今回レビューするのはWingsの3枚目のアルバム「Band on the Run」です。

基本情報

オリジナルリリース 1973/12/5

1. Band on the Run

2. Jet

3. Bluebird

4. Mrs. Vandebilt

5. Let Me Roll It

6. Mamunia

7. No Words

8. Picasso's Last Words (Drink to Me)

9. Nineteen Hundred and Eighty Five
   Total Time 41:05

前作の大ヒットを受けて、
「バカンスも兼ねて南国のどこかで曲作りしたいなー」
と、ナイジェリアのラゴスまで行ってレコーディングしたアルバム。
しかし着いてみればラゴスは高温多湿で雨が降り続き、
とてもバカンスなんて楽しめる場所ではなかった……。
しかも「最近できた」と聞かされていたスタジオはまだ作りかけ。
急ごしらえのスタジオで、デモテープや歌詞のメモを盗まれたりと
大変にエライ目に遭いながら制作したアルバムだそうです。

アルバムジャケットに人がたくさん(9人)写ってるので
いきなりメンバー増えたなぁ、と思ったら実は減っている。
「アフリカ行きは嫌だ」とか「音楽性の相違」とかで
メンバーのうち2人が出発前日までに脱退してしまい、
マッカートニー夫妻とデニーレインの3人になってしまったんです。
他6人は当時テレビなどで活躍していたイギリスの有名人らしい。

レビュー

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9/10)

前作から一転、とても豪華なラインナップです。
バンドメンバーが3人になってしまい、再びポールが
1人で多数の楽器を演奏して八面六臂の大活躍をしています。
またWings以前のアルバムにあった「粗さ」も取れて完成度が高い。
(「Back Seat of My Car」みたいにコーラスで半笑いになったりしてませんw)
「ビートルズを終わらせた男」の面影は最早どこにもなく、
現役のバンドWingsで活動するポールにやっと世間が着いてきはじめました。

楽曲解説

以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。

Band on the Run

タイトルトラックにして名曲。3部構成でできています。
各種ベストアルバムやライヴでも外せないくらいポールもお気に入りらしい。

Jet

ソリッドなブラスの音がかっこいいノリノリな曲。
Jetというのはポールが当時飼っていた犬の名前らしいよ。
こちらもライヴでは定番曲で、近年でも必ずセットリスト入りしています。

Bluebird

いきなり大人の雰囲気のJazzyな曲。
南国風のパーカッションがいい味出してる。
ラゴスまで行ってレコーディングした甲斐がありましたねー、
と思ったらイギリスに帰ってきてからレコーディングしたんだとさ。
(Wikipedia情報)

Mrs. Vandebilt

どことなくジンギスカン(「めざせモスクワ」とかの)ぽい気がする。
でもジンギスカンが出てくるのは70年代終わり頃だし、偶然かな。

Let Me Roll It

シブめのロックンロール曲。
ジョンレノンの真似なんて言われたりもしたらしい。
「Oh! Darling」みたいにツインボーカルで歌ってるデモが
……残ってるわけがないんだよなぁ。
最近AIがジョンとポールの歌声を交換してみた動画とかありますけど、
ジョンもポールも健在だったら本人がすすんで
そういうカバーアルバム出したりする未来もあったのかなぁ。
想像するだけなら楽しい。

Mamunia

「マムーニア」はポールがモロッコのマラケシュに行ったときに
泊まったホテルの名前で、アラビア語で安全な避難所の意味があるそうです。
嫌なことがあっても不満を言わずに「安全な避難所」で待機してようよ、
っていうメッセージがいいね。

Picasso's Last Words (Drink to Me)

俳優のダスティンホフマンと会った時に、何でも曲にできると聴いて
「これで作ってみてよ」とピカソの死について特集した雑誌の記事を見せられ、
本当にそれで作ってみちゃった曲。(ピカソはこの年の4月に亡くなった)
その様子を見てダスティンホフマンは大変に感動したそうです。
他の曲の一節が突然出てくるのはもはやお家芸ですね。

まとめ

「Nineteen Hundred And Eighty Five」のエンディングで
「Band on the Run」がリプライズしたりと
ちょっとコンセプトアルバム感も感じられるアルバム。
アルバムジャケットに人がたくさん写っているという共通点もありますし
ビートルズで言えば「Sgt. Peppers ~」の位置にくるアルバムですね。w
間違いない。

それでは、かしまさでしたー。