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2019 J2リーグ第19節 山形vs長崎 〜サッカーには夢がある〜

1.はじめに

今季前半戦のヤマ場「6月デスロード」の3戦目、長崎戦。
今節も上位チームとの直接対決、そして週中にルヴァン杯を戦う過密日程で臨んできている相手に、負ける訳には行きません。
勝ち点を積み上げ、昇格争いを一歩先んじる為にも、是が非でも勝ちたい試合です。

2.感想文

2−1.スターティングメンバーとシステム

両チームの布陣は、
山形:3−4−2−1
長崎:4−4−2

で試合開始です。

システムの噛み合わせとしては、
①最終ラインの数的優位をどう活かすか
②1トップの所の数的不利をどう攻略するか

に注目して見てみました。

2-2.前半

長崎の攻撃:
・自陣ビルドアップ時、両SBが1列上がり2−4の形(DHが1人降りて3−3の場合もあり)。それに伴い両SHも1列上がり、全体として2−4−4の様な形を作り、山形DFラインの裏を狙う
・呉屋を山形DF(特に左ストッパーの松本)と競り合いさせ、ボールを収めるもしくはフリックなどから山形WBの裏のスペースを突く
・サイドからのクロスで中央勝負
長崎の守備:
・2列目と3列目で4−4のブロック構築。2トップはサイド誘導
・山形ビルドアップ時、サイドに開いたストッパーがボールを持った際は、SHがプレス。また山形WBがボールを持った際はSBがプレス

対して山形は、

山形の攻撃(長崎の守備に対して):
・ストッパーがボールを持った際、WBが長崎SBを引き連れて降りてくる事で出来た裏のスペースをシャドーや阪野に狙わせる
・また、シャドーがボールを受けに降りる事で長崎SBを食い付かせ、DHやWBにその裏のスペースを狙わせる
・自陣ビルドアップ時、長崎1列目〜2列目間でDHがボールを持った際、長崎DHが食い付いてきて長崎2列目〜3列目間が間延びする為、そこ(2列目〜3列目間)に位置取りしたシャドーに縦パスを入れて起点を作る
山形の守備(長崎の攻撃に対して):
・長崎ビルドアップ(2−4or3−3)に対し、シャドーを上がり目にし、5−2−3の形でミドルサードからプレス開始
・1トップとシャドーでパスコースを消しつつサイド誘導。長崎SBに出たボールへはWBがプレス
・ボールを受けに降りる長崎DHに対しては、ボールが出た瞬間に山形DHがプレスを掛け、パスミスを誘発させる。こぼれ球はDFラインで回収

 試合開始直後から、長崎は後方から呉屋にロングボールを集めて起点を作ろうとしてきます。特に、松本に呉屋をぶつける場面が多く、競り合いの勝率の高い所で勝負を仕掛けて来ました。10分くらいまで、呉屋のフリックからSHが裏抜けしてシュートを打つ場面、また呉屋がサイドに流れた所にSBから1列飛ばした縦パスを入れ、そのSBがインナーラップしてワンツーのリターンを受ける場面など、何度か攻めの形を見せて来ました。
 
 それに対して山形は、長崎のビルドアップに対してプレスを仕掛け、パスミスを誘発させて高い位置でのボール奪取を狙い、そこから長崎SBの裏のスペースを突いて長崎陣内に攻め込む形を見せます。(※6分の一連のシーンなんかは、最終的に右サイドレーンで裏を狙おうとした柳にボールは渡りませんでしたが、その狙いが現れていたと思います。)
 プレスを掛けてボール奪取すると同時に、SBやCBの裏のスペースを狙う際、
・WBがボールを受けに降りて長崎SBを引きつけ、空いたスペースにシャドーが走り込む
・シャドーがボールを受けに降りて長崎SBを引きつけ、空いたスペースにWBが走り込む
・阪野がボールを受けに降りて長崎CBを引きつけ、空いたスペースにシャドーが走り込む
といった、自分をマークしてくる相手を動かしてスペースを作り、そこに別の選手が走り込んで長崎DFラインの裏を突く形、
また、山形DHが長崎1列目〜2列目間でボールを持った際、長崎DHがボールに食い付いてくる事で2列目〜3列目間が間延びしてスペースが生まれる為、大槻や坂元がその位置でボールを呼び込み、長崎SBが寄せて来た所でサイドレーンでフリーになっているWBへ展開するといった形も、併せて見て取れました。
 10分くらいから、2点目の得点が生まれた15分くらいまでの間、上記の狙いがハッキリと現れており、狙った形で得点を奪う事が出来たと言えるのではないでしょうか。
 更に、この後も前半の間に何度かチャンスを作り出すことに成功するのですが、裏抜けで敵陣深くボールを運んだ際に、長崎の4−4ブロックがコンパクトなまま下がるので、長崎1列目〜2列目間に山形のストッパーを1列上げてセカンド回収要員を増やしたり、サイドでの数的優位を作り出したりと、単発で終わらず2次攻撃に繋げた場面もありました。

 26分あたりから、長崎はビルドアップ時にDH1人がDFラインに降りてCBがサイドに開く3−3の形を取るようになった為、山形はシャドーが上がり目の位置取りをする5−2−3の様な形で長崎CBを牽制します。しかし、その事で山形2列目の脇(WBの前のスペース)で長崎SBやSHがボールを受けて前を向く場面が出始めてきてしまいます。
 28分の失点の場面も、長崎左サイドにて、香川が磯村へボールを預けてから、栗山を引き連れてボールを受けに寄ってきた畑に縦パスを入れ、熊本のマークを外した澤田が前向きで畑からの落としを受けた所から始まります。熊本が澤田との1vs1を強いられ、澤田は切り返してボールを少しずらした所ですかさずクロス。中央では呉屋が鋭い動き出しでクロスに入り、微妙にコースを変えて得点することに成功。
 甲府戦のアディショナルタイムの失点然り、サイドからのクロスに対してボールウォッチャーになり、相手FWの動きを見失ってしまうのは、早急に改善して欲しい所ですね。

2−3.後半

後半、山形は守備時に坂元を1列落として5−3−2の形で2列目脇のケアを図ります。が、長崎がボールサイドのSBを高い位置に上げて、2−3−5の様な形で前掛かりになった事、そして山形の選手達の足が重くなり長崎を押し返せなくなってきた事から、ほぼ長崎ペースで試合が進んでいきます。
 長崎は、前半山形がやった様に、SHがDFを引き連れて降りて出来たスペースをSBが狙ったり、前線からのプレスを強めてビルドアップを妨害し、パスミスを誘発させてマイボールにするといった形を出してきました。
 更に、65分に畑→長谷川、79分には呉屋→イジョンホと前線に高くて強い選手を投入し、ゴール前での圧力を強めてきます。実際、80分過ぎくらいから、中央でクロスを何とか跳ね返すもセカンドを悉く拾われ、ほぼサンドバッグ状態となってしまいました。
 当然の如くあわやという場面を作られてしまいますが、櫛引を中心として最後まで凌ぎ切り、見事逃げ切りに成功しました。

 余談ですが、74分に阪野→バイアーノの交代があったのですが、甲府戦の二の舞にならない様、バイアーノがDFラインまで降りてきて守備をしたり、状況を見て敵陣コーナーフラッグ付近でのボールキープを選択したりと、試合で出た課題を着実に消化出来ているのが見えて、嬉しくなりました。

3.最後に

 湿度と気温が高い状況での試合という事で、選手達は相当しんどかったと思いますが、夏本番はこれからです。この試合を見る限り、今後もっと気温が高い状況での試合をどう乗り切るのか、一抹の不安を覚えてしまったのですが、チームとしてどう出てくるか期待して待ちたいと思います。

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