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セリフの書き方講座~不自然じゃない会話文とは~

地の文講座に続いて、セリフ編です。

■会話文の書き方

(前略)
じぶんはよく台詞・会話文に悩むため、よければ、そのあたりの書き方を台詞講座として記事化していただけると幸いです。

有料記事感想フォームより

嬉しい・参考になるおフィードバック、ありがとうございますワ!
会話……会話って悩ましいですよネ……!難しい!

お悩みにも色々な種類があると思うのだけど、多く見られるのが「不自然になってしまう」「どう書いたらいいかわからない」カナ?と思うので、思いつくまま徒然なるまま書いてみますネ。


・そもそも会話のはたらきとは

会話とは何か……情報伝達!コミュニケーション!
雰囲気で語るより、まず学術的な軸をあたりましょう。
調べたら文部科学省も参考にしている「ヤコブソンの6機能説」が興味深かったので、一つの切り口として見てみます。

【主情的機能】
心や身体の状況変化を外部に表出する機能。
例:感動詞など。「うわあ!」「やれやれ」

【働きかけ機能】
相手に訴え、相手を動かす機能。聞き手を何らかの行動へと駆り立てる、一種の働きかけ。
例:命令、要請、依頼、勧誘、禁止など。「~~しなさい」

【指示的機能】
内外の環境世界を、言葉という手段を使って解釈し、描写し、記録する機能。
例:「●●容疑者、逮捕」「×××祭りが○月△日に開催されます!」

【詩的機能】
具体的な内容を伝達することよりも、メッセージそのもの(音の響き、リズム、形態、統辞、語彙など)に着目した機能。
例:「ゆあーんゆよーんゆやゆよん」「俺は東京生まれヒップホップ育ち 悪そうな奴は大体トモダチ」

【交話的機能】
言葉を交わし合うこと自体が、互いの心を通わせ、一体感を高める働きをすること。
例:挨拶、相槌、井戸端会議、雑談、「ねえ」など

【メタ言語的機能】
本来、事物や事象などの対象を語る「オブジェクト言語」に対して、言語そのものを語る機能。
言葉を別の言葉で説明することなど。

文科省のPDF資料と「ことばの機能」(ことばの世界さん)を元に、説明や具体例などを拝借して作成。筆者による補記あり

六十年代の分類だしほかにも切り口はありそうだし、という点はありますが、言われてみると「たしかに!」ですよネ。

小説のセリフに当てはめてみましょう。

ロボットが話すような「必要な情報伝達」に絞るなら、【働きかけ機能】【指示的機能】だけになる。
話者の感情を示すなら【主情的機能】、感情や人間関係を表すなら【交話的機能】も追加され、表現の豊かさも入れるなら【詩的機能】も使うことになるでしょう。(メタ言語はパスで)

特にヤコブソンで有名なのは【交話的機能】ですネ!
「たとえば新婚夫婦の会話は実質全部『アイラブユー』しか言ってない」みたいな話、聞いたことありませんか?ヤコブソンが上げた例が元ネタのようです。

「やっと着いたね」
「やっと着いたわね」
「きれいな景色だね」
「ほんとうにきれいな景色」

仕事のできる人ならすぐわかる…「新婚夫婦はなぜ意味のない会話を交わすのか」より

オウム返しによる情報量はゼロだけど、「あなたの話をちゃんと聞いてますよ」(≒親愛)を伝える意味がある。

文字100%の小説で「わざわざ書く」というのは言葉一つ一つに強めの意味がこもるので、上記のようなオウム返しレベルのセリフを重ねるのは難しいけど……しかし、「いちゃいちゃシーンの他愛ない会話は結局全部アイラブユーじゃん!!!!」と萌え狂うことができます。最高。

後述する、「連続会話恐怖症対策」にかかるのですが、「情報量」とか「重要な意味」はなくとも、「カップルですよ~」とか「コミュニケーションだよ~」を示すため、適度に「言葉上では意味はない、しかし交話的機能のある会話」を入れて人間味を出すのもアリかもしれませんネ。

