北海道のトマト

両親が北海道旅行から帰ってきた。
「おいしいトマトジュースがあるんだ」
父が、トマトジュースの瓶をテーブルに置いた。北海道旅行のお土産だ。

「スープみたいなんだよ」
父の目は少し見ひらいていて、鼻も少しふくらんでいるようだ。
「そうなの? 後で飲んでみる」

一方、隣にいる夫は気配を消している。
夫はトマトジュースが大嫌いなのだ。
父もそのことは知っているが、おかまいなしだ。
「おいしいんだよ。これは違うから」
夫が「いやぁ」と苦笑する。

台所から母が出てきた。
「もー無理にすすめないの!」
母の手には、大量のミニトマトがのったお皿がある。
「これ、おいしいの!北海道のはあまいよー」
スーパーで北海道のミニトマトは買えるのに、と思う。

でも、分かっている。
父と母はおいしい物を食べれば、私たちのことを思うのだ。
食べさせてあげたいと。

ミニトマトをつまみながら、トマトジュースを飲んだ。夫の分も。
父と母の視線を感じながら。

読んでいただきありがとうございます!一緒に様々なことを考えていきましょう!