就活日記 5

6月下旬 某日

またしても東京へ。
東京へ行くことを家族に連絡すると、「行ってらっしゃい気をつけてね」と14文字のLINE。

渋谷デザイナーズマーケットに行くことにする。
函館空港に向かう途中、知り合いが「渋谷デザイナーズマーケット」というイベントに出店しているという情報を得て、せっかくなので行ってみることにしたのだ。羽田空港から品川へ、品川から渋谷へ乗り換える。
北海道にいるとすっかり梅雨を忘れてしまうので、私には傘を携帯するという習慣がない。しかし、渋谷駅から原宿方面へ歩いていると、ポツリポツリと雨が降ってきた。雨足が強くなる前に、ファミリーマートで大きい傘を買った。東京の道の狭さと人口密度をまったく考慮していない大きさのビニール傘を、人とすれ違うたびに上下させる。

その知り合いのSNSに「『プロ野球チップス占い』をやってます」と書いていたので、「プロ野球チップス占い」というふわふわしたキーワードを頼りにブースを探す。プロ野球チップスは食べたことがないが、なんとなくイメージはついている。
あるブースの前面に、1つだけぽつんと置かれた「プロ野球チップス」を見つけたので、傘をたたみながら近づく。
ナイスガイ」という、ナイスガイをターゲットにした雑誌を発行しているチームの、太郎さんというデザイナー/イラストレーターの方を探すが、店頭にいた方に「いま告知用の動画撮ってるので、あともう少しで来るんじゃないか」と言われる。待つ。来ないので、他のブースを見ることにした。

金さん銀さんという、金箔や銀箔を活用したファッションの提案をしているアパレルブランドがかっこよかったので、ショートソックスを買った。

「金さん銀さん」と聞くとおばあちゃんを連想します、と言うと、「わかるの!」と驚かれた。小学生の頃、社会科の教科書の「長寿大国」「高齢化社会」というセクションに載っていた、小さな「金さん銀さん」の写真を思い出す。

太郎さんが戻ってきたので、挨拶をして少しお話しさせてもらった。
最近ドット道東の神宮司さんが娘さんを出産され、その出産祝いを買いたかったので、即決で「ロボ」と書かれたピンク色のロンパースを買う。袋に詰めてもらい、さようならをして別れる。
帰り道、かわいい娘さんを産んだばかりの神宮司さんに「ロボ」と書かれたロンパースをプレゼントして、果たして喜んでくれるだろうかと突然不安になってしまった。もし怒られたら、太郎さんのせいにすることにする。

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続いて、青山ブックセンターへ向かう。
もともとはそこで「ツドイ文庫」というイベントが開催されていることを知っていて、それに行きたかったのだった。

ツドイ文庫は、作家や編集者など、本屋でない人々が選書した古本を買うことができるイベントである。以前ご縁があって初対面で一緒に火鍋を食べに行ったことがある、ツドイの今井さんという方が主催している。
青山ブックセンターにも行ってみたかったので、会場に足を運んだ。

いろいろな方のブースを見て回り、片山さんという方のブースの前に来たところで、「こんにちは」と話しかけられた。
「何かを見て来られたんですか」
「はい、ずっと来たかったんです」
「ああ、そうなんですね。どうぞ、見ていってください」
と会話を交わしつつ、「いま実は進路に悩んでいて……」と就活生丸出しの悩み相談をしてしまった。
「それなら」と出してくれたのは、西村佳哲という人の「なんのための仕事?」という本だった。ピラピラした付箋がいっぱいついている。
手にとって中身を見ていると、後ろから今井さんに話しかけられた。
「須藤さんって言って、大学生で、道東って北海道の東側で……」と片山さんに紹介してくださる。片山さんは「社会人の方かと思いました」と驚いていた。こういうイベントごとで社会人ぶってしまう癖をやめたい。
「なんのための仕事?」を買う。ピラピラした付箋の高さがぜんぶ揃っているところがとても気に入ったのだった。
ツドイの今井さんのブースに伺って、ツドイ文庫を出る。今井さんのブースに並んでいる本はぜんぶヤバそうに見えて、ドキドキしながら一冊買って帰った。

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歩いていると、カラフルなモニュメントが右手に出てきた。
「あ、」と足を止める。岡本太郎の「こどもの樹」。怖いなあ、怖くて気持ち悪い。初めて生で岡本太郎という人の作品を見た。

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「なんのための仕事?」を読む。ピラピラした付箋がついているところは特に丁寧に読んだ。

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