イメージの百人一首95「おほけなく―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第95首】
 おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
《おおけなく うきよのたみに おおうかな わがたつそまに すみぞめのそで》

 あなたは青年の僧として、これからの自分のあるべき姿を思い描いています。すると、自分一人のことではなく、この辛い世の中に生きる人々へと、思いは飛びます。貧しい人、病を得た人、愛する人と別れた人、そのような人たちの全てを救いたい。それは、身のたけに合わないことかもしれません。しかし、どうしてもそう感じてしまうのです。この僧衣の袖で、この世界を暖かく覆うことができたら、と。その気持ちを抱き続けることを、あなたは、仏法の偉大な先達に誓うのでした。

 前大僧正慈円《さきのだいそうじょうじえん》

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