宮城県発の疑わしい牛、全頭DNA検査必要!

 全農宮城県本部(JA全農みやぎ)は18日、授精記録とは異なる牛の遺伝子が検出された同県産の子牛が流通している問題で、子牛の所有者の同意を得ながら疑わしい牛を全頭DNA検査にかける必要があるとの考えを明らかにしました。人工授精業務を監督する立場にある県と連携し、全容解明を急ぎます。

 検査費用をだれが負担するかは現時点では未定ということです。

 ふつうなら牛の所有者が検査費用を負担するものの、間違った人工授精の記録を伝えた獣医師や家畜市場を運営する全農県本部に負担を求める声も出てきそうです。

 ズサンな授精記録を作成した獣医師は40年以上の経験のあるベテランで、県中部で家畜医院を開業しています。宮城県畜産課が家畜改良増殖法に基づいて立ち入り検査を実施し、今年5月には正しい授精記録を残すよう獣医師を指導しています。

 DNA検査が必要な牛の数について全農県本部は「現在確認中」ということです。しかし、この獣医師が人工授精した牛は年間100頭から200頭はいたもようで、九州など遠方にも出荷されています。過去にさかのぼって検査する必要が生じたりすれば、混乱は長引く可能性もあります。

 獣医師は筆者の取材に対し、夜間の暗い作業現場での凍結精液ストローの取り違えや、同じ母牛に複数回、異なる牛の精液を授精したことによるミスの可能性があると言っていました。県も「立ち入り検査で故意によるものとは確認できなかった」と全農県本部などに説明しているようです。

 しかし、母牛が妊娠するまで複数回、人工授精を行う場合は間違わないよう同じ種雄牛のものを使うのが業界の常識だといいます。仮に異なる牛のものを使った場合は「子牛が生まれた時点で親子判定をするはず」(兵庫県のJA幹部)といい、獣医師の説明や県の立ち入り検査結果を疑問視する声もあります。

 細いストローの中に入った凍結精液は銘柄により100倍以上も差が付き、人気種雄牛の精液なら1本10万円を超える場合もあります。高い精液を使ったようにみせて、安い精液を使えば価格差がもうけになります。そのような操作があったのかどうか。検査権限を持つ宮城県がしっかりと確認する必要がありそうです。

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