESは3月31日、「これ以上の確認は困難」だとして、漁獲枠内の合法的漁獲量物だったか枠外の違法漁獲物だったか確認できなかったことを明らかにしました。

 しかし、確認はそう難しくないはずです。出荷した漁業者の情報は大間の出荷業者の取引記録や支払い記録に必ず残されています。出荷業者が発行した漁船名入り産地証明書があることも確認されています。法定義務である漁獲報告を済ませたかどうかを漁業者に尋ねるだけでよいのです。

 FOOD社はスシローのブランドを守りたいなら確認作業をさらに徹底すべきです。私が得た情報では、3月末、大間ではマグロ出荷関係先への水産庁と青森県による立ち入り調査が実施されたということです。昨年12月の青森県による調査では未解明な部分が多かったからでしょう。

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