もう一つ、シナリオスクールの先生の本からセリフのはたらきを抜粋してみましょう。

セリフの機能
1、事実を知らせる
2、人物の心理、感情を表す
3、ストーリーを展開させる

柏田 道夫「小説シナリオ二刀流」164ページより

……分かりやすい!
例としては、こんな感じでしょうか。

「お前はこのままでは追放だ!」(1、事実を知らせる)
「え~!? やだー!!」(2、人物の心理、感情を表す)
「このギルドにいたかったら、毎月10万Gを納めなさい!」(3、ストーリーを展開させる)

「来週、映画〇〇が公開されるんだって!(1、事実を知らせる) 面白そう!(2、人物の心理、感情を表す) 一緒に見に行かない?(3、ストーリーを展開させる)」

事実と感情は分かりやすいけど、「ストーリーを展開させる」を大カテゴリーにするのは、脚本家の視点!という感じですネ。
テンポのいいストーリーの展開は……ダイジ!

・不自然な会話とは

ぱっと思いつくのは、ロボット/英語の教科書みたいなセリフや、THE説明セリフは避けようね、というところでしょうか。

 【①一問一答、整然としすぎ】

【整然とし過ぎな不自然セリフ】
A「おはよう!」
B「おはようございます」
A「今日はいい天気だね」
B「そうですね」
A「もう春だ。花見には行った?」
B「行きました」
A「どこに行った?」
B「中央公園です」
A「あそこ人気だもんね。何食べた?」
B「団子を食べました。甘くておいしかったです」

※キャラにもよる。ロボットみたいなキャラならOK

ダメなわけじゃないけど、「それはなんですか?」「それはペンです」みたいなぎごちなさがあり、なおかつ整然としすぎですね。きれいに前の話題を引き継いでいて、すべてが正しさのレール上にあるような……。

実際の会話はもっとごちゃごちゃして、脱線し、不親切で、ラグビーボールのように思わぬ方向に転がることもあります。文字の上でどこまで再現するかどうかの匙加減はありますけどネ!

また、上記の例は整然として無駄がないので、人間味が出ていません。ごちゃごちゃさせてキャラ性を醸し出してみます。

【人間味を追加した書き換え案】※かなり軟派、口語的
A「おはよう! いや~、もう春だねえ」
B「うっす」
A「来るときさあ、風すっげえ吹いてて。髪ぐちゃぐちゃだよ、せっかくワックスつけてキメてきたのに」
B「大丈夫、いつもと変わらないですよ」
A「フォローじゃねえんだよそれは」

A「てか、もう春だ。Bは行った?」
B「どこにですか。恐山とか?」
A「なんで春に行く場所として認識してるんだよ、怖えよ。前から思ってたけどさ」
B「無駄話してないで仕事してください」

A「……じゃなくて! 花見だよ花見! 花見の話がしたかったの俺は」
B「はあ」
A「どうせ、独り身で寂しい寂しいB君はまだだろうから誘っ――」
B「行きました」
A「えっ」
B「行きました。中央公園で、団子も食って」
A「へ、へ~……そうなんだ。ふーん…………誰とぉ?」
B「死んだばあちゃんと」
A「じゃあ嘘じゃねえか!」
B「違いますよ。イタコに口寄せしてもらって、死んだばあちゃんと花見してきたんですよ」
A「なんなんお前怖いわ!」

手癖でカップリング漫才になっちゃった。「答え」ではなくあくまで一例です!

口語に寄せるとこうなりました。主語が省かれたり語順が逆転してたり、言いさしで終わったり繰り返しがあったり、感動詞だけのセリフがあったり。

また「必要な情報を伝える」というよりかは、「キャラ性を見せる」がねらいのシーンになりました。
間接的に、「AはBを誘いたい。好きなの?」「Bは飄々としていて無礼。冗談なのかガチなのか分からない」ということを伝えられましたネ。

後の展開で花見に行ったり、恐山のイタコを出すなら、これはシナリオ上意味があるシーンになります。逆に、出さないなら意味がないシーンになります。
後述するけど、意味のないシーンを削るかどうかの判断は?というと、「そのシーンが面白い(エモい、あった方がいい感じ)かどうか」ですネ。
わたくしだったら、漫才が好きなので残します。

 【②説明が多すぎる・物分かりがよすぎる】

【説明が多い不自然セリフ】
A「あー困った困った。昨日僕のおばあちゃんが爆発したから今日締め切りの原稿の提出が遅れてしまいそうだよ。だから約束していた君とのデートにも行けないんだ」
B「それは大変だわ! おばあちゃんも原稿も心配だから、私はチェリーパイを持って今日の午後三時に訪問するわね」

何トイプーの何ピン?

