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【感想】生活 / レグナ

 こんにちワウペダル~~!(あまり使われない挨拶)。どうも、樫野創音です。夏が到来しました。皆様いかがお過ごしでしょうか?これからどんどん暑くなる一方ですが、そんな気候の変化も夏が好きな人間にとってはエモーショナルなものであったりします。夏は色々な思い出が詰まっていますからね、なんというか、懐かしい、夏だけに、なつかしい……。少しは涼しくなったでしょうか?

 さて、そんな夏の始まりにリリースされたのがこの『生活』というアルバムです。アーティストはレグナという音楽系のバーチャルYouTuber。まあ私を知っている方ならみんな知っていると思いますが……。この方とは『おつかれベイビーズ』というバンドで一緒に活動したりと普通にお友達と呼べる間柄ではあるのですが、それ以上に1人のアーティストとして尊敬している人物でもあります。

 個人的にこの『生活』というタイトル、やられた~~!!という感じがとても強いです。このタイトルを冠しているものにハズれはありませんから。syrup16gの曲名であったり、私が大尊敬しているバンドLOSTAGEの企画名であったり、それはひとえにこの単語が何よりも身近で、そして我々に重くのしかかるものであるからだと思っていて、いつかこのタイトルを何かしらに付けたいと思っていたので先に取られて悔しい。でもまあこっちも先に『Change』を使っているのでいいか……。おあいこということで。

1. マジック・アワー

 アルバム全体のイントロ曲という感じでしょうか、おおよそ1分半の短いインスト。これぞマスロック!アルバムの1曲目!という"まさに"な曲ですね。何となく思い出したのはmalegoat(東京都八王子市のエモいバンド)のplan infiltrationの1曲目。こういう曲はなんだかやたらとグッドメロディなのが多いけどこれも例に漏れず。ワクワクとした開幕を迎える。

2. ベスパに乗って

 乗り物にあまりにも無頓着なのでベスパってなんだろう?と思ってググってみたら可愛いバイクが出てきました。何の情報が無くても疾走感があってサイコ~という感じなのですが、どんなものに乗っているのかがわかるとまたイメージが変わってくるなあという感じ。42秒あたりのジャッジャッジャジャーン!!ドコドコドコの辺りがフェチくて素晴らしい。後半で壮大な雰囲気が加わりどこか泣きな感じが出ていてもアクセルが落とされていないところがすごく一貫性のある曲だなあと。

3. 夏のコンプレックス

 アルバムの流れでは最初となるボーカル曲。作詞は同じくおつかれベイビーズのメンバーであり、私のマパ(ママパパ、イラストとLive2Dの作成をしてくれた方)であるナナメによるものなのですが、本当にこれが初めての作詞なの?と思うぐらいしっかりした詞でびっくり……はしませんでした。実は以前からレグナちゃんと「ナナメちゃんって言葉の使い方とか見てると良い詞書きそうだよね~。」という話をしていたので、ほらやっぱり!という気持ちがすごい。
 この辺りから今までの作品に比べて曲の雰囲気が日本的なエモさになっているなという気持ちがわいてきました。この曲は特にそんな気がして今作では一番好きかも。前作『アイデンティティー』は全体のサウンドがジトっとしていて、ミッドウェストエモとかその辺りの儚さやチルさが前面に出ていたんだけど、今回は日本のインディーとかオルタナとか、それこそ自分が多大に影響を受けてきたバンドの雰囲気があるんですよね。歪んだアルペジオにエモさを内包したリードギター、エモとオルタナの境目にいるようなバンド、例えばtoldとかLOSTAGEの質感にすごく似ていて、それは自分では出したくてもなかなか出せていないものなので正直すごく悔しい。それでいてギターソロがすごくしっかりと"聴かせるタイプ"のものなのが新鮮で、そういうのもあるのかと驚かされました。

