見出し画像

カストリ書房移転クラファン応援メッセージ・東海遊里史研究会 様

移転に際して開催したクラファンには、様々な分野から応援メッセージを頂戴しました。クラファン本文でもご紹介していますが、改めてこちらでもお伝えしたいと思います。(なおクラファン本文では五十音順にご紹介したので、こちらでは五十音逆順でご紹介します)

前回の紅子様に続いて、今回は東海遊里史研究会(Twitter)様をご紹介させて頂きます。以下頂戴したメッセージです。

吉原に遊廓書店開業!2016年だったでしょうか。渡辺さんからそう聞いたときは、本当にびっくりしました。このご時世に書店を開業するというだけでも勇気のいる決断なのに、遊廓専門書店だなんて!
遊郭というコンテンツの魅力を、仕事にする!渡辺さんの決意と勇気に感服した次第で、そういうわけでカストリ書店開業時のクラファンにわたしは参加させていただいたのでした。
それ以来、東京訪問時はカストリ書房を訪問することが何よりの楽しみだったんです。
しかも、ついに今年、渡辺さんのご厚意により、東海遊里史研究会としては初の県外イベントを、しかも吉原で開催するという、とても貴重な経験をさせていただきました。感謝してもしきれない思いです。
このたびのカストリ書房移転に際して、新たなステージに上るカストリ書房と渡辺さん、これからも遊廓コンテンツの集積地であると同時に発信地でありますように。そして、移転の折にはぜひぜひ遊びに行かせてください!楽しみです!(同会 春は馬車に乗って)

東海遊里史研究会(以下、同会)は、2022年に東海地方をメインに活動するメンバーによって結成され、現在は、ことぶきさん(Twitter)、春は馬車に乗ってさん(Twitter)が活動中。同会は、2022年1月に研究誌『東海遊里史研究』を創刊して、現在は3号まで重ねるなど、短い期間に精力的に活動されています。精力的な調査はもちろんのこと、なによりも得られた知見を研究誌として惜しみなく還元している点において、同会の志の高さに感服します。

2022年1月にはカストリ書房店主の私、渡辺豪が同会トークイベントへお招きに預かり、「北前船と遊廓」というテーマで研究進捗を発表する場を頂戴しました。

翌2023年5月には、返礼の意味も込めて、同会のお二人と、同じく東海地方の在野研究者・花町太郎さん(Twitter)をお招きして、カストリ書房主催でトークイベントを開催しました。

研究誌創刊号の冒頭、次のように宣言されています。

昨今、全国各地に残る遊廓・遊里については、学術的な研究だけでなくインターネットなどを使った在野の研究者、愛好家による実証的な調査が進んでいます。
しかしながら、旧娼家の建物は老朽化・再開発などで解体や建て替えが進み、視角的な情報から検証することは困難になりつつあります。当時を知る方の多くは鬼籍に入り、その実態や状況を直接ヒアリングすることも同様です。
一方でブログ、動画投稿サイトなどでは真偽が定かではない情報が氾濫、間違ったイメージが再生産され伝わっていることも事実です。誰もが容易に情報を収集できるようになった現在、正しい情報を取捨選択し記録整理することが大切だと考えます。

私は、同会の問題意識が明確に表れた、この一文が大好きで、時間をおいては読み返しています。

昭和33年に罰則規定を伴って施行された売春防止法から令和5年の今、65年が経過しました。昭和33年当時、20才だった人は85才を迎えています。日本人の平均寿命を超えつつあり、同会の指摘は正鵠を射たものです。

私事ですが、前職はIT関連の仕事に就いていたため、インターネットの振る舞いについて、よく考えることがありました。ネット黎明期、少なくない人はこう考えていたのではないでしょうか? 世の中の事物・事象が遍くネット上に情報化され、便利な世の中が訪れる──

しかし、ブロードバンドが普及してからおよそ四半世紀、蓋を開けてみれば、情報はより刺激的なものに偏り、劣化を繰り返しながら複製再生産され、肝心の自分が求める情報はそれら膨大なノイズに埋もれてしまっている、そうしたこともまったく稀ではありません。

ネットで「遊廓」と検索すれば、公然と売春を行う飛田新地こと飛田料亭街など刺激のより強いものがまっさきに表示され、また同様に刺激的な造りの動画がレコメンドされてきます。これらは、ネットユーザーが自らの意志で情報を取捨選択しているようで、その実、検索エンジンを運営する会社、すなわちGoogleなどが広告収益のビジネスモデル採っていることから起きていることでもあり、お仕着せの情報の波に押し流されつつあります。

「情報の再生産」についても、私なりに考察を述べると、ここ10年ほどで少し動向が変化してきたように見受けられます。かつては本からネットに情報が再生産されていたものが、ネットで俗耳を集めた対象がむしろ本として発行される逆転現象が起きています。だけではなく、慣れ親しんだ「本」なるものを無批判に信じてしまう癖を持ち続けている私たちは、その本から、さらにネット側へ情報を再生産するという、環流が起きています。

情報社会の一側面としてのこうした弊害によって停滞しつつあった在野研究者・愛好家界隈にあって、同会の存在意義は計り知れず、今後も同会の成果である研究誌を多くの人にバトンタッチしていくお手伝いに邁進していきたいと思います。

この場を借りて、暖かいメッセージを下さったこと、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。