自然な会話はもっと短く、説明もなく、とっちらかっているのでこうはなりません。

主観だけど、一応何故不自然かも書いてみますネ。

【どこが不自然か】※主観100%
・「あー困った困った」
 →そんなことリアルで言う人いる?演技っぽい
・「昨日僕のおばあちゃんが爆発したから今日締め切りの原稿の提出が遅れてしまいそうだよ」
 →「昨日」「今日」という説明が詳しすぎる。爆発はおいといて、「僕の」も会話なら省略しがち。「遅れてしまいそうだよ」も口語としてはなんか不自然
・「だから約束していた君とのデートにも行けないんだ」
 →「約束していた君との」が説明的すぎる。口語では省略しがち

「いや言うやろがい!」という方はすみません

総括すると「わざとらしい」「説明が多い」になりますネ。

Aは、デートに行きたくないため明らかに嘘をついています。一応嘘なので「不自然さ」はあえて残すことも可能でしょうか。できるだけそのまま使うと仮定しても、Bはあまりにも不自然なので書き換えたいですネ。

正解はないのですが、添削するとしたら、Bのセリフを皆さんはどう書き換えますか?
・Bは(打算的だけど)感性は結構普通の女の子
・ひねらず、「普通の会話」を目指す
としてちょっとだけ考えてみてネ!

わたくしが書くならこうします。

A「あー困った困った。昨日僕のおばあちゃんが爆発したから今日締め切りの原稿の提出が遅れてしまいそうだよ。だから約束していた君とのデートにも行けないんだ」
B「は?」

………………どうかしらん!?
本当にコレ十人十色なのだけれど、わたくしがこんなこと言われたら、もう「は?」とか「え?」とか、「あ? 舐めてんのか?」になる自信あります。

うまく伝わるかどうか分からないのだけど、Aの嘘が既にド級の嘘なので、それを信じたテイ(「おばあちゃん大丈夫?心配だよ」とか)で進めると急にリアリティがなくなるんですよね。
もちろん、おばあちゃんが爆発する世界観かどうかによりますが!

これはかなり極端な例ですが、なんでしょう……。
主人公のAとしてはこの滅茶苦茶な嘘が通ればいいな~と思っていて、他人がそのまま行動してくれる、聞き分けが良すぎるのは、あまりにも都合がよすぎるんですよネ。
「会話がすべて主人公の想定通りで主人公の言うことはすべてコミュニケーションエラーなく信じてもらえる」というのは結構な違和感になります。キャラがいきいきしておらず、全部想定通りのお人形遊び的な……。
なので、「物分かりがよすぎないか?」というチェックポイントを設けるのはアリかもしれませんネ!

対策としては、ある程度聞き返される、反論がある、「このキャラはこういうことをするかな、しないかな」という判断を都度挟む、ということになってくるでしょう。

小説は基本的に一人で書くもので、キャラのセリフだって全部一人が考えて書いているもの。
良質なフィクションはウソをつくのが異様に上手いので、五人が喋っていれば、あたかもその五人に別々の脳があるように感じさせてくれるんですよネ。本当は一つの脳なのに!
逆に「一つの脳」感、「キャラクターって全部作者の分身じゃん、全員作者の代弁者でしかないじゃん」という、不都合な真実が透けて見えると、ちょっとつたないな、没入できないな、という印象に寄ってしまいます。

(「全員自分の分身、一つの脳」感を薄める一つの方法として、「芸能人や友達をイメージする」がありますネ。一次創作において仮想キャスティングはイメージの解像度を上げられます!)

「フィクションにおける物分かりの良さ問題」の考え方は、NON STYLE石井お嬢様の動画から影響を受けています。

「漫才の会話って不自然だよね」というネタ↓

ネタづくりの解説↓(全部オススメ!!)
会話については18:50あたりから。最後の方の、ズラして組み合わせるアイディア発想法も超絶勉強になります!

