海外移籍と鹿島の今後

 安西幸輝のポルティモネンセへの移籍が正式に発表された。本人の言う通り、海外市場において24歳はステップアップとしてはラストチャンス、もっと言えば遅いぐらいかもしれない年齢だ。是非とも、海外の地で憧れの内田篤人のように頑張って欲しいものだ。

 昨夏も昨冬もそうだったが、このところの鹿島は移籍市場が開くたびに特に海外市場から騒がしくなってきている。今夏も安西の他にも、安部裕葵がバルセロナへの移籍が報じられたり、鈴木優磨にも移籍の話が出ている。おそらく、この流れは当分続くことになるだろう。Jリーグが開幕して25年超、日本サッカー共々世界で戦うことを意識し、そのレベルに達しつつあるということは、同時に厳しい食物連鎖の世界に放り込まれるということでもある。Jリーグで成長を遂げ、ヨーロッパのクラブに見初められて海を渡り、そこでステップアップしてビッグクラブを目指す。選手たちにとってもこの流れが当たり前になりつつある現在、Jリーグがプレー面でも資金面でも成長を続けても、それと同じかそれ以上のスピードで伸びていく欧州の市場に飛び込み、その中でトップを目指していくほうが、自分自身を見てもらえる可能性が増えるし、それも含めて自身のレベルアップに繋がると考えるのは自然なことだろう。それは、Jリーグで最多のタイトルを獲得し、昨季はアジア王者にもなった鹿島においても、抗うのは難しいことだ。

 もちろん、この状況に鹿島がただ手をこまねいている訳ではない。高卒で入った選手がチームの主軸になるまで成長し、その後も何年もチームに貢献してくれる訳ではなくなってきている今、鹿島はこれまでの新卒補強などに加えて新たな手を打ち出している。アカデミーを強化して、ホームタウンの規模というハンデを抱えながらも、鈴木優磨や町田浩樹らのようにトップチームで活躍する選手を増やす。また上田綺世や染野唯月のように、かつて鹿島の下部組織でプレーしながら一度は別チームに移り、そこからもう一度トップチームでプレーする選手も出てきた。さらに、J2にも目を凝らした結果、安西や三竿健斗といった選手がチームに加わっているし、それでも足りないポジションは外国籍選手だけでなく伊藤翔や白崎凌兵のような他クラブでレギュラークラスを張るような選手も積極的に獲得するようになった。その地盤として、今季からスカウトも増やしている。サイクルが速くなっていることに対しては、確実に手を打っているのだ。

 ただ、ここまではこれまでも何度か言われてきたことである。今回の本題はここからである。

 鹿島のスタイルは端的に言えば「何でも出来ること」にある。名古屋のようにパスを繋ぎ倒すことも出来れば、湘南のように走力で圧倒することも出来る。基本的には4-4-2だが、その気になれば3トップも3バックも出来る。こうした戦い方を選ばない柔軟性が、鹿島に多くのタイトルをもたらしてきた一つの要因であることは間違いないだろう。

 ただ、柔軟性を重視する分、それぞれの戦術の練度はそれにこだわるチームよりはどうしても低くなってしまうのは否めない。名古屋とまともにポゼッション対決をしても勝てないだろうし、湘南とプレッシング合戦になっても厳しいだろう。その時々に合わせて、微調整を他チームよりも多くしていく必要があるのだ。

 その時の微調整をする上でカギになるのが、個人戦術と共通理解の部分だ。個々がそれぞれにその時々で的確だと思う判断を下し、かつ周りはその判断を予測して振る舞いを決める。個人戦術に秀でた選手を集め、彼らを同じチーム、同じ布陣の中でプレーさせることによって、共通理解を深めていく。これが鹿島のこれまでのやり方だった。

 だが、このやり方を今後も続けていくのは難しいだろう。まず、個人戦術に秀でた選手を集めてくるのは根本的に難しい。また、せっかく集めてきた選手も在籍数年で退団してしまう。これでは共通理解を深めていく時間があまりにも足りないし、それを保つ時間もまた足りないのだ。今季リーグ戦10試合以上出場している選手の中で、在籍5年を超えるのは土居聖真ただ1人だけなのだ。これは海外のビッグクラブでもあまりない現象である。もちろん、在籍年数の多い選手はいるが、昨季今季とケガ人が続出しており、彼らが揃う時間も満足に得られないことが、余計にこのやり方を難しくしてしまっている。

 今後、鹿島にピッチ内で与えられる道は二つだ。一つは、これまで通り個人戦術と共通理解を基本としたゲームモデルを続けていく道。もう一つは、あらかじめある程度ゲームモデルの基盤を作り上げ、そこに選手を当てはめて微調整していく道である。

 個人的には選手流出を完全には止められない状況となっていることを考えると、ゲームモデルの基盤を作り上げたほうがいいように思える。実際、現場でもその動きは見られる。今はまだ細い幹の段階だが、大岩監督はゲームモデルの基盤作りに確実に着手していると、ここ数試合を見ているとそれが窺えてくる。ゲームモデルが出来てくることによって、即興性が減ってしまうリスクは抱えるものの、チーム内にプレーの基準が出来ることで、選手たちのプレーの指針が出来ることが期待される。選手たちがその場その場で考える部分を減らしてあげ、効率化出来れば、ケガ人が多いというスパイラルに歯止めをかける一手になるのではないかと、個人的に期待しているところだ。(最も、ケガ人の発生要因は複合的なものになってるので、一つの策で解決できるようなものではないが)

 世界もJリーグも変わりつつある中、鹿島はこの変化についていこうと自らも変化をしようとしている。鹿島にとっては、この変化は自らをより高めるチャンスととらえるべき事柄だろう。最も、その変化の行く末がどうなるかはピッチ上で示されることになるが。

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タケゴラ

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