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即詠はお好き?

水源純です。
先日(6/11)関門五行歌会主催で、唐戸周辺で吟行(即詠会)が行われたという。楽しそうだなぁ、いいなぁ、と思いながらこれまで自分が参加してきた即詠会のことを思い出したりしていた。

私は即詠会が好きだった。
<〆切時間>までの、あの切羽詰まった中で仕上げる感覚が堪らなかった。
創作している人はこの<〆切>というのがあるから作れるという人もいるだろう。原稿の〆切日は日単位だが、即詠のそれは時間単位である。ある意味、鍛錬にはなる。……何が鍛えられるのかは知らないが。

即詠会は、1-2時間の散策の中で歌を一首作って提出し、その歌で歌会を行うというものだ。さほど厳しい決まりがあるわけではないので、事前に作ってきてそれを提出してもよい(はずだ)。普通に散策や食事を楽しんで、その流れで歌会をするというお楽しみ会的な雰囲気のなかで、歌会がはじまれば案外みな真摯で真剣だったりするから面白い。

私が初めて参加した即詠会は山梨。
五行歌を書き始めて間もない、二十歳くらいのうら若き乙女のころである。

まだちょっと肌寒い春先だった。
誰かの車に乗せてもらって、即詠会を行う小高い山の上まで行くときの感じをそのまま詠ったもの。車の助手席に、私は座っていたと思う。フロントガラスから見た景色は今でも思い出せるくらいだ。着いたところは桃の木畑だった。季節になればたわわに実るのであろう桃の木には、固い蕾がぎっしりついていたのを覚えている。

五行歌の会の全国大会は、初期のころは参加人数が知れていたので、大会二日目は決まって即詠会だった。記憶しているものを引っ張り出してみようと思う。

1997年の奈良の明日香で行われた全国大会のときの歌である。
第一歌集の最後に置いた一首でもある。
これは色々なところで評価された歌だった。ただ当時、何がいい歌なのかも、歌を評価されるということすらもよく分かっていなかった。

1998年の神奈川で行われた全国大会のときの歌。鎌倉の長谷寺だったろうか。石段を登りながらひんやりした空気のなかを歩いた記憶が、この歌には残っている。

1999年伊勢の全国大会。24歳。たぶん、生まれて初めて流木に魅せられたときの歌である。

2000年福岡・志賀島での全国大会にて。

この翌年2001年の全国大会(千葉)から、二日目は大抵、五行歌研究会や観光がメインとなって、即詠会はなくなっていったと記憶している。参加人数が増えたので、その対応策だった。

それでも各地の歌会主催ではときおり行われ、2001年頃の横浜、三渓園での即詠会には参加している。

このあともいくつか参加した。
その場で作るというスリリングな感じはあまり好きではない、という人も少なくないだろう。また、その場で歌を集めてプリント化するという煩雑さは事務方には負担が大きい。そのためか、歌は事前に集めつつ、ゆっくりランチ歌会をしようといった雰囲気のものもある。

さまざまな楽しみ方を工夫してされているので、お近くに歌会がある方はぜひ参加してみてほしい。きっと楽しい。

さて。
即詠会が好きとは言ったものの、いまの私が参加するとしたら? 
必ず保険の一首を持っていく。
からっぽで行って作る度胸はもう、ない。なぜかしら?

ちなみに今年の全国大会(東京)は一日だけである。都内にも幾つも由緒ある庭園などもあるので、散策がてら即詠してみるのもいいかもしれない。

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