こちらは生の人間がやっている漫才なので、とりわけ嘘っぽさが目立ちやすく、リアリティが大事になってくるんだと思います。

小説であったら、ジャンルによってリアリティラインってかなり違ってきますよネ。
アニメ絵のキャラクターがやっているのか、実写の俳優が動いている作風なのか。
前者であればある程度のデフォルメは当然オッケーです!コテコテの女性語とかも、まだアリですネ。話者の判別に役立つので。(キャラの個性を超えて全体的なジェンダーバイアスになるとちょっとイヤだけど……)

上記のおばあちゃん爆発例は「会話」というよりはメアリースー案件かもしれないけれど、意外と現実の会話ってすんなりとはいかないんですよネ。
「えーっと」「あー」などのフィラーもあるし、「玉子食べたの。この前お台場で。あっごめん嘘だ、鹿児島だったよ。豚肉トロトロ!」とか書き起こすとメタメタなものもあるし。あと、男性が「~なのよ、~だわ」というコテコテの女性語?を使っていたり、その反対もあったりとか。地の文講座でも触れたけど「言いさし」がメチャクチャ多かったり。

「生」に寄せ過ぎると書き言葉、読み物としてはあまりにも整理がついておらず変になる。しかし音声会話はある程度崩れているのがスタンダードなので、小説であまりにもセリフが整っていると、ものすごく嘘っぽくなる!という厄介な危険があります。結局はグラデーションなんですけれど。

また、世代や属性で言葉遣いって全然違ってきますよネ!
たとえば自分が七十代男性で、中学生の女の子の会話を書く場合。もしくは十代女性が昭和初期の男性の会話を書く場合。調べなければ、絶対絶対嘘(不自然な会話)になると思います!

コレはもうしょうがないので、「それっぽさ」を獲得するまでできるだけ調べるしかないですネ。
文字でもいいし動画でもいいし、二十分調べるだけでも全然違うから!自分の中にあるものだけで勝負しようとするから変なことになるんだよ!という例は結構あります。

……ただ、調べて調べて、「それっぽさ」ができたらそれ以上はいかなくても大丈夫。
結局大衆向け小説は「ターゲットを楽しませること」がゴールなので、「正しさの追求」になっちゃったら方向がそれます。
時代考証とかも、ある程度はいいけど「調べたうえでエッセンスだけきかせる」とか「調べたうえで物語では嘘をつく決断をする」とか、真のゴールに向けて動くのがオススメです。

参考

・不自然対策いろいろ

……色々考えてみたけど、かなり個別の事例によるトピックなので、なかなか「こうしよう」とは言えないんですよネ……!

「リアルな会話」に寄せるのであれば、いい脚本を書き写すのがいいかもしれませんネ!
最近見ているドラマ「ブラッシュアップライフ」は、怖いくらい会話のリアリティがあるので、オススメです!「こうやって喋るよね!」しかないし、あだ名がわけわかんない変遷をするのとか、とにかく「人間のあるある」がすごい。
(間が面白いコントのようなシーンもあるし、ネタがキャッチーだし伏線や構成もいいし、完全な善人もダメな人もいないのが好き!)

ドラマと小説は表現媒体として大きく違うので100%は参考にできないのですが、過去何度か紹介した「シナリオ錬金術」という脚本の指南書ではうまいセリフの書き方として「できるだけ短く」と明言されています。(テンポよく生き生きとした会話になる)参考までに!

ドラマはリアリティが評価される場。
漫画やライトノベルならではの虚構性も、デフォルメが上手いと楽しくてわたくしは好きです!
たとえば「ケヒャヒャーッ! 血を吸った刃が美味いぜェーッ!」とナイフを舐めるコテコテのキャラとかは、世界観や演出次第では全然いていいと思います!
そこまで振り切れたら逆にアリでしょ!要は、「無意識な不自然さ」はよくないけど、「意識的な不自然」が上手く機能して面白さに貢献するなら全然アリということですネ。

上述したけど、その小説の挿絵、あるいは映像化したときは実写ベースになる?それともアニメ絵になる?と、リアリティライン・デフォルメ度を「絵柄」で判断するのもいいですネ!

