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【感想】OVER HEAD SHARK / Over Head Act


 BIG MUFF!!!!!!!!!!!!……はい、というわけでどうも樫野創音です。今回はVTuberのオルタナティブシーンに颯爽と現れ、そのクオリティと狂人っぷりであっという間にその名を轟かせたバンドOver Head Actの1stアルバムの感想をつらつらと書き連ねていこうと思います。リリース自体は8月なので今更感はありますし、当初はちょっと時期が過ぎちゃったからもういいかな~なんて思っていたんですけれど、何となく書かなければいけない気がしたので書きます。

 OHAが最初に出てきた時は個人的になんだか妙に対抗意識を燃やしていて、少し距離を置いていた気がします。もちろん今でも燃やしてはいますが、当時に比べると同じバンドシーンの仲間という気持ちが強くなったかな。まあ色々タイミング逃しちゃってまだ恵比寿マイさんのことツイッターでフォローしてないんですけど……(ごめんなさい)。※追記:相互フォローになりました!やったね!

 ベースのマサカズさんとは『のいずタイムきららエフェクト』という年に一回バーチャル機材狂たちが集まって配信でエフェクターの話をするというとてもオルタナティブなグループで繋がりがあって、その縁もあってリリース前にこのアルバムを聴かせてもらったんですけど、まあびっくりしましたよね。5人編成になってからバンドとしての強度がかなり上がったなあとは思っていたんですけど、ここまでしっかりと一つのアルバムを作り上げられるレベルにまで昇華するとは。自分は全く関わっていないのに「早くみんなの感想が見たい!」思っていましたし、実際にみんなの感想を見て「そらみたことか!」という気持ちになりました(何目線なんだ)。


1. さめ☆あたっく

 これはオリ曲コンピという企画で作られた曲で、ボーカルはうつつさんではありますがまだOHAのメンバーになる前ですね。初めて聴いた時は「OHA、アホな曲作ってるな……」という印象でした。サメ映画に関しての素養はほんとに1ミリもないのですが、そんな自分でもなんとなく知っているような知識やイメージが歌詞に散りばめられていて面白い。改めてしっかり聴き返すと演奏や歌詞の感じからもっと浮足立っててもおかしくないのに、うつつさんの落ち着いたボーカルで全体としてどっしり構えた感じになっているのが面白いな~と思います。

2. 千日紅

 この曲は本当にびっくりしましたね。5人編成になっていきなり出してきたのがこれですからね。自分の中で『さめ☆あたっく』みたいな路線でこれからやっていくのかな~と思っていたのでこの曲はとても寝耳に水でした。キーボードが入るとこんなにも変わるのか……というのと、OHAの音楽的な懐の深さにひたすら驚かされた思い出。

3. 百人の蠱毒

 前2曲はすでにYouTubeで公開されていたので、ここで完全に初めて聴く曲が来るわけですが、私はここで「このアルバム、完全にやっとる」ということを確信しました。イントロがもう完全に殺りにきてる。間奏やアウトロもかなりアグレッシブで暴れまわってるんですけど、歌が入った瞬間スッとまとまりが出てキャッチーになるのがすごい。歌詞もそうなんですけど、なんだか妙に矛盾を抱えたような、熱さと冷たさがせめぎ合う感情はやっぱりロックとかオルタナだからこそ表現できるものがあるのかなと思います。

4. DENKI-UNAGI

 ぶっちゃけ一番好き。この曲は何だかんだでアルバムの中でも異質ですよね。演奏がいつもと違うというか。ギターはなんかもうヌーノ・ベッテンコートみたいになってるし、キーボードはプログレみたいな存在感を発揮しているし、ベースはめっちゃスラップしてるし、ドラムは相変わらずめちゃくちゃ上手いし(そもそも全員死ぬほど上手い)。みんながみんな好き放題やってるのが聴いててすごく楽しい。こんなに散らかして破綻しないのがすごい……。一方でボーカルは比較的ローテンション気味なんですけど、2番目のサビの入りの「雷鳴を鳴らせ!」の部分で妙に力が入ってるのが個人的にすごく好きなポイントです。