4. 生活

 アルバムのド真ん中にタイトル曲。とてもわかっている。TTNGのようなアルペジオのやりとりが心地よい。ギターの音が良すぎる。ギターがかなりアグレッシブなのに対してシンプルな歌詞と伸びの強い歌い方が対照的で、だからこそ言葉がとても伝わってくる。ちゃんと言葉を歌の中で大切に扱っているのがわかるというか、かなり洗練されているように感じました。

5. IROZUKAI

 なんだか古き良きレグナ感がある?なんだそれ?やっぱり初っ端から炸裂しているギターリフがかなり印象的。このフレーズがゲーム音楽っぽいというか何というか、元々その辺りの教養が全くないのでかなり見当違いなことを言っていそうで怖い。とにかくそういうことです。でもサウンドの質感としてはマスロックやオルタナのザラつきがあるので、そこのバランス感が彼女の音楽性になっているんだろうなと思います。

6. Meteor

 前のトラックから自然に移行する、これぞアルバムの醍醐味だよな~と思わずニヤっとしてしまいました。音楽を単曲で聴くことが多いようになったからこそ、一続きの作品として作り上げるのがアルバムというものの存在意義なんじゃないかなと思ったりします。まあ散々色んな人が言っているので殊更に言うことでもないんですけど。
 この曲の雰囲気はかなり前作っぽいですね。当時なら歌の代わりにシンセが入っていたんだろうな。ドラムとベースがかなりしっかりとグルーヴを生み出していて、曲としては暗くて比較的静かなんだけどかなり有機的なものを感じますね。"バンドサウンド"という表現とはまた違う、バンド的なノリを強く感じるというか。

7. Change

 先行公開していた曲なのですでに聴いてはいたのですが、なるほどこの流れで聴くとこうなるのか。うってかわって歌モノのテイストが強い曲ではありますが、アルバムのエンディングでいきなりこれを持ってこられると感情がぐちゃぐちゃになるのでやめようね。もっとやれ~~。気持ちの変化、サウンドの変化、生活の変化、アルバムを通して色んな変化に触れて、そうして粛々と歌われる言葉。7曲を通して紡がれる"生活"がすごく伝わってくる。一気に作品としての説得力が強くなるというか。それを受け取った上で、私たちはどう歩いていこうか。曲が終わった後の余韻でそんなことを考えました。


 歌詞カードがなかなかにオシャレで、センスいいな……と思わず感心してしまった。いや何目線なんだ。誰なんだ私は。なんだか紙に印刷されたような質感を感じたのは私だけでしょうか?実際に紙で見てみたいな~と思ってしまった。水井軒間先生のジャケットもきっと良い感じに映えそう。それにしてもこのジャケット、ボロボロだけど笑っているな。

 もし自分がバーチャルYouTuberに興味なんかなくて、レグナちゃんも知らなくって、そんな状態でこのアルバムに出会ったとしても素晴らしい1枚だと思うんだろうな。それぐらい自分のルーツや好みと一致したアルバムでした。本来その辺りとは別のルーツを歩んできたはずなのに、あたかもそれらのような音楽を生み出せているのはすごく興味深い。近しい人が良いものを出すと悔しくて思わず遠ざけてしまう癖があるんだけど、それを凌駕するぐらい素晴らしいものを見せられると、ただひれ伏して受け入れることしかできない。そんな時に心からこの一言が言えるのは、何だかんだで楽しいんですけどね。

 最高でした。




 めちゃくちゃ余談なんですけど、今作の歌詞に海や夏っていうワードをちらほら見かけておつベビメンバーってみんなインドアなのに歌詞に海とか夏とかめっちゃ出てこない?って一瞬思ったけど、どらいぶちゃんは全然そんなことないし何ならほとんど私のせいでした。おつかれベイビーズの夏濃度を上げているのは…………俺!俺! 俺!俺!Ole!Ole! Ah 真夏の Jamboree レゲエ<砂浜<<Big Wave!!

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