最後に、「おば爆」会話例をわたくしなりに「小説の会話」に書き換えてみます。
想定:ごく普通の男女カップル、現代日本、ラノベ的(口語的)
方針:Aの言いたいことはあまり変えない。他は変えていい

【書き換え例】
A「ごめん。デート行けないかも……」
B「うそ~! 約束してたじゃん! もう着替えてメイクもしちゃったんだけど」
A「なんかさ、昨日……爆発して……」
B「え?」
A「いや、今日締め切りの原稿があるんだけど、ちょっと間に合いそうになくて……。ごめんて、埋め合わせは後で絶対するから」
B「……爆発とか言ってなかった?」
A「あーうん」
B「爆発って何」
A「なんか……おばあちゃんがぁ、爆発してぇ……」
B「もういいよ! 訳わかんない」

……難しっ!意識的に口語に寄せ、かなり軽いトーンにしました。
会話量も数倍になりました。この情報量を一往復の会話で済ませようとしてた、最初の例がいかに「説明的」だったかよく分かりますネ!

これはただの一例で、添削する方によって、何もかも違ってくると思います。色々な方が添削した例、見たいです!

・短い会話の往復はOK!

語気を荒くしてビギナーに伝えたいこととしては、短い会話の往復はあってもいいよ!ということでしょうか。エンタメ長編講座の「◎会話の連続を恐れるな」でも少し語ったことですけどネ。

主張だけだと弱いので、ソースを紹介。

 本当に真っ青な空だ。視界の全てが青い。
「いい天気だなあ」
「うん」
「今、脳味噌溶けてるな」
「溶けてる溶けてる」
 緑色のコートの上に、四人は寝転がっている。

※コート……テニスコート
恩田陸「ネバーランド」174ページより

短文で、他愛ない会話の連続。
…………ファンにあるまじき失礼な言い方だけど、書き方はこれでいいんです!!!!売れてるから!!面白いから!!!!

ビギナーさんの中でも過去、信じられないほど意識の高いコメントにこき下ろされた(ORそれを見た)ことがある方は、いわゆる「軟派」な表現を恐れて何も書けなくなる場合があります。
会話の連続を恐れ「地の文をこまめに入れなくては」、文豪のように「比喩を駆使して描写をとにかく重厚にしなければ」、不要なものは削るべきと強く思い「必要100%にしなければ」という方向に爆進してしまうときがあります。

ちゃうねん!大丈夫やから!!!!
地の文が少なくても、シンプルで平易な文でも、消しても問題ないセリフがあってもええから!!!!

過去、またまたエンタメ長編講座の「◎省略でテンポ良く」でも、「不要かつ面白いなら、あってOK!不要かつつまらないを省略したら、面白いところだけ残って濃ゆいカルピスになる!」と語っています。

面白いつまらないの判断は、主観的で個別的で、「絶対」は不可能。「自分とおもしろアンテナが同じ人」向けに書くのは無難ですネ。
あれこれ悩んで書けなくなるより、「書きたくて筆が進む」ならとりあえず書く!でGOしてもいいと思います。

で、一ヶ月くらいおいてから読み返して、その「意味のない会話・シーン」が面白い、エモい、一息つく、キャラの掘り下げになってる、にやにやする、なんか好きetcなら残しましょう。「あまりにも要らないやりとりだな」と思ったら(バックアップを残して)消してもいいです。消すのはいつでもできるから……!

「理想が強くて書けない」より、「拙くても完成させる」を続けた先の方が獲得できるものが多いので!どうか怖がらずに好きなものを書いてみてちょうだいネ!

話者の明示が最低限で済むので、会話は二人が書きやすい。
しかしこの「ネバーランド」は男子高校生四人組の話なので、三人以上の会話シーンがたくさんあります。

(例は、誰が言ったかは重要でないので、話者が明示されてないけど)
この作品はさらっと話者の明示をする会話シーンが多くて見事!なので、ぜひ読んでほしいです!

・表現を豊かにした例(脱線)

セリフ関係ない、表現分野への脱線ですが、ちなみに三浦しをん先生お嬢様の「マナーはいらない」では、アドバイスを元に地の文を修正した、面白い例が紹介されています。

修正前
外はいいお天気だというのに、私はこうして足の痺れと戦っている。窓が切り取った空をぼんやりと眺め、それから室内に視線を戻した。

ご本人の記憶より、はじめて書いた小説とのこと

↓エージェントから指摘を受け、「描写が肝心なんだな」と直して出版した文↓

修正後
外は五月晴れというのが本当にふさわしい、「宇宙直結」のお天気だというのに、私はこうして足の痺れと戦っている。窓が切り取った、冷たいほどに青く見える空をぼんやりと眺め、それから室内に視線を戻した。

三浦しをん「マナーはいらない」158ページより

……エクセレント!!
このビフォーアフターを見たとき、わたくし雷にうたれた気分でした……。猛烈に「表現の豊かさ」を感じる!

表現の豊かさを売りにするなら、こういうコトですよネ。

しかし、作家全員がそうとは限りません。わたくしが普段親しんでいる作家お嬢様は、むしろ修飾を削ぎ落したような文で戦っている方もいます。(「ネバーランド」で引用した箇所も、「いいお天気」のシンプル描写がありますね)

毎回言ってるけど、どっちが正解とかではなくて、それぞれの魅力!ほのお、みず、くさ、むし、はがねなど、それぞれのタイプに応じたポケモンの強さがあるので、大事なのは自分と同じタイプをお手本にすることですネ!

・会話のタネ

どんな会話内容が生き生きとしやすいのか!?書きやすいのか!?
おおいに作者&キャラによることだけど、わたくし目線のアイディアを書いておきますネ。

【前提】
・中身や必然性がなく、キャラ性も出さない会話は書きにくい。(カットする率も高い)
例:「今日はいい天気だね」「そうだね」
・必然性のある情報伝達は、書きやすい。
例:「〇〇さんが殺された!」「あなたは昨日の22時ごろ、何をしていましたか」

【書きやすい/映える会話】
・対立構造やケンカ
例①:「お前が犯人だ!」「違うやってない!」
例②:「好きだ!付き合ってくれ!」「年齢差が原因でつきあえない」「なんでさ!両想いじゃないか!」「でも……二回りも違うのよ……?」「愛があれば関係ない!」

・秘密
例①:「先週火曜日、出張だって言って、本当はどこにいたの?」「出張は出張だよ。何で信じてくれないんだ」(実は浮気をしていた)
例②:「なんでA君と映画に行っちゃいけないの」「…………」「納得できるような理由もなしに、止める権利はないでしょ」「…………二人きりで行かせるのは、嫌なんだよ」「関係ないじゃん。なんでよ」(好きだからだよ~!!)

・駆け引き、交渉
例:「じゃあこうしましょう。無料で助けてあげる」「何が狙いだ?」「別に何も。あなたに貸しを作ったって事実がほしいだけ」

・相談、仮説、推理
例:「じゃあ、第三回、なんでBちゃんが怒ってるのか会議を始めます」「いい加減諦めろよ」「また無神経なこと言ったんだろ」「この前のデートで、服装悩みすぎて遅刻したんだけど、そのときはまだ上機嫌で……」

・恋愛、仲良し、いちゃいちゃ
例:「はい、あーん♡」「おいちい♡ いっぱいちゅき♡」

ちょけちゃったんですけど、こんな感じ。
場合によっては秘密、恋、対立と、機能が複数の場合もありますネ!

特に対立構造は、物語の牽引力が強い!シナリオ指南でも、対立で進めよう!という内容がオーソドックス。
緊張感があるので、次へ次へと読みたくなるんですよネ!

スリリングな秘密、駆け引きもドキドキしながら読めますネ。
仮説や推理はミステリーには欠かせないし、例のようにちょっとした謎をみんなで考えるのも楽しいシーンになります。恋愛いちゃいちゃは、言うまでもなくおいしいですネ!

書きやすい、そして映える(面白くなる、需要の多い)シーンが書けたら自分も読者も嬉しい!ので、会話のネタを探すときは意識してみてくださいネ!

■おまとめ

・実際の会話を意識して「自然な会話」を心がけよう
・不自然チェックポイントは、「整然としすぎているか」「説明が多すぎるか」「物分かりがよすぎるか」
・ドラマの脚本のリアルさはすごく参考になるけど、小説は「アニメ・漫画的な誇張」もOKな分野。リアリティラインや「絵柄」を意識して適切なレベルにデフォルメしよう
・短いセリフの連続やり取りはOK!
・「気にしすぎて書けない」より、とりあえず書く→「不要なら後で削除する」でOK
・色々気にするより「楽しく続ける」がベスト
・スリリングな対立構造や、読者が嬉しいいちゃいちゃ仲良しは、会話のタネとして優秀

知識経験おTipsをまとめてみました。何か参考になれば幸いですワ!


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