5. うたかたの日々

 ぶっちゃけ一番好き。さっき同じことを言ったような気がしますが、好きは水物なので…。この曲は何だかアルバムの中でも抜群に"深度"があるような気がします。聴くたびにどんどん刺さっていくというか、しみ込んでいくというか。演奏や歌詞の美しさや儚さがうつつさんの歌声をこれでもかというぐらい引き立てていて、聴くたびに好きポイントが見つかるしそれを反芻すればするほど歌の良さが深まっていくように思います。あとベースラインが本当に好きすぎる。

6. 腹痛

 ポップな曲調と等身大のしんどさを感じる歌詞がなんだか可愛くも不穏で、その不安定なバランス感がとても印象的。「この仕事は向いてないんじゃない?」辺りの問いかけるような歌が個人的にズバズバ刺さってくるので正直あんまり回数が聴けない……。制作中にメンバーが腹痛に襲われたというのは本人たちの談ではありますが、なんとなくそれが分かる気がします。それにしてもこういう引き出しもあるんだなあ、OHAほんと何でも出来る。

7. STP

 このバンド、イントロでグッと引き寄せて歌が入った瞬間掴んで離さないような曲が多くないですか?これもまさにそう。イントロがStone Temple PilotsのPlushっぽいな~と思っていたら作詞作曲のトーカさん曰く「とあるバンドが元ネタ」らしく……。果たして正解かはわかりませんが、そう思って聴くと色々と気持ちが溢れてきて泣きそうになりました。本当に自分の中ですごく大切なバンドなので。

8. Small Clone

 BIG MUFF!!!!!!!ではない。メーカーは同じですが。キーボードがとても心地よくてチルな雰囲気の曲ですね。音の隙間を掛け合うようなギターとキーボードと、ビートを操り続けるリズム隊が良い仕事すぎる。初めて聴いた時はこういうことも出来るのかって感心しましたね。なんかこの人いつも感心してない??曲自体で大きく波があるわけではないんですけど、その揺らぎの小ささがとても心地よくて何度も聴きたくなります。何回聴いたかわかんないほんとに。あとアウトロの長さがまじで最高ですね。余韻をどんどん引っ張っていく感じ……気持ち良すぎる……。

9. 渚にて

 バンドの入りが反則。というか曲の展開がドラマチックすぎません???まず最初の歌とピアノだけの部分でもう最高に美しいんですけど、それと対比するように荒々しいバンドサウンドもまた違う美しさを感じます。あと個人的に最高だと思ったのがサビの前にワンクッション間奏が入ってるところ。うわー!焦らしてきたー!ってなります。あとギターのリードフレーズが好きすぎる。アウトロのギターのハモリとかもう最高では……。

10. 離心律

 最後にこれを持ってくるの、なんかアルバムっていう感じですごく好きです。いやまあアルバムなんですけど。伝われ!
 他の曲に比べてわかりやすくアガる!とか落ち着く~とかそういう感じはないんですけど、なんだろう、曲調もあるかもしれないんですけど大人な雰囲気があるんですよね。じんわりと燻る熱量を感じるというか。ライブとかだと大化けしそうな曲。


 残念ながら9月をもってドラムの白鷺ケイさんが引退、それに伴いOHAも解散となり、この1stアルバムが最初で最後のアルバムとなりました。正直に言えばこれからこの5人が生み出す音楽をもっともっと聴きたかった。バーチャルとかそういうの抜きで、本当に素晴らしくて何度も聴き返したアルバムだったので。でもOHAという存在がなかったことになるわけではないし、このアルバムもそれより以前に生み出した楽曲たちもずっと残り続けるわけで、何年後か、何十年後かにも誰かがこのバンドの曲を聴いて衝撃を受けることだってあるんでしょうね。

 これからのOHAのメンバーの活動も楽しみにしていますからね。あと、まあもし出来たら再結成とかすればいいと思うよ。あのナンバガだって再結成してるんですから。これは私の勝手な欲望ね。ま、気が向いたら。



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