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函館・戸井船団の登録商標マグロは「津軽海峡」で獲れ、「函館」で水揚げをしたものである

 商標「大間まぐろ」について解説した続きとして、北海道函館の戸井産クロマグロの商標についても紹介しておきましょう。豊洲市場やその前身の築地市場のクロマグロ初競りで2011年に最高値の一番マグロに輝いたこともあるブランドです。

「戸井船団」の登録商標とは?

 魚体に貼り付けられるラベルは写真のようなもので、地名として「函館」の文字が大きく書かれています。商標の登録番号は第5062757号、2007年7月登録です。「大間まぐろ」とほぼ同じ時期です。

函館、戸井船団、津軽海峡、戸井漁業協同組合、活〆鮪のキーワードが入り、読み方はハコダテトイセンダン、トイセンダン、ツガルカイキョートイギョギョーキョードークミアイ、トイギョギョーキョードークミアイ、カツジメマグロとなります。

 商品としての定義は「津軽海峡で漁獲され函館で水揚げされたまぐろ」です。

 北海道と青森の間にある津軽海峡で漁獲されただけでなく、水揚げ場所を函館市内のものに限定しています。今シーズンのように津軽海峡であまりマグロが釣れず、漁場が太平洋側、特に三陸・岩手県の沖合に形成されているといわれる場合はどうしているのでしょうか?

操業はすべて「戸井沖」は本当か?

 産地表示は漁獲した海域を示すことが原則ですが、三陸沖でも戸井沖と呼べるのでしょうか?そしてまた函館まで戻って水揚げするのは時間的にもコストの面でも漁船にとってかなりの負担になるでしょう。

 私の手元には北海道庁の「はえ縄・一本釣りによるクロマグロ漁獲管理野帳」(2020年度分、写真参照)があります。クロマグロ漁獲や放流状況を漁業者が所属漁協を通して道庁に報告したデータですが、戸井漁協所属船の操業海域はすべて「戸井沖」と記載されていました。

 今シーズンのものではなく、あくまで前シーズンのものですが、漁獲がすべて戸井沖ということがあるものなのでしょうか?三陸沖での漁獲は皆無なのでしょうか?これにも疑問がわいてきたので、北海道庁漁業管理課に問い合わせると、こんな回答が寄せられました。

三陸沖と共通する水域が広く存在?

 「戸井沖と三陸沖についてですが、これらはどちらとも言える、共通する水域が広く存在するものと認識しております。○〇沖という表記について、具体的な範囲を定める定義は無いものと承知しており、従って、戸井沖を具体的に想定している範囲は、特段ありません」

 つまり、岩手県の沖合で獲られたまマグロを戸井沖で獲られたマグロと呼んでも構わないではないか、というお考えのようなのです。

 もちろん、道庁は「三陸沖を戸井沖と呼ぶことが一般化している事実はない」ということも承知していますから、あくまで理屈上の可能性についてのみ議論をすればという意味でしょう。

 「それは屁理屈だろう」と笑ってしまいたいところですが、産地表示をめぐる法的な議論になると、こんな解釈を押し通そうとする人たちもいることを知っておく必要があります。

 函館、戸井という地名からつい津軽海峡をイメージしてしまう消費者のひとりとしては、三陸沖もそれに含まれる場合があると聞いて当惑するばかりです。


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