サイバネ飯はお好きですか?

事務所に帰ってきた俺を見て、上機嫌な所長が声をかける。
「依頼主、喜んでたでしょ」

「あぁ。だが無駄に体力使ったわ。あの糞猫が!袋小路に入り込んで、逃げられないとなったら迎撃態勢で襲ってきやがって。しょっぱなからハウリングボイスだぞ!シールド張るのもただじゃねぇのによ!」
乱暴にソファへ身体を預けつつ、疲れから愚痴が漏れ出す。

「それでも無傷で確保できるのはあなたぐらいなものよ、お疲れさん」
「ねぎらいの言葉より、体力回復させてくれよ」
「もちろん!猫も特別製ならご主人様も特別な方だからね!依頼料以上をさっき振り込んでもらえたわ!」

依頼人のババアも随分と豪華な身体してたからな。金払いも良かったんだろう。

「で?どこいく?今回は奮発して補給食じゃない店でもOKよ!」
「そこまで言うなら5年ぶりに"太った鶏"で、味覚Dive付きのナノ鶏飯コースでも行きたいところだが…」
無理を承知で所長の顔を伺うと、フェイスパネルには親指を立てたイイネマークが表示されている。

「お!おい、マジかよ!いくら振り込まれたんだ?」
何も言わず、手を広げたマークがフェイスパネルに表示され、こちらに見せつけてくる。
「ご、500万!」
「イェス!猫は猫でも糞猫じゃなくて招き猫だったみたいよ」
「招き猫様、ありがたやありがたや!」
「太った鶏も予約完了!早速行くわよ、車出して。」

「こ、これが味覚Dive付きカオマンガイ…」
しっとりとした鶏肉、ジャスミンフレーバーのライス、付けダレも3種類あり、ナノ醤油ダレ・ナノマヨダレ、この店独自の感情が盛り込まれたナノ感情ダレ。
いずれも飽きることなく、永遠に食べられそう…あぁ、幸せだ…

「…くさま!お客様!!」
「ぬあっ!!あーあー…、すまない。味に酔ってた。」

【続く】


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