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謎解き「大間まぐろ」②第56新栄丸は「大間まぐろ」商標を必要としないのか?

  東京・豊洲市場の初競りで最高値となったクロマグロは今年もまた青森県大間産のものでした。212キロ、3604万円でした。これを獲った漁船は「第56新栄丸」です。前回ご紹介したように岩手県や宮城県、福島県の港から漁をすることの多かった漁船です。

 船頭の竹内正弘氏が初競り終了後にメディア取材で答えたところによると、初競りに出荷したマグロは津軽海峡で12月31日に漁獲した6本のうち1本といい、水揚げ場所も大間町内でした。これは間違いないでしょう。

 注目すべきは週刊文春の記事です。文春記者が竹内氏に直撃取材し、岩手県大船渡港など水揚げしたものを大間に陸送したことがある、と竹内氏に語らせているのです。

 以下は記事からの抜粋です。

――竹内さんが他の港で揚げたのを、大間まで陸送していると聞いたが。

「そりゃ、運ぶ車があったから、大船渡からでも、他からでも、大間まで運ばせたことはあったよ。でも大間のステッカー欲しさにやっているわけじゃないし、貼るかどうかは漁協組合のほうでやる話だから」

  大間(まぐろ)のステッカー欲しさにやっているわけでじゃない、というのなら、どうしてわざわざ東京とは反対方向の大間まで大船渡からトラックで運ぶのでしょう?

 竹内氏はこんなことも言っています。

「悪いけど、漁協の大間のステッカーより、俺の船のステッカーの方が有名だからね。大間の船で冷凍機をつけてるのは俺だけよ。そうやって工夫して高く売れるように頑張ってるんだ」

 大した自信です。築地市場時代から初競り一番マグロを出荷したのは7度目だということですが、それが慢心のもとになっているのでしょうか?

 もう12年になりますが、2011年に氷見ブリの産地偽装問題がありました。富山県氷見市の業者が福井県敦賀市で仕入れたブリを氷見産のブリに混ぜて東京・築地市場に出荷してしまった事件です。富山県警も不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で家宅捜索しました。

 魚はどこで獲れても同じという人もいますが、それでは産地がどこでもよいということにはなりません。魚の締め方、保存の仕方など各産地はノウハウを磨いて蓄積していて、その違いも分かる人にはわかるからです。そしてわからない人のためには「産地」を表示し、目安として示すわけです。

 大船渡から大間に陸送したマグロを「大間まぐろ」とか「大間産」として大間漁協が出荷していたことをどう思いますか?

 豊洲市場のマグロを扱う卸、仲卸の方々に聞いてみたいものです。こんなマグロが高級寿司店や料理店で「大間まぐろ」として提供されているとしたらだまされたような気分になりますね。


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