プレスカード

 自分の会社で仕事をするようになって丸一年。サラリーマン時代の資料の処分はまだ道半ばです。

 午後、段ボール箱を一つ開けてみると、中には数十枚ものプレスカード。会員証だったり、行事取材の通行証だったりします。

 何千人もの記者が取材に関わった昭和天皇の大喪の礼は、遠くからしか見守れませんから写真がなくてもセキュリティ上は問題ないでしょう。

 しかし、伊豆の川奈で行われた橋本龍太郎首相とエリツィン・ロシア大統領の歴史的な首脳会談の記者証にも写真がないのはどうして?

 あのとき日本側の記者たちは、川奈ホテル地下の遊技場を臨時撤去したところをプレスルームとしてあてがわれました。実際は隔離で、そこからは要人たちの姿を見ることもできず、近づく術もなかったのでした。

 「要人の警備が厳重であるほど、記者証は簡素でいいというわけか」

 そんなことを呟きながら整理していたのですが、記者証のウラに「本人が確認できる顔写真入りの身分証明書を常に携行して下さい」との注意書きがありました。

 だったら、ほかのプレスカードも顔写真を省略できるはずなのですが、さて(〃ω〃)

 日本側の取材記者は全員が官邸か外務省の記者クラブに所属し、国会発行の記者帯用証というおそろしく国会フリーパス携行していましたから、川奈会談の取材用カードに限って顔写真を省略したのかもしれません。

 それにしても川奈の臨時プレスルーム使用料はバカ高でした。2日間で机2つに仮設電話で50万円くらいと記憶しています。

 記者たちが川奈ホテルに泊まれるわけもなく、我々が探した宿は伊東の小さな温泉旅館。素泊まりが8千円ほどでした。それでも時代が大きく動いていて、会議の取材はどれも楽しいものばかりでした。

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