そこが知りたい!ピースウィンズ・ジャパン「内輪の人々」とのお金の流れ⑥ 「大西ヴィラ」の再生、ふるさと納税でも困難

 公私混同?SAPFに融資、買い戻す

  NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)によるNPO法人瀬戸内アートプラットフォーム(SAPF、同、大西健丞理事長)への貸し付けを、広島県が「利益相反事項」と認定した件の続きです。 

  2017年5月9日、広島県はPWJ理事の長瀬理夏氏を代表者(大西健丞代表理事)の代理人に選任し、SAPFの土地、建物への抵当権の登記手続きを代行させることにしました。

   それは何故でしょうか?

   借り手のSAPF理事長でもある大西氏に抵当権設定を任せると、利益相反によりPWJが不利益を被る恐れもあるからです。

   この決定は、湯崎英彦広島県知事から公文書でPWJに伝達されています。

   繰り返しになりますが、こんな手続きをするのは異例です。ふつうの経営者なら「利益相反」を招きかねない取引を慎むからです。それをあえて行ってしまうPWJトップの「慎みのなさ」が気がかりです。

   ところで、利益相反という注意喚起を受けたPWJからSAPFへの融資はいったい何に使われたのでしょうか?

   広島県のNPO情報サイトで、SAPFの決算書類は閲覧できます。

   過去5年分を調べてみると、PWJからの借入金が6000万円になったのは2015年度(2016年3月期)です。PWJからSAPFへの貸し付けの実行は大西代表理事の代理人を選任するより2年も前です。

   2015年度には、「豊島ゲストハウス」の建物(取得初年度の評価額は推定4730万円程度)と土地(推定820万円程度)がSAPFの資産に加わっています。SAPFの資産台帳をみても、他にゲストハウス以上に大きな資産は見当たりません。

   PWJからの借り入れは、時期や金額からみても「豊島ゲストハウス」の購入資金として使われたと考えて間違いないでしょう。

 「豊島ゲストハウス」は愛媛県上島町の豊島にあります。観光客や釣り客なども立ち寄るので、定期船は寄港していますが、小さな無人の島です。

   利益相反ということ以上に、私が問題だと思ったのは、SAPFが買い取った「豊島ゲストハウス」が、2007年に大西氏が実妹と一緒に立ちあげた高級宿泊施設「ヴィラ風の音」だったという事実です。

   大西氏の著書「世界が、それを許さない。」(岩波書店、2017年)に「ヴィラ風の音」の開業経緯が書かれています。少し引用して紹介しましょう。

「のんびりとした本当にいい島で、といって寂れているというわけでもなく、釣り客や、海水浴に来る家族連れが使えるコミュニティセンターという宿泊・研修施設もありました」

「ここに海を望むヴィラを建てたらどうか。クルーザーで瀬戸内海を回って、この島に宿泊できたら」

「2007年4月、ヴィラが完成しました。実は、僕はそこで自分自身の結婚披露パーティーをしたのです」

「彼女、純子は、結婚当初は、ヴィラの支配人として、風の音舎で働いていました」

   ヴィラを建設し、運営した「風の音舎」は2005年に広島県福山市で設立されました。初代社長は大西氏の実妹の由起氏です。大西ファミリー主導で立ちあげた観光事業だったのです。

   いまもインターネット上に残る痕跡をたどると、「ヴィラ風の音」は、クルーザーでの送迎付き、1泊5~6万円くらいの高級宿泊施設として育てるつもりだったようです。

   しかし、当初から業績は振るわず、ヴィラ開業のため会社の増資に協力してきた支援者たちは投資への回収の見込みが立たないヴィラの閉鎖、事業からの撤退を望みました。大西氏自身、著書に記しているようにこの会社の取締役を2012年に退任しました。そして、ヴィラは2013年3月、第三者に売却されていました。

   豊島の「ヴィラ風の音」には定員2~4名の宿泊棟が4つありました。当時、大西兄妹を応援して会社に出資した人の話では、建設費は土地代込みで2億2千万円程度かかっているということです。

 しかし、2013年に売却した時は、価格が3千万台まで下がっていました。差額は当然、損失となります。

  大西氏は著書の中で、風の音舎について「PWJ資金調達のための手段になりました。株式会社で得た利益から、寄付するということですね」と書いています。

確かに、この会社がPWJのスポンサーだった時期はあるようです。しかし、PWJへの寄付の出どころは、大西ファミリーによるヴィラ事業からだったかは疑問です。

 風の音舎は2005年に有限会社として設立され、ほどなく株式会社となりました。記事の中では便宜上、風の音舎と表現していますが、社名も2度変更して、現在は名古屋に本社を移しています。そしてPWJとの関係を完全に断っていて、PWJや大西氏との関係を取りざたされることも好まないようです。

 ここは数少ない資料からの私の見立てですが、「風の音舎」は出資した支援者たちが興した新事業がもうけを生みはじめていたのに、それを大西ファミリー主導のヴィラ事業が食いつぶそうとしていて、内紛が起きたのではないでしょうか。

 会社に出資して、事業を支えてきた後援者たちは、経営の足を引っ張り続けるヴィラ事業から撤退しようと思い、ヴィラ継続に固執する大西氏を退任させた、というのが真相だと私は推測します。

 当事者である大西氏は当然のことながら私よりも詳しい資料を持ち、出資者たちとのやり取りも鮮明に記憶していることと思います。風の音舎の経営の実情からPWJとの関係に至るまで、数字に基づいて、もっと詳しく説明して欲しいと思います。

 話を戻します。

 大西健丞氏が代表理事を務めるPWJは、大西健丞氏が理事長を務めるSAPFにお金を貸し、かつて大西健丞氏が実妹、純子夫人らと立ちあげ、失敗に終わった高級宿泊施設「ヴィラ風の音」を「豊島ゲストハウス」としてSAPFに買い取らせたわけです。

 大西氏が経営権を持つという点では「買い戻した」という表現の方がふさわしいかもしれません。

 そして、SAPF、略さず表記すれば「NPO法人瀬戸内アートプラットフォーム」は、広島県神石高原町に本部のあるNPOながら、愛媛県上島町に本部のあるNPOと同等の扱いを町役場から受けて、上島町の看板で「ふるさと納税」の寄付を募り、高額寄付者に限定して、ゲストハウス宿泊サービスを提供したのです。

 PWJが豊島に作った小さな美術館に展示している現代アートの巨人、ゲルハルト・リヒターの作品(14枚のガラス)鑑賞とクルーザー送迎付きの1泊2日コースは「寄付金50万円以上」など、いくつかのメニューを作って、ふるさと納税の返礼品にしました。

 しかし、利用する人は少なかったようです。

 SAPFの決算書によると、2019年3月期(2018年度)の収入はふるさと納税がもとになった町役場からの交付金収入を中心に469万円しかありません。

 2018年のある日、大西氏が親しい逢沢一郎代議士をヘリコプターで豊島に案内して、ゲストハウスに泊まったと思われるようなSNS投稿も見かけられました。

 それが「ふるさと納税」による返礼サービスなのか、大西氏個人による自腹でのもてなしなのか、NPOのお金を使っての宣伝活動なのか、両者に質問を送っても返事がないので、確認ができません。

 仮に代議士の豊島訪問がふるさと納税による招待であったとしても、決算にあるような収入額では、施設の維持管理もできません。

 営利事業として失敗したヴィラを「ふるさと納税」という公金で再生させようとした目論見は外れたと考えるべきでしょう。

 大西健丞氏の自慢は、湯崎英彦広島県知事が初めて知事選に出馬した時の公約に大西氏が考えた「瀬戸内・海の道構想」という観光事業を取り入れてもらったことのようです。著書にも詳しく紹介されています。アートによる瀬戸内海の島おこしに取り組んだベネッセの福武總一郎氏らの活動に触発されて、「千年航路」という商標まで取得したということです。

行き当たりばったり

 しかし、残念ながら大西氏自身の事業はいまのところ失敗続きです。行き当たりばったり、思い付き、二番煎じの域を出ないからでしょう。

 大西氏を資金面で援助している投資家・村上世彰氏のグループなど、よほど大きな固定客、金持ちスポンサーを見つけない限り、SAPFは再び赤字を残して事業から撤退することになりそうな雲行きです。

 大西氏やその側近たちは、後援者たちに出資してもらったり、ふるさと納税の寄付をあてにしたり、いつも人のお金を使って仕事をしているようです。これまでお金を失うことの痛みを感じることが余りなかったのかも知れません。

 PWJ立ち上げの頃から億単位の資金を援助してきたエルセラーン化粧品(大阪市)創業者ら有力なスポンサーや出資者との壊れた関係をみても、経営者としての大西氏の資質には疑問符が付きます。

 大西氏はいくつものNPOや社団法人の代表や役員を務めていて、姉妹団体同士のお金の貸し借りはほかにもあるようです。

 利益相反に該当するかどうかは、調査したり、報告を求めたりする権限を持つ広島県など所轄の役所に伝えて、判断を委ねるのがよいでしょう。

 しかし、念には念を入れて、大西氏がトップを務めるNPOや公益社団法人などと関わりを持つ寄付者や地方自治体の方々も用心して、それらの法人の事業報告書を読んだり、説明を求めたりするほうがいいと思います。

 過疎の島や町、村の将来がとても心配です。


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