「システム崩壊を回避せよ」PWJ書類送検時に湯崎知事が指示 広島県開示文書から

◇その19、PWJ書類送検に関する知事説明(2018年11月21日、県食品生活衛生課作成)

 「定期的に抜き打ち検査をやることも考えてよいのではないか」
 
 現在、広島県動物愛護センターが行っているNPO法人ピースウインズ・ジャパン(PWJ)に対する定期立ち入り調査は、湯埼英彦県知事の発案だったようです。

 そして知事はこうも言いました。

 「システムが崩壊しないように県として取り組むこと」

2018年11月21日午前11時05分、知事室に入ったのは、武田医療・がん対策部長、松岡食品生活衛生課長、中村食品衛生担当監、柳本主査、坂井主任の5人でした。広島県の動物愛護行政を担う幹部職員たちです。

 
 その前日には、広島県警が収容犬に狂犬病予防注射を受けさせなかった狂犬病予防法違反の疑いでPWJ代表らを書類送検していました。
罰金刑以上の刑に処せられると第一種動物取扱業の登録を取り消すことになりかねず、PWJに何千頭もの捨て犬を譲渡している広島県に対する批判も強まります。

偶然なのか、それとも何らかの情報を受けてのことか、県動物愛護センターは11月15日にPWJ施設への立ち入り検査を実施していて、その時点で狂犬病予防法違反を解消できた状態にあることを確認したことになっていました。

「法令違反については解消され、その状態が維持されていることを確認しているため、PWJへの犬の引き渡しは継続する」

 知事に対し、食品生活衛生課はそう報告しました。

そして、今後の対応として、知事報告の前に済ませた副知事との協議で申し合わせたように、①野良犬の捕獲を強化する②PWJ以外の団体や個人への譲渡を増やす(PWJには譲渡不適格な犬の譲渡に限定する)③譲渡を促進するため新しい動物愛護センターの建設を進める、の3点を説明したものとみられます。

知事は「対応としては、これでよい」と了承します。その上で冒頭でも紹介したような発言をしたのです。

「現状で問題がないことを世間に県が示す(PWJの信頼性を保つ)ためにも、定期的に抜き打ち検査をやることも考えてよいのではないか」

 知事の発言の意味合いについて、食品生活衛生課は「PWJの信頼性を保つ」ことがその目的だとわざわざかっこ書きで補足しています。

問題がないことを確認する調査です。その結果として出てくる説明は、「その17」のコラムで紹介した文書(NPO法人ピースウィンズジャパンの書類送検について、2018年6月4日作成)の中にある「現時点では、動物愛護管理法及び狂犬病予防法の違反の事実は確認されておらず、引き続き動物愛護センターからの犬をの引渡を継続する」などが典型です。

実は、広島県はそのうち狂犬病予防法に関する事務は神石高原町の担当であると繰り返し説明していて、その文書でも狂犬病予防法違反の事実なしという点は「町役場に電話して聞いた」(食品生活衛生課)だけです。

狂犬病予防法に基づく登録リストや注射済み票などのリストで確認したわけではないのです。

知事の命令にある県動物愛護センターの抜き打ち検査が、先に「問題なし」という結論ありき、形ばかりのものではないことを祈るのみです。

これから先、広島県の責任は重大です。

PWJの法令順守状況を定期的に公表する必要があるでしょう。

緊急事態にどう備えるのか、危機管理マニュアル作りにも地域住民や動物愛護団体も交えた意見交換が必要になるはずです。


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