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#10 「Magical Mystery Tour」 - 不思議の国の玉手箱【The Beatles Album Review】

今回のアルバムレビューは、ビートルズの実質9枚目のアルバム「Magical Mystery Tour」です。

基本情報

オリジナルリリース 1967/11/27 (US)

  1. Magical Mystery Tour

  2. The Fool on the Hill

  3. Flying

  4. Blue Jay Way

  5. Your Mother Should Know

  6. I Am the Walrus

  7. Hello, Goodbye

  8. Strawberry Fields Forever

  9. Penny Lane

  10. Baby, You're a Rich Man

  11. All You Need Is Love
    Total Time 36:35

「US編集盤」の中で唯一、
UKオリジナルアルバムと並んで同等に扱われている作品。
ビートルズに詳しくなってから
「これイギリスでは出てなかったの?!」ってびっくりした覚えがあります。

レビュー

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9/10)

このアルバムがサントラになった映画は全くもって混沌としているのですが、
全くどうしてこのアルバムには不思議と良曲が集まっています。
いい映画なのにサントラ制作にやる気が出てきた頃に時間切れになってしまった
「Yellow Submarine」と好対照というか、なんというか。
ま確かに、「寄せ集め」感はありますけども、どれもいい曲です。

楽曲解説

以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。

Magical Mystery Tour

ツアーバスに乗り込んでさあ出発! なオープニングナンバー。
Ⅰ→Ⅳ→Ⅴのコード進行はバスが疾走してるみたいに鉄壁。
かと思ったら唐突に転調したりする。
もうすでに振り回されてるんですよ、この時点で。

The Fool on the Hill

「世間から理解されない変人」をテーマにポールが書いた曲。
世間からどう思われようと自分の世界を揺るがせない、そういう人に私はなりたい。
そう思っていた時期が私にもありました。
さすがに社会から逸脱するわけにはいかないことは悟りましたけど
それでも「こうありたいなぁ」と思ってしまう名曲です。
ところでポールはこの曲でリコーダーを演奏していますが、
ポールにリコーダーを教えたのは元カノのお母さん(音大の先生)だったそうです。

Blue Jay Way

ジョージによるサイケな曲。
LAで待ち合わせしていた人が来なくて、その時にできた曲らしいんですが、
前曲の「世間から理解されない変人」というテーマと共通している気がする。
普通の人が難しく考えることを「そんなの簡単じゃん」と
超越した視点で見ているような人物を想像してしまいます。
オルガンがCメジャーの音をドローンのように鳴らしている上で
歌メロはCdimで作られていて、イマイチ馴染まないのも
そんな考えを裏付けているような気がするんです。

Your Mother Should Know

「古い歌だけどお母さんなら知ってるよ、聞いてみな」っていう
ポールによるオールディーズ風な曲。
オールディーズほんとに好きだったんだな、ポール。
今じゃこの歌自体がお母さんどころか
「おばあちゃんなら知ってるよ」という状況ですね。w

I Am the Walrus

LSD、もとい「Lucy in the Sky with Diamonds」の一歩先の曲。
実際この曲を書くためジョンはたっぷりとLSDの恩恵にあずかったという話ですし。
これ以上サイケな曲を作ろうとしたら多分もう戻ってこれないと思います。
音楽理論上はキーが「Aメジャー」と解釈できるのですが、
細かく転調していると解釈すればそうとも言えるし、
そもそもキーなんて決まってないぜ、という見方も可能です。
レコーディング中にラジオつけたらちょうど放送していた
「リア王」のラジオドラマをそのまま取り込んでみたり、
理論を超越した「俺がルールだ!」な曲。
ジョンレノンだからこういうことができるんだよね、うん。

Strawberry Fields Forever

お題「地元」でジョンが書いた曲。
「Penny Lane」と共に両A面シングルとして発売されました。
ジョンが幼少期に住んでいた家の近くにあった孤児院
「Strawberry Field」で遊んでいた思い出をもとに作られているそうです。

Penny Lane

お題「地元」でポールが書いた曲。
「Strawberry Fields Forever」と視点が全く違うのがとても興味深い。
ジョンが「俺が小さかった頃はこんなことしてたんだ」と
自分の過去を語り始める一方で、
「俺が小さかった頃の地元にはこんなのがあったんだ」
と客観的に町並みを描写していて、聴く人の心の中の「地元」を想起させる曲です。
まだ地元を出てもいない中学生の頃に初めて聴きましたが、
当時から収録されていたCDの中でいちばん好きな曲でした。
今でもこの曲を聴くと地元に帰りたくなります。

まとめ

「Sgt. Pepper」みたいなまとまり感はあまりないですが、
それでもそれぞれの曲のクオリティは高くて、不思議と惹きつけられるアルバムです。
興味が湧いた人は映画も見てみると良いですよ。
面白いかどうかは保証できないけど。

それでは、かしまさでしたー。

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