2019 J2リーグ第11節 山形vs福岡 〜平成最後の成長物語〜
1.はじめに
今節は平成最後のリーグ戦という事で、リーグ全体がなんとなくいつもと違う雰囲気になっていましたね。そんな中モンテディオ山形はここ2試合、終了間際に追い付かれてのドローと守備がハマらずカウンターからのPK献上で負けという、ちょっと嫌な流れになっていました。昨年までであれば、この流れを引きずってトンネル突入してしまっていた所ですが、今季はそこからの成長を見せられるか否か。しかも相手は難敵福岡という事もあり、成長の実感と自信を手に入れる為にも、重要な一戦になりました。
2.感想文
2−1.スターティングメンバーとシステム
両チームの布陣は
山形:3-4-2-1
福岡:4-2-3-1(4-4-2)
で試合開始です。
福岡は、木戸がヤンドンヒョンの少し後方に位置し、トップ下の様な立ち位置を取る形でスタートしました。
システムの噛み合わせにおいて、
①システム的に浮く両ストッパー
②木戸を誰がどう捕まえるか
③バイアーノの所の数的不利
この3点に注目して見てみました。
2−2.前半
福岡は前半、
攻撃(福岡):
自陣からのビルドアップでは
・CB2人の間にDH1人が降りて、両SBがやや高い位置取り。
・中央では、DHもう1人+SH1人が降りてきてパスコースを確保。
・DH(+降りてきたSH)もしくはSBから山形DFラインの裏を狙ってロングボールを送り、ヤンドンヒョンが競ったボールに木戸らが裏へ抜け出す
守備(福岡):
・山形ビルドアップ時、ヤンドンヒョンはどちらかのサイドにボール誘導
・木戸は少し下がり目で山形DHへのコースを牽制しつつ、DHに縦パスが入った場合には福岡DHと挟み込み。
・山形の両ストッパーにボールが入った時、ボールサイドのSHがプレスを掛けつつ全体的にボールサイドへ横圧縮
(※逆サイドに山形WBが居ても、マークを捨てて横圧縮。しかし、町田の様に縦圧縮まではせず)
といった形が見られました。それに対し山形は、
守備(福岡の攻撃に対して):
・前線の3人で福岡SBへとボール誘導
・福岡SBにはWBがプレス、後方はひとつずつスライドし、福岡SHにはボールサイドのストッパー、ヤンドンヒョンと木戸にはCBと逆サイドのストッパーが付き、逆サイドのWBが最終ライン付近まで降りる。
・福岡DHと降りてきたSHには、山形DH二人がそれぞれパスコースを消しつつマーク。
・上記の様にパスコースを限定して縦に蹴らせ、DFラインで競り勝ちセカンド回収
縦のボールは上背の無い松本の背後を狙われる場面が多かったですが、しっかりマークにつく事で自由にやらせず、また最終ラインまで降りてきていたWBホドルフォと挟み込んでボールを奪うなど、危なげない守備を披露していました。
更に、DFラインでボールを競った際、福岡の前線〜2列目ライン間が割と広かった事もあり(ボールサイドへの横圧縮はするが、縦圧縮はして来なかったので)、山形DHがセカンド回収する場面を多く作り出せた事がペースを握れた要因となりました。
攻撃(福岡の守備に対して):
・ストッパーやWBへボールをつけた際に福岡が横圧縮してくるが、DHへ横パスから即座に逆サイドでフリーになっているWBへとサイドチェンジ
(※上でも述べましたが、縦圧縮まではして来ないので、福岡の前線〜2列目間でDHが多少ボールを持てる余裕がある場面があった)
・それが無理ならDFラインへボールを下げて、CBから逆サイドへロングフィード
・ボールサイドのストッパーが上がり、ストッパー・DH・WB・シャドーの4人で菱形形成。福岡CB〜SB間から裏を狙う。
恐らくスカウティングしていたと思われる、
・ボールサイドと逆のサイドが空く
・福岡CB〜SB間から裏を取ることで、どっちが見るの問題を引き起こし対応を遅らせられる
事を利用し、数多くのチャンスを作り出す事に成功しました。クロスの所も単純にバイアーノ目掛けて上げる訳ではなく、マイナスのグラウンダーを入れてバイアーノを囮に使い、DHや逆サイドのWBがフィニッシュワークに絡むなど、何度か同じ様なパターンでゴール前まで迫りました。が、福岡GKセランテスの好セーブもあり、チャンスは作れど得点を奪うことは叶いませんでした。
※上記の攻撃及び守備については、主に5分、27分、36分、45分の場面が分かりやすいと思います
2-3.後半
後半に入って暫くは前半の延長の様な内容で試合が進みますが、54分に輪湖→石原の交代があった後、福岡は3−1−4−2へシステム変更します。
この変更において、システム的な噛み合わせとしては
①システム的に浮く福岡のアンカー
②最終ラインの数的優位
この2点に注目して見てみました。
58分には、左ストッパーになった三國が城後へパスする所から、田邊→ヤン→石原とボールが渡り、石原にクロスを上げられる場面を作られてしまいました。
城後がボールを持った際、山形DHがプレスに行った所から一枚ずつマークをずらされ、対応が後手に回ってしまいました。福岡はこの様な中盤での数的優位を前線に届けるビルドアップを狙ってシステム変更を行ったと思われます。
その後、福岡は64分に城後→前川の交代で前川がIH、鈴木がアンカーへ。
67分には山形が井出→南へ交代。その直後の69分、山形はバイアーノへのロングフィードからチャンスを作ります。
バイアーノへ向けたロングフィードを三國が山形左サイド方向へクリア
→ホドルフォがボールを拾って、ホドルフォ→南→中村とパス
→中村が逆サイドの三鬼へサイドチェンジ
→三鬼が本田へ落としたタイミングで、坂元が三鬼前方サイドライン際へ斜めに走り込み、三國を釣り出す
→三國が釣り出されて空いた福岡CB〜ストッパー間のスペースへ熊本が侵入
→釣り出し及び侵入と同時に本田→三鬼→坂元→熊本とダイレクトでパス
→熊本は南へマイナスのパス
→南は後方から走りこんでくる中村へ落とし、中村シュート
これも前半から何回か狙っていた形で、CB〜SB間またはCB〜ストッパー間のスペースから敵陣深い所まで侵入し、マイナスクロスからシュートという流れを再現出来た場面でした。
その後、75分あたりから福岡は再び4−4−2に戻し、徐々にペースを握り始めます。主にサイドからのクロスで山形ゴールへ迫ってきますが、89分、遂に均衡を破る先制点であり決勝点が山形にもたらされました。
福岡左サイドからのクロスを本田がクリアする所からカウンター炸裂した形でしたが、時間を作ってターンし中にパスを通したバイアーノ、1vs1を制して得点を決めた南もさることながら、この時間帯で自陣ゴール前でボールクリアしてから相手ゴールまで爆走出来る本田の存在は際立っていたと思います。
山形はこの得点を守りきり、内容的にも結果的にも完勝と言える勝利を手にしました。
3.最後に
はじめにでも書いた通り、前々節、前節と嫌な追いつかれ方したり内容の良くない負け方したりで、トンネルに迷い込んでしまってもおかしくない状況ではありましたが、流れを見事断ち切り、勝利を手に出来ました。
この点は昨年のチームから最も成長した部分だと思います。まだまだ課題は多いですが、出て来た課題をひとつひとつ克服していく様が見られる今季のチームには、否が応でも期待してしまいますね。
次節は強敵岡山が相手です。特に仲間選手は非常にうざったいですね(※褒め言葉)。この好調の攻撃陣に山形がどう対抗するのか、どういう狙いを持って相対するのか、楽しみにその日を迎えたいと思います。
それでは、最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
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