第55首 春の行く日

※このノートでは、春の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。なお、【イメージ】は、現代語訳そのものではありませんので、その点、ご了承ください。

【第55首】
 花はみな 四方の嵐に さそはれて 独りや春の けふは行くらむ
《はなはみな よものあらしに さそわれて ひとりやはるの きょうはゆくらん》
(千載和歌集/静賢《じょうけん》)

【イメージ】
 桜の花びらが舞い落ちる。
 一面に吹いた強い風。
 その風に誘われて、桜は一足先に行く。
 春は、今日、三月つごもりの日に、一人で去ってゆくのだろうか。

【ちょこっと古語解説】
四方《よも》……「東西南北。前後左右」のこと。また、そこから転じて、あたり一帯のこともいう。
……疑問を表す助詞。「~か」ほどの訳。
らむ《ん》……現在の推量を表す助動詞。「今~しているだろう」ほどの訳。

【ちょこっと背景解説】
○この和歌は、三月つごもりの日に詠まれたもの。「つごもり」とは、その月の終わりの日のことをいう。昔の暦では、一月二月三月が春なので、三月の終わりの日は、春の終わりの日ということになる。

※コメント無用に